オポチュニティ
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オポチュニティ(Opportunity)はマーズ・エクスプロレーション・ローバー-Bといい、NASAの火星探査プログラムで使用された2台の探査車のうちの2号機である。2004年1月25日午前5時5分(UTC)に、火星のメリディアニ平原に無事着陸した。このちょうど3週間前には1号機のスピリットが平原の反対側に着陸していた。これらの探査車の名前は、NASAが主催した学生のエッセイコンテストで最優秀賞を取った9歳の女の子の案によるものである。探査車は、NASAが想定した耐用期間の10倍以上が過ぎた今も性能を維持したまま活動を続け、2007年現在も火星の地質学的な分析を行っている。一週間ごとの活動の状況は、NASAのジェット推進研究所のウェブサイトで見ることができる。
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[編集] ミッションの概観
当初は、オポチュニティの活動は90火星日間が予定されていたが、何度も延長が繰り返され、2006年11月17日をもって、1000火星日に達した。オポチュニティは最初に火星に着地した時、たまたま平坦な場所ではなくクレーターの中に着陸したが、土壌や岩石のサンプルの調査、風景の撮影などを行うことができた。この時のサンプルの分析結果より火星の表面に赤鉄鉱が存在することが明らかになり、過去に水が存在していたという仮説が生まれた。
この調査を行った後、オポチュニティはエンデュランスというクレーターを目指して走行し、2004年の6月から12月までここで再び調査を行った。自らの耐熱装甲が捨てられた場所の近くで隕石を発見し、この隕石はヒート・シールド・ロックという名前で知られるようになった。
2005年の4月末から6月始めにかけて、オポチュニティは走行困難な砂丘に突入し、いくつかの車輪が砂に埋まってしまった。6週間以上に渡って、地球上で実験を繰り返し、機能を失わずに脱出するための策が検討された。数センチレベルの緻密な作戦によって、オポチュニティは何とか脱出に成功し、走行を続けることができた。
オポチュニティは2005年10月から2006年3月まで、南方のビクトリアクレーターを目指したが、その途上でエレバスという大きくて浅いクレーターに立ち寄った。この間に、アーム部分にいくつかの機械的な問題を抱えた。
2006年の9月末、オポチュニティはビクトリアクレーターの外縁部に達し、現在も外縁に沿って、時計回りに探査を続けている。2007年上旬にも、クレーターの中に至るルートが発見され、オポチュニティがビクトリアクレーターの中に入ることが期待されている。
地球時間の2年を越える活動で、オポチュニティの走行距離は10000mにも達した。またスピリットとオポチュニティには、倒壊したワールドトレードセンターに使われていた金属が積まれている。
[編集] 2004年:着陸と初期の観測
着陸場所:イーグルクレーター オポチュニティは、火星の東経354.47°、南緯1.94°の位置にあたるメリディアニ平原の一角に着陸した。これは当初の計算より24kmほど東にずれた場所であった。メリディアニ平原はほとんど平らな場所であるが、オポチュニティは直径約20mのクレーター内に着陸してしまった。NASAの科学者は、たまたまクレーター内に着陸したことを「ホールインワン」と呼んで面白がり、後にこのクレーターはイーグルクレーターと名づけられた。ここは、これまで火星探査機が訪れた場所の中で最も暗い場所であり、周囲の状況が見えるようになるまで2週間もかかった。
クレーターの赤土の中に無数の岩が露出した様子が、荒い灰色の粒と細かく赤い粒の混合物のように見えて、科学者の興味をそそった。オポチュニティ付近のこの様子は、パノラマカメラで撮影された。現在ではこの岩は、火山活動の痕跡か風か水で運ばれた堆積物であると考えられている。この場所は、オポチュニティ・レッジと命名された。
地質学者によると、地面表層が指の厚さほどもないことが、この岩が風や水の堆積物であるか火山の噴出物であることを示しているという。火星探査プログラムに参加する科学者の一人でハーバード大学のアンドリュー・クノールは「それら二つの仮説を区別することは可能だ」と言った。もしもこの岩が堆積物であるなら、風よりも水の方が可能性がありそうだ、とも語っていた。このような岩は10cmほどの高さで、表層は場所によっては数mmほどの薄さである。
[編集] オポチュニティ・レッジの岩
火星時間の15日目に、オポチュニティはこのクレーター内にある「ストーンマウンテン」と名づけられた岩の拡大写真を撮った。これにより、火星の岩は地球のものと比べてとても細かい粒子でできている可能性が高まった。風化や浸食による黒いしみのような模様も見られた。
火星時間の16日目に撮影され、2月10日に地球に送られてきた写真によると、岩盤の薄い表層は小さな角度で収束、分岐が見られた。これは火山流、風、水などの流体によってこの岩ができたことを示していると考えられる。火星に水が存在したという仮説を支持する科学者にとっては、この発見は大きな意味を持つものとなった。
[編集] エル・カピタンの岩
2月19日、オポチュニティ・リッジの探査は成功と宣言され、次の探査の目標が選定された。10cmほどの高さの岩、エル・カピタンはテキサス州にある山の名前から命名された。オポチュニティは火星時間の27日目にエル・カピタンに到着し、パノラマカメラで写真を撮影した。
火星時間30日、オポチュニティは岩石採集用のロボットアームを始めて使用し、エル・カピタン近辺の岩を分析した。右の図は、穴を開けて掃除をした後の近影写真である。
記者会見が行われていた3月2日、NASAの科学者たちは岩盤の分析結果から火星に液体の水が存在していたと結論付けるかどうか議論していた。