コルグ・TRINITYシリーズ
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TRINITY(トリニティ)とはコルグのシンセサイザーの型番・商品名である。
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[編集] 概要
初代モデルは1995年に発売。鍵盤数は61、76、88のバリエーションがある。高機能化に伴って操作系統の利便性が図られており、タッチパネルに対応した320×240ドットの液晶ディスプレイが搭載された。鍵盤のタイプはFS鍵盤(61、76)とバランスドハンマー鍵盤(88)がある。
筐体は、それまでのシンセサイザーは黒が一般的だったのに対し、TRINITYではシルバーを採用したことや、当時の日本製シンセサイザーの型番・商品名はアルファベットと数字の組み合わせが多かった中で、TRINITYという意味のある言葉を型番に選んだことも、後発のシンセサイザーに影響した。またTRINITYはPCM音源だけでなく、物理モデル音源のMOSSも搭載可能であり、61鍵のTRINITY Plus、76鍵のTRINITY pro、88鍵のTRINITY proXではモノ仕様のMOSS音源が標準装備されていた。
ACCESS(Advanced Combined Control Synthesis System)と呼ばれるサンプリング周波数48kHz、24MByteのPCM音源を採用し、最大同時発音数32音。ただし内蔵のPCM音源に鍵盤上の演奏だけでのポルタメントはかけられず、MOSS音源が搭載されたモデルでしかこの奏法は楽しめない。この点は後継のコルグ・TRITONシリーズのPCM音源におけるシンセサイズの大きな差のひとつと言える。
内蔵シーケンサーは16トラック、80,000ノート。SMF対応。
シーンでの初登場は1995年、小室哲哉とavexが主催したtk-dance camp'95に坂本龍一がゲスト出演した際と思われ、坂本が持ち込んだセットにおいてメイン鍵盤として使用された。ちなみにこの時のセットは、正面を向いたアルティメイトのスタンドに同社Prophecyと二段重ねにTRINITY proを使用。小室との合作曲『VOLTEX OF LOVE』にてピアノ音色を大胆に演奏、左手側スタンドにもヤマハ・VP1、シーケンシャル・サーキットのプロフェット5と共にもう一台セットされている。
当時の坂本龍一のコルグへの傾倒ぶりが伺われ、このイベントの後、小室哲哉もTRINITYを大胆に使用し始め、自身のライブやレコーディングにおいて、当時それまでのメイン鍵盤であったローランドJD-800と同格な扱いでセットに組み込んでいる(後述も参照の程)。その影響かglobeのセカンドアルバム『FACES PLACES』は、一聴してもTRINITYの音色がアレンジにおいてメイン扱いされているとわかる程の出来となっている(この頃から小室哲哉とヤマハとの関係がいっそう疎遠になり始めたとの見方もある)。
コルグ社のペーパーマガジン「PROVIEW」誌8号インタビュー記事内で坂本龍一の「黒のボディーのってないんですか?」という発言が掲載され、その後黒色のモデルが当初61鍵ノーマルタイプのみ限定100台で発売された。これはメジャーシーンでは小室哲哉がglobeや自身のプロジェクト等で使用する程度で、坂本本人がこの黒色モデルを使用してメディアに露出したことはない。なお小室が使用したのは、この61鍵タイプと76鍵タイプである。また映画『黄泉がえり』では、柴咲コウ演じるRUIが野外ライブを行うシーンで、バックのキーボーディストがこの61鍵タイプを使用している。
派生製品も多く、キーボード・マガジン編集部と共同開発した特注モデルやTR-Rackというモジュール版も作られた。1998年には、物理モデル音源部を6音ポリに仕様変更したTRINITY V3が発売され、以前のTRINITYシリーズからV3へのアップグレードも可能となった。しかし、1999年にPCM音源部を62音ポリに増加し、TRINITY同様タッチパネルを持つTRITONの登場により、TRINITYは生産中止となった。
TRINITY発売当時、この頃浅倉大介プロデュースで歌手活動をしていた雛形あきこも、浅倉の薦めで76鍵タイプを購入していたという。[1]
[編集] TRINITYシリーズ
- TRINITY
- 61鍵モデル。
- TRINITY plus
- 61鍵モデル。ソロ・シンセサイザーオプション(Solo-TRI)標準装備。
- TRINITY pro
- 76鍵モデル。ソロ・シンセサイザーオプション(Solo-TRI)標準装備。
- TRINITY pro X
- 88鍵モデル。ソロ・シンセサイザーオプション(Solo-TRI)、ハードディスクレコーダーオプション(HDR-TRI)標準装備。543MBのハードディスク内蔵。
- TR-Rack
- 1Uフルラックサイズの音源モジュール。8Mbytesの新規PCMも追加されているが、タッチパネルやMOSS音源の搭載は省略されている。
- TRINITY BK
- 上記無印TRINITYのボディーカラーを黒にした限定モデル。61鍵モデル。
- TRINITY plus BK
- TRINITY plusのボディーカラーを黒にした限定モデル。61鍵モデル。
- TRINITY pro BK
- TRINITY proのボディーカラーを黒にした限定モデル。76鍵モデル。
- TRINITY V3
- 上記TRINITY plusのDSP音源(MOSS)をZ1直系の6ボイス仕様に変更したモデル。61鍵モデル。
- TRINITY pro V3
- 上記TRINITY proのDSP音源(MOSS)をZ1直系の6ボイス仕様に変更したモデル。76鍵モデル。
- TRINITY pro X V3
- 上記TRINITY pro XのDSP音源(MOSS)をZ1直系の6ボイス仕様に変更したモデル。88鍵モデル。
- TRINITY plus HDR
- ハードディスクレコーダー(HDR-TRI)、プレイバックサンプラー/フラッシュROM(PBS-TRI)、SCSI(SCSI-TRI)、デジタルI/F(DI-TRI)のオプションボードすべてを標準装備した限定モデル。
- TRINITYキーボードマガジンエディション
- キーボードマガジン誌作成の64コンビネーションプログラムを搭載した限定モデル。
[編集] オプション
- HDR-TRI
- ハードディスクレコーダーオプション。SCSI端子を装備し、ここに最大7台のハードディスクを接続することによりサンプリング周波数48kHz、16bitでのハードディスクレコーディングを可能にする。S/P DIFデジタル端子装備。
- SCSI-TRI
- SCSIオプション。SCSI端子を装備し、外部ハードディスクにデータを保存できる。
- DI-TRI
- デジタルI/Fオプション。a-datデジタル端子を装備する。
- PBS-TRI
- プレイバックサンプラー/フラッシュROMオプション。8Mbytesのフラッシュメモリーを装備、サンプラー機能を追加する。専用ライブラリ−の他AKAI S1000フォーマットに対応。
- Solo-TRI
- ソロ・シンセサイザーオプション。コルグ・Prophecyと同等のMOSS音源を装備する。
[編集] 外部リンク
[編集] 注釈
- ^ 当時、歌手活動中の彼女のプライベートルームを写した写真が、アイドル雑誌に掲載され、確かにTRINITYが配置されており、使用していた様子が伺える。