ウエスト・サイド物語
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『ウエスト・サイド物語』(ウエスト・サイドものがたり, West Side Story)は、1957年初演のアメリカのミュージカル。
ジェローム・ロビンズ(Jerome Robbins)の原案により、脚本をアーサー・ローレンツ(Arthur Laurents)、歌詞をスティーヴン・ソンドハイム(Stephen Sondheim、ソンダイムとも)、音楽をレナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)が書き、1957年にワシントンD.C.で初演された。
シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』に着想し、当時のニューヨークの社会的背景を織り込み、白人とプエルトリコ移民との2つの異なる非行グループの抗争の狭間に揺れる2人の若い男女を描いたものである。
1961年に映画化された。ウエスト・サイド物語 (映画) を参照。
目次 |
[編集] ストーリー
[編集] 第一部
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
ニューヨークのウエスト・サイド。白人非行グループ、「ジェッツ(ジェット団)」と、プエルトリカンの非行グループ「シャークス(シャーク団)」。この2つのグループは、特にビル屋上運動場の占有権を巡って互いに対立し、ゴタゴタを起こしてはシュランクたち警察に止められる繰り返しとなっていた。《Prologue「プロローグ」》
ジェッツのリーダー・リフはシャークスを追い払うための最終手段として決闘しようと思いつき、夜に行われるダンス・パーティは中立地帯と考え、シャークスとの話し合いをしようと企む。その決闘には元ジェッツのリーダーでありながら、現在は非行から足を洗いまじめに働いているトニーに決闘に参加してもらおうとする。ジェッツのメンバーも了解し、興奮する心を歌って踊る。《Jet Song「ジェット・ソング」》
リフはドックの経営するドラッグストアで働くトニーにパーティに来るよう頼むが、真面目なトニーは店の仕事や掃除で忙しいという理由で断る。しかし、リフの往生際悪さゆえ、自分に感じた幸せな予感で、パーティ参加をやむなく行くことにするが、その幸せはきっと自分を待っていると口ずさむ。《Something's Coming「何かが起こりそう」》
その夜、体育館で行われたダンスパーティーでは、ジェッツとシャークスの二つのグループが踊っている。途中から現れたトニーはベルナルドの妹・マリアと出会い、2人は、瞬く間に恋に陥る。それを発見して怒ったベルナルドをリフが割り込み、ドラッグストアにて決闘の申し込みをしようと彼に言う。《Gym Mambo「体育館でのダンス」》
チノに連れられ、家に帰っていくマリア。トニーはマリアの名を知り、美しい名だと言いつつ、マリアを探す《Maria「マリア」》
シャークスは帰宅。その直後、ベルナルドたち少年は決闘の内容を決めるためにドックの店へ向かう。その間、アニタたち少女の面々の中、移民を楽しむ者はアメリカを「素晴らしい国」、母国を恋しがる者は「悪い国」だとお互い言い争う。《America「アメリカ」》
トニーは恋したマリアを探している途中、とあるアパートで彼女を見つけ再会。その非常階段で、互いに恋を認め合う。《Tonight「トゥナイト」》
一方、ジェッツの少年たちはシャークスとの決闘を待ちきれずに頭に血が上って冷静さに欠けていた。リフはそんなメンバーを落ち着かせるために歌う。「イライラしていては駄目だ。まずはクールになって奴らの戯れ言はあっさりと流してしまえばいいのさ!クールにな・・・」《Cool「クール」》
ドックの店では、ジェッツとシャークスが決闘の手順に関する会議……もとい、果し合いの内容を決めるための段取り付けを行う。帰ってきたトニーの提案で一対一の素手で決闘することを決定する。
翌日、ブティックで仕事を終えたマリア。その後トニーがブティックを訪ねる。決闘の話を知ったマリアは、トニーに素手であろうと争うのはよくないと、決闘をやめさせるように言う。それから二人は偽りの結婚式をして再びお互いの愛を再認識する。《One Hand, One Heart「ひとつの心」》
