オーバーエイジ
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オーバーエイジは、オリンピックなどの国際大会に出場する選手のうち、特に男子サッカーの競技規定における選手年齢の上限よりも年長の選手のこと。
[編集] 概要
バルセロナオリンピック以降、原則として夏季オリンピックの男子サッカー競技では、五輪開催年前年の12月31日現在で23歳未満の選手しか選手登録できないことになった。しかし、「本大会に限って、この年齢制限に適合しない選手であっても各チーム3名を上限として登録可能とする」旨の文言が、アトランタオリンピックから追加された。この文言に基づいて登録される選手を、一般にオーバーエイジ(overage)と称する。ただし、条項自体にはオーバーエイジという語句は用いられていない。また女子サッカー競技には年齢制限が存在しないため、オーバーエイジと呼ばれる選手も存在しない。
3名までの登録が可能であることを指して、3名分の登録余地をオーバーエイジ枠と称することも多い。ただし、この3名分の枠はオーバーエイジ選手専用というわけではなく、登録選手数上限の18名に含まれているため、オーバーエイジ選手を登録しない場合には代わりに規定年齢以下の選手を登録すればよい。
オリンピックへの参加国を決めるための大陸別予選では、アジアの予選についてはこの例外規定が適用されないため、オーバーエイジ選手を登録することはできない。
[編集] 経緯
1930年のワールドカップ開始前はオリンピックのサッカー競技は世界一決定戦としての性格を有していたが、1932年のロサンゼルスオリンピックでは進行するプロ化とオリンピック憲章のアマチュア条項が衝突し、五輪期間中の選手の休業補償問題をクリアできず、競技から外された(次回ベルリンオリンピックでは復活)。第二次世界大戦後は各国でプロリーグが整備され、出場できる一流選手が東欧のステートアマ選手に限られたため、五輪におけるサッカー競技は圧倒的にワールドカップより低い位置づけであった。しかし1970年代にアマチュア条項が撤廃され、各種の競技でプロ選手の出場が進み、サッカー競技においても1984年のロサンゼルスオリンピックからプロ選手(欧州・南米の各国については、ワールドカップに出場経験のない選手)の出場が認められた。
1992年のバルセロナオリンピックは、当時国際オリンピック委員会会長であったフアン・アントニオ・サマランチの出身国スペインでの開催ということもあり、大会の注目度を上げるべくサッカー競技へのプロ選手参加を全面解禁しようとしていた。一方で、サッカー競技を統括する国際サッカー連盟は、引き続きワールドカップを世界最高峰のサッカー大会として位置づけたいため、参加規程の同じ世界大会が並立することには反対であった。こうした相反する主張の妥協点として、年齢制限を設けたプロ選手参加による大会が行われた。
しかし、バルセロナオリンピックでのサッカー競技は観客動員の面で、それまでの実績を大幅に下回る数字となってしまった。この原因については様々な指摘があり、たとえば地元スペインの観客が(地域意識が強いために)国家代表への愛着に乏しいためであった、という説もある。一方、人気低迷の原因を「若く知名度に乏しい選手が多い」という点に求める意見もあり、スター選手の参加機会を確保するためにオーバーエイジ規定が追記されることとなった。
[編集] その他のオーバーエイジ規定
アジア競技大会の男子サッカー競技でも、オリンピックの規定にならって同じ年齢制限および例外が追加されたため、この例外規定に沿って登録される選手もオーバーエイジと称される。