ギャンビット
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ギャンビット (Gambit) はチェスのオープニングにおける戦術の一つ。駒(通常はポーン1個)を先に損する代償に、駒の展開や陣形の優位を求めようとする定跡を言う。イタリア語の足(Gamba)の派生形が語源とされている。
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[編集] 概要
序盤でポーンを1つ(時には複数)相手にわざと取らせる事により、他の面での優位を得る。ポーンの捨て方にも種類があり、それぞれ名前が付いている。定跡化したものをギャンビットと言い、その場で考えたものは通常ギャンビットとは呼ばない。
ポーンを取らせる事の代償は、大まかには以下のうち1つまたは複数である。
- ポーンを取らせる事により、そのファイル(列)がオープンとなるため、開放度が上がり、駒の効率が上がる。例:ルークが敵陣を直接睨む事ができる。
- そのポーンを取った駒を自然に取り返しに行く事により、駒の素早く有利な展開を図る 。
- 相手の中央に近いポーンでより端に近いファイルの自分のポーンを取らせる事により、中央における勢力を相対的に強める。
多くの場合、ポーンを取った相手のポーンは伸びすぎているために守ることが難しく、結果として後に駒損は解消されることが多い。
[編集] カウンター・ギャンビット
白(先手)のギャンビットに対しては黒は、(1)相手の手に乗る(ポーンを取る)、(2)あえて取らない、の2種類が考えられる。あえて取らない場合に、むしろ黒がポーンを差し出し、黒が逆にギャンビットを仕掛ける場合があり、これをカウンター・ギャンビットと言う。ただし広義には黒によるギャンビットすべてを指す。
[編集] 種類
[編集] キングズ・ギャンビット
最も基本的な定跡の一つで、多くの場合は乱戦になる。fファイルをオープンにし、黒の最弱点であるf7をo-o(キング・サイド・キャスリング)なども利用して狙うのが古典的な指し方だったが、e4+d4で中央を固めて長期的な優位を狙う指し方もある。
1 e4 e5 2 f4
ここで黒がf4のポーンを取ると、激しい乱戦になる。 2 ... exf4 3 Nf3 Be7 4 Bc4 Nf6 5 e5 Ng4 6 o-o Nc6 などが例の一つ。
2 ... Bc5 3 Nf3 d6 4 Nc3 Nf6 などと黒がポーンを取らないと(ディクラインド)、比較的穏やかな展開となる。
2 ... d5 3 exd5 e4 逆に黒がdファイルのポーンを差し出すと、ファルクビア・カウンター・ギャンビットとなる。 4 Nc3 Nf6 5 Bc4 Bc5 6 Nge2 o-o などが一例で、黒のみがキャスリングを行っており、白は現状では黒のビショップの利きでキャスリングできない。
[編集] クイーンズ・ギャンビット
比較的穏やかなギャンビット。c4で失ったポーンを白がビショップで手順に取り返すと、o-o(キング・サイド・キャスリング)につながり、損失が少ない。
1 d4 d5 2 c4 が基本形で、非常に派生型が多い(派生形についてはクイーンズ・ギャンビットを参照)。いくつかは別の名前が付いている。
2 ... dxc4 3 Nf3 Nf6 がクイーンズ・ギャンビット・アクセプテッドの基本的な形。
2 ... e6とポーンを取らないのがクイーンズ・ギャンビット・ディクラインド。
2 ... e5 3 dxe5 d4 は対抗策の一つアルビン・カウンター・ギャンビット。黒がeファイルのポーンを差し出し、d4を得る。黒は0-0-0(クイーンサイド・キャスリング)を行ってから攻撃をかけたりするのが狙いであるが、現在では無理筋とされている。
2 ... e6 3 Nc3 c5 4 cxd5 exd5 5 e4 dxe4 6 d5 はマーシャル・ギャンビット。黒の対策の1つタラシュ・ディフェンスからの変化の一つ。黒がさらにeファイルでポーンを捨てることにより、d5を得る。
[編集] ダニッシュ・ギャンビット
ポーンを2個損した代償に素早い展開を狙う、非常にギャンビットらしい手。
1 e4 e5 2 d4 exd4 3 c3 dxc3 4 Bc4 cxb2 5 Bxb2
d、c、bファイルのポーンを連続して捨て、2ポーン損であるが、代償として3つのオープンファイルと駒の素早い展開を得ている。黒が初手からeファイルのポーンが無くなっただけで何も動いていないのに対し、白は中央にポーンを進め、早くもビショップが2つとも展開を完了している。
[編集] スコッチ・ギャンビット
ダニッシュ・ギャンビットに似た形。
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Bc4 4.c3とする手もあり、そうなるとダニッシュ・ギャンビットにナイトを一手ずつ動かした形になる。
[編集] スミスモラ・ギャンビット
シシリアン・ディフェンスに対するギャンビットの一つ。 1.e4 c5 2.d4 cxd4 3.c3 dxc3 4.Nxc3 1ポーン損ながら、中央にポーンを進めナイトが展開し、他の駒も容易に展開できる白に対し、黒はcファイルを開いただけでまだ展開ができない。
[編集] ウィング・ギャンビット
シシリアン・ディフェンスに対するギャンビットの一つ。 1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. b4 cxb4 4. d4 黒のcファイルのポーンをbファイルにそらし、その代償に中央を理想的なd4+e4の態勢で固める。中央を制した結果、白はよりピース(駒)の展開の速度や駒の効率が得られやすい。
[編集] エバンス・ギャンビット
非常に美しい典型的なギャンビット。
1 e4 e5 2 Nf3 Nc6 3 Bc4 Bc5 黒のビショップに一度bファイルのポーンを犠牲にして手を稼ぐのが目的。本来はここでo-oとしていたが、現在では先に 4 b4 が普通。以下、黒が取る場合は 4 ... Bxb4 5 c3 ここで黒のビショップはBe7、Bc5、古い手ではBa5などがあるが、いずれにしろ 6 d4として中央を制圧し、o-oの後、クイーンとビショップで黒の序盤の最弱点f7を狙う、Ba3などで黒のキングサイドをさらに狙う、Qb3からQxb7を狙う、などがある。
[編集] ラトビアン・ギャンビット
黒が主導権を握りにかかる、激しいギャンビット。
1 e4 e5 2 Nf3 f5 黒がfファイルのポーンを捨て、その代償に攻撃権を得る。
[編集] ブダペスト・ギャンビット
比較的マイナーなオープニング。黒は基本的にポーン損を取り返せる。
1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ng4
ここで白がポーンを守りに行くと 4.Bf4 Nc6 5.Nf3 Bb4+ 6.Nbd2 Qe7
などで黒が取り返すことができる。そこで守れないならば差し出す手もある。 4.e6 として黒に応手を聞くのも有力な手。
[編集] エーニッシュ・ギャンビット
ルイ・ロペスの黒からの一変化。 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 f5 黒が一気に仕掛けることになる激しい変化が多い。