夕暮れのウエスト・サイド。ジェッツとシャークスは決闘、トニーとマリアはの決闘中断を信じての再会、アニタは決闘後のベルナルドとのデートそれぞれを今か今か、と思いを歌に表す。《Quintet「クインテット」》
決闘の場。遅れて現れたトニーは、決闘をやめさせようとするが、ふとした勢いでベルナルドがリフを刺してしまう。我を忘れたトニーは、怒り任せにベルナルドを刺す。乱闘となったが、パトカーのサイレン音に少年たちは殺された2人を残して散る。《The Rumble「決闘」》
[編集] 第二部
決闘の中断を信じて部屋で楽しみに待つマリア。そんな極度に明るい彼女を友人たちは不思議に見ていたが、アメリカに馴染めたことが確かだと思い、安心するのであった。《I Feel Pretty「素敵な気持ち」》
機嫌よさげなマリアの下に最初に現れたのは、彼女の婚約者であり、決闘から逃げてきたチノであった。チノはベルナルドがリフを殺してしまったことを話そうとするが、怖さのあまり喋ることが出来ず、「トニーがベルナルドを殺した」としか言えず、そのまま部屋を出て行った。突然のショックのあまり、マリアは落ち着いてはいられなかった。直後、トニーは彼女を訪ね、警察へ自首すると覚悟を決めていたが、それでも見捨てられないマリアは「行かないで!行っちゃいや!」と頼み、どこか遠くへ逃げようと二人で誓う。しばらくの間、トニーはマリアの部屋で和みの時間を過ごす。《Somewhere「どこかへ」》
トニーとマリアが二人で居る時を同じくして、決闘から散開した後、偶然再会することができたA-ラブとベイビー・ジョン。市警のクラプキ巡査と出くわしてしまい、決闘で起きた殺人についての調査を受けるが、上手く誤魔化して追い払うことに成功。その後に他の場で集まっていたジェッツの仲間たちと出会う。警察から度々見下されたことに対し、自分たちが不良になったのは大人たちが悪いからだ、と言って悔しさに明けた。《Gee,Officer Krapuke「クラプキ巡査どの」》
数時間後にアニタが現れ、彼女はトニーが窓から飛び降りて逃げたことに気づく。後から追おうとするマリアに、彼女は恋人のベルナルドを殺された悔しさからトニーを否定するが、マリアのトニーに対する愛情の強さを認める。シュランクから事情聴取されたマリアの代わりに、アニタは「マリアは後からドラッグストアに来る」という伝言を頼まれ、急いで店へ向かう。《A Boy Like That/I Have Loveあんな男に~私は愛している~」》
ドックの店では、ジェッツのメンバーがトニーを地下に匿い、屯している。そこへアニタが訪れ、トニーに会わせるように頼むが、少年たちは「人殺しの彼女め!」と言って、彼女の用件を理解しようとせずに彼女につらく当たり始めるのであった。ドックが現れ、少年たちを黙らせたが、ジェッツに対し不信になったアニタは嘘をつき「マリアは死んだ、チノに殺された!」と伝えてしまい、それから何処へと消え去っていった。《Taunting「トーンティング」》
アニタの嘘を本当だと思い込んだドックはトニーにその話を伝える。自暴自棄になったトニーは、店の外へ出る。チノを探し「出て来いチノ!僕もマリアの様に殺してくれ!」と叫びまわる。その途中、マリアの姿を見つけ駆寄ろうとした時にチノの銃弾に斃れる。
倒れたトニーを抱くマリアのもとへジェッツ、シャークの双方が駆けつける。トニーは「僕たち、駄目だったな・・・」と言ったことに対し、マリアは「愛の力が強ければいつまでも一緒にいられるのよ・・・」と言う。それからトニーはマリアの腕の中で息を引き取る。マリアはチノから拳銃を受け取り、駆けつけたジェッツやシャークスの面々に銃口を向け「みんながトニーを殺したのよ!リフも、ベルナルドも!銃やナイフではなく、みんなの憎しみの心が!!みんな殺して私も死ぬわ!!みんな憎いんだもの!!」と怒りを露わにするが、マリアはトニーが死んだ悔しさと悲しさにただ涙するのであった。
ジェッツの数名は悲しみを堪え、トニーの遺体を運ぶ。だが、遺体を落としそうになったその時、シャークスの少年が落ちかけた遺体を抱える。争い続けた少年たちはようやく和解して、お互い真の友情を分かち合うのであった。
マリアは最後に言った。「いつまでも一緒よ、アントン。」(Somewhere –Finale– 「フィナーレ ~恋は永遠に~」)
[編集] キャラクター
- 白人の非行少年グループ「ジェッツ」
- トニー
- 主人公。元ジェッツのリーダー。本名アントン・ウィチェック。
