エスキモー
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エスキモー (Eskimo) は、北極圏のシベリア極東部・アラスカ・カナダ北部・グリーンランドに至るまでのツンドラ地帯に住む先住民族の総称である。
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[編集] 生活と文化
雪や氷で造ったイグルー等に居住し、魚や海獣を捕って生計をたて、カヤックやイヌぞりによる移動生活をおくっていた。
[編集] 食生活
伝統的なエスキモーでは、食生活は狩猟によって得た生肉が中心であった。獲物は漁を中心とするエスキモーはアザラシ・鯨等、また陸での猟をするエスキモーはカリブー(トナカイ)などである。生肉の他は、ツンドラの原野に自生するコケモモの実などを食することもあるが、農業は不適な土地なので穀類を食べることはなかった。 また、極寒の土地であり醗酵食品(酒を含む)はエスキモーには存在しないという定説が以前はあったが、グリーンランドのイヌイットでは海鳥の醗酵物キビヤックを食する習慣があることがわかり、この定説は過去のものである。
現在では、アメリカの食文化が流入しており、伝統的な食文化は破壊されつつある。この結果、伝統的な食事からは得られていたエスキモーが住む地域では採りにくい成分が不足してしまうという問題も起きている。
[編集] 民族・部族
なお、エスキモーとは単一の民族を指す言葉ではなく、大きくはアラスカ北部以東に住むイヌイット(Innuit)系とアラスカ中部以西のユピク(Yupik)系に分けられる。なおグリーンランドでは、カラーリットと呼ばれている。
総人口約9万人のうちグリーンランド人住民が最も多く、4万1,000人。アラスカ3万2,000人。カナダ1万2,000人。シベリア1,200人を数える。
[編集] 言語
これらの言語は、開拓時代以来の米国の同化政策により現在では殆ど話者は失われた[要出典]。
[編集] 捕鯨への圧力
エスキモーには国際捕鯨委員会(IWC)から先住民生存捕鯨の枠が認められている。シベリアのエスキモーの住む地域では食料事情が悪く捕鯨は必要不可欠である。しかし先進国からは伝統的な方法での捕獲を求められており、環境保護団体から捕鯨そのものへの批判がある。
[編集] 「エスキモー」の呼称は蔑称か
「エスキモー」の語源は東カナダに住むクリー族の「生肉を食べる者」を意味する語であるとよく言われるが、これは民間語源である。しばしば蔑称的に使用されたため、1970年代ごろからカナダでは「エスキモー」は差別用語とされ、「人々」を意味する彼らの言葉「イヌイット」が代わりに使用されている。日本のマスコミ、出版界でも「エスキモー」は差別用語であり「イヌイット」に置き換えられるべきとされていた[1]。この背景としては、生肉を食べる行為は野蛮であるという一部の思い込みなどがある(実際は、植物の育たない極地においてビタミン類などの植物性の必須栄養を摂る唯一の手段である)。
イヌイット[2]という呼称は、本来「人々」を意味する言葉ではなかったとされている。先住民運動の高まりによって、詳しい経過は不明だが、これまでエスキモーと呼ばれてきた集団について自称としての呼称が必要となり、イヌイットという言葉が採用されたのである。[3]。
カナダ以外の地域では「エスキモー」と呼ぶことに何も問題はない。アラスカでは「エスキモー」という呼称はれっきとした公用語で差別用語ではない。あえて言うならばアラスカエスキモーは「イヌピアト」で、シベリアやセント・ローレンス島在住の少数民族は「ユーピク」と呼ばれ、カナダのバフィン島やグリーンランド方面に住む少数民族の呼称である「イヌイト」と呼ばれることの方が差別的とされる。
「イヌイト」は、従来「エスキモー」と呼ばれている北方民族のうち、最大の勢力を占める部族の名前なので、総称の「エスキモー」を一律に「イヌイト」と呼び代えることは、喩えるなら「日本人(日本国籍を持つ者)」のことを帰化日本人やアイヌ民族などを無視して「大和民族」と呼ぶのと共通した問題を孕むことになる。
最近では本人達が「エスキモー」と自称している場合は置き換えないマスコミも多い。
[編集] 補注
[編集] 関連項目
- エスキモー犬
- イヌクティトゥット語
- エスキモー・アレウト語族
- カラーリット
- ヌナブト準州
- グリーンランドのイヌイットの音楽
- エスキモー星雲:ふたご座付近の惑星状星雲NGC2392。フードを被ったエスキモーのように見える。
- エスキモー・エキス:ドラえもんに登場する架空の薬品
- Mac OS X:イヌクティトゥット語の入力メソッドが付属する
- キビヤック
- 森永乳業:エスキモーブランドで多数のアイスクリーム製品を出している。
[編集] 外部リンク
- 「業績一覧」におけるレポートが詳しい。