キムラグモ
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?キムラグモ | ||||||||||||||
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ヤンバルキムラグモ Heptathela kimurai yanbaruensis |
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分類 | ||||||||||||||
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種 | ||||||||||||||
本文参照 |
キムラグモというのは、節足動物門クモ綱クモ目ハラフシグモ亜目ハラフシグモ科に属するクモの一種Heptathela kimuraiの和名、あるいは広義にはハラフシグモ科キムラグモ属Heptathelaに属するクモの総称である。腹部に節があり、最も原始的なクモの一つとして有名である。この特徴を持つハラフシグモ科の現生種として、日本で初めて発見、記載された。
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[編集] 特徴
キムラグモは、ややずんぐりとした褐色のクモで、体長は約1.5cmになる。
キムラグモの体は、頭胸部と腹部からなる。頭胸部には、一見すると5対の歩脚があるように見える。これは、触肢が歩脚と同じ形に発達するためである(普通のクモ類では、触肢は歩脚状だがはるかに小さい)。また、鋏角は大きく発達し、これは穴掘りに使用される。
キムラグモの腹部には、はっきりとした体節があり、背面には体節ごとにやや硬化した背板がならぶ。一方、クモ亜目に属する一般的なクモ類では、腹部には外見上は体節が見られない。それが見られることが、腹節グモの名称の由来であり、原始的性質である。腹面前方には、二対の書肺がある。また、腹面中央には、四対の出糸突起があるが、長い紡錘形で、他のクモより大きく、付属肢に起源することが分かりやすい作りになっている。
[編集] 生活
キムラグモは、地下に穴を掘って暮らしている。切り通しなど、裸の地面が急斜面になったところに多い。斜め下向きに穴を掘り、深さは20cmに達する。巣穴の入り口には糸で作った幕によって蓋をしてある。蓋は入り口の上側で蝶番のように取り付けられ、開け閉めできる。ふたの外側には土や泥がついて、周囲と区別がつきにくくなっている。このような巣は、トタテグモ類と共通である。ただし、トタテグモ類の場合、巣穴の内側すべてに糸で裏打ちしてあるのに対し、キムラグモの場合は、扉と入り口付近だけが糸で裏打ちされている。これは、キムラグモが原始的なクモで、糸を出す能力が十分でないためとも言われる。
クモは巣穴の入り口で待機し、近くを昆虫などが通りかかると、飛びかかって捕らえ、巣に持ち込んで食べる。 東南アジアの近縁属では、穴の入り口から受信糸という糸を地表に放射状に張り、そこに接触した餌に飛びかかって食べるものがいる。
成熟した雄は巣穴から出て、雌の巣穴入り口で、雌の巣穴の戸を一定のリズムで触肢を使って叩く。これによって雌の同意が確認できれば、交接が行われる。
[編集] 名前の由来
この名前は発見者にちなむものである。当時まだ高校生(旧制)だった木村有香(きむらありか)が1920年に鹿児島県で発見し、標本を送られた岸田久吉が1923年に記載、木村に学名と和名を献名した。木村は後に植物学者として名をなし、東北大学を舞台にヤナギの分類で大きな業績を挙げている。当時ハラフシグモ科のクモは東南アジアから4種発見されていただけで、どれも採集困難なものばかりであったので、クモの系統の研究上大きな意味のある発見となった。
[編集] 分類
キムラグモは日本では九州南部から南西諸島にかけて分布する。南西諸島において島ごとに種分化が進んでいると見られていたが、最近になって実際の種分化はより激しく、九州においても地域ごとに別種と見なせるほどの分化が進んでいることが判明した。かつては日本産のキムラグモは九州のキムラグモ、キムラグモの沖縄亜種であるヤンバルキムラグモ、熊本県のヒゴキムラグモ、奄美諸島のアマミキムラグモ、沖縄諸島のオキナワキムラグモ、オキナワキムラグモの八重山諸島亜種のイシガキキムラグモの4種2亜種とされていたが、生殖器の構造などに大きな違いがあることから、現在は国立科学博物館の小野展嗣の1997年、1998年、2002年の論文で以下の14種2亜種に分類されている。
- ブンゴキムラグモ
- ヒゴキムラグモ
- ヒトヨシキムラグモ
- ヒュウガキムラグモ
- キムラグモ
- ヤンバルキムラグモ(キムラグモの亜種)
- ヤクシマキムラグモ
- アマミキムラグモ
- トクノシマキムラグモ
- イヘヤキムラグモ
- オキナワキムラグモ
- イシガキキムラグモ(オキナワキムラグモの亜種)
- トカシキキムラグモ
- キタクメジマキムラグモ
- クメジマキムラグモ
- イリオモテキムラグモ