エチルターシャリーブチルエーテル
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エチルターシャリーブチルエーテル | |
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IUPAC名 | 2-エトキシ-2-メチルプロパン |
別名 | ETBE tert-ブチルエチルエーテル |
分子式 | C2H5OC(CH3)3 |
分子量 | 102.17 g/mol |
CAS登録番号 | [637-92-3] |
形状 | 無色液体 |
密度と相 | 0.74 g/cm3, 液体 |
融点 | −97 °C |
沸点 | 73 °C |
エチルターシャリーブチルエーテル(Ethyl Tertiary-Butyl Ether, 略称 ETBE)とは、エタノールとイソブテンから合成される化学物質である。 自動車燃料に混合して使用されている。
酸触媒によるETBEの合成式を下に示す。
目次 |
[編集] 特性
- 蒸気圧が低いため燃料が揮発しにくい。
- オクタン価(火花点火式エンジン用燃料のアンチノック性を表す尺度)が高いため、アンチノック性が優れている。このため、MTBEと同様、オクタン価向上剤として活用される。
- 水との相溶性が低いため、水と混和しにくい。
[編集] ガソリンへの混合の規制
ガソリンへのETBEの混合については、日本においては揮発油等の品質の確保等に関する法律により、約8.3質量%までとされている(明示はないが、含酸素率1.3wt%との規制によりそのような計算となる)。
[編集] ETBE混合ガソリンの特性
[編集] 環境への影響
ETBEをガソリンに混合しても、蒸気圧が上昇せず、ガソリンからの燃料蒸発ガスを増加させないため、光化学スモッグの発生に影響を及ぼさない。
[編集] 自動車部材への影響
ETBE混合ガソリンは、水分が混入しても、ETBEが水と混和して分離することがなく、水分を除去することも可能であり、ガソリンの性状は変化しない。このため、金属の腐食やゴムの劣化等が生じず、自動車の安全性や走行性能に問題を生じない。
[編集] 人体への影響について
ETBEについて、急性毒性、発がん性などのデータ・情報が十分ではないことから、その人体への影響・毒性評価はまだ十分には明らかになっていない。
ETBEは、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律で「継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある化学物質に該当する疑いのある化学物質」(「第二種監視化学物質」)と判定されており[1]、生物体内への蓄積性はないものの、難分解性であり、かつ、人への長期毒性の疑いがあるとされている。 このため、国においては、平成18年度から2か年の予定で、ETBE導入環境整備の一環として、ETBEの化学物質リスクに関する調査研究を行うこととしている。
なお、オーストラリアではETBEの毒性に関する知見が十分でないとして、ガソリンへのETBEの添加を禁止している[2]。
[編集] バイオETBE混合ガソリンの販売
バイオエタノールを原料とするETBEはスペイン、フランス、ドイツなどで以前からガソリンに混合して使用されていたが、日本でも2007年4月27日から東京近郊を皮切りに混合ガソリンの販売が始まった[3]。
エタノールはサトウキビなどから生成されたバイオマスエタノールを使用し、イソブテンは石油の生成過程の副産物として得られたものを使用している。 2007年4月に発売された混合燃料のETBEはフランスから輸入されたものである。
バイオエタノールを利用した燃料としてはETBEのほかに、ガソリンに直接エタノールを混合するE3方式のものが2007年夏に販売開始される予定である。
[編集] 参照文献
- ^ 第二種監視化学物質に指定された場合、当該化学物質の製造・輸入者は、毎年度、前年度の製造・輸入数量、用途等を経済産業大臣に届け出なければならず、製造・輸入数量の合計数量は経済産業大臣により公表されることとなる。
- ^ 「ETBEについて」 平成15年10月10日実施第3回再生可能燃料利用推進会議 資料3(環境省ウェブサイト)
- ^ 「バイオガソリンについて」 石油連盟ウェブサイト
[編集] 参考文献
- 「ETBE利用検討ワーキンググループとりまとめ」総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会燃料政策小委員会ETBE利用検討ワーキンググループ(第9回・平成18年4月4日開催)