- 喧嘩ばかりの日々に嫌気が差したため、現在はドックの家で真面目に働いている。
- ダンス・パーティになるまで何か自分に幸せ(マリア)が来ると心の中で悟っていた。その結果、見事マリアと結びついたが、架け橋になりかけたその愛は悲劇へつながることとなった。
- 「ロミオとジュリエット」でいうロミオ。
- リフ
- ジェッツの現在のリーダー。本名リフ・ロートン。
- トニーの義理の兄弟にあたるが、自分が住む家の叔父が嫌いな為にトニーの家に食いついてきた軟弱者。タバコを吸っている。
- ダンス・パーティで跳ね起き、前転宙返り、バック転などアクロバティックなパフォーマンスを披露していたので、運動神経は非常に優れている模様。
- 「ロミオとジュリエット」でいうマキューシオ。
- ディーゼル
- ジェッツの団員で、副官的存在。筋肉質な体格で、リフから一対一の決闘に推選された。
- ベイビー・ジョン
- ジェッツの団員。頭の「ベイビー」は童顔である事から。トニーに助けられたが、過去にエメラルズとの決闘では襲われたり、本編の序盤ではシャークスから集団リンチにあったりと散々な目に遭っている。漫画「スーパーマン」が好き。
- A-ラブ
- ジェッツの団員。アル中の父親がいるが、気にしている。決闘が中断されてからズボンのファスナーが開けっ放しだった。
- アクション
- ジェッツの団員。客引きをしている母親がいるが、その事に触れると怒り狂う。
- 名前の通り好戦的で決闘の話になると非常に興奮する、血の気が多い短気な性格だが、物事を客観的に見る冷静さも持ち合わせている。
- エニィボディズ
- ジェッツの団員になりたがる男勝りの少女。ジェッツの面々からは邪魔者扱いされていたが、後半で犯罪を犯して放心状態になったトニーを助けたり、チノの復讐のことをジェッツに伝えたりと非常に頼りな人物となる。
- 「ロミオとジュリエット」でいうロミオの召使いバルサザー。
- グラジェラ
- リフの恋人。第二幕でリフが死んだことを死って落涙した。
- ヴェルマ
- アクションの恋人。状況関係なしに茶々を入れることがあり、「Woo~…」が口癖。
- プエルトリコ系の非行少年グループ「シャークス」
- ベルナルド
- シャークスのリーダー。本名ベルナルド・ヌネス。
- アメリカを毛嫌いする。妹のマリアと恋人のアニタを溺愛しているが、彼女たちの思いと自分の思いが合わないことに悩んでいた。
- 「ロミオとジュリエット」でいうティボルト。
- マリア
- 本作の主人公。本名マリア・ヌネス。
- ベルナルドの妹。ブティックで働く。
- ダンス・パーティからトニーと出会い心惹かれ、相思相愛となるが、その愛は後に悲劇を繰り返すこととなる。
- 「ロミオとジュリエット」でいうジュリエット。
- アニタ
- ベルナルドの恋人。本名アニタ・パラチオ。
- アメリカは素晴らしい国だとベルナルドに主張するが、コンプレックスを抱いている彼にはその心を理解してもらえることはなかった。マリアの善き理解者で非常に忍耐強い。
- 「ロミオとジュリエット」でいうジュリエットの乳母。
- チノ(サントラ盤のジャケットでは「ニーノ」表記)
- シャークスの団員。マリアの婚約者。
- 最初はおとなしく、照れ屋な性格だったが、決闘でトニーにベルナルドを殺されたことと、マリアを奪われたことをきっかけに彼に対して復讐心を抱く。
- 「ロミオとジュリエット」でいうパリス。
- ペペ
- シャークスの団員。バンダナを常に頭に巻いている。序盤でA-ラブに唾を吐いた。
- インディオ
- シャークスの団員。序盤でベイビー・ジョンに迫った際、顔に白ペンキを塗られた。
- リコ
- シャークスの団員。序盤でベイビー・ジョンに集団リンチを行った一人。
- フランチェスカ
- ペペの恋人。故郷のプエルトリコが恋しい模様。
- ロサリエ
- インディオの恋人。よくフランチェスカのスカートをめくる。
- 大人たち
- ドック
- トニーの雇い主。
- 自分の過去を話しジェッツの少年たちに非行から足を洗いスポーツなどをするよう勧めていたが、ドックの若かった頃とは違うという理由で少年たちからはその考えは否定された。たびたび小馬鹿にされるが、ろくな親がいないジェッツの少年たちにとってただ一人の理解者であり頼りになる老人。
- 「ロミオとジュリエット」でいうローレンス修道士。
- シュランク
- 市警ウエスト・サイド分署の警部補。
- プエルトリコの面々が移民したことを快く思っていないため、シャークスを特に嫌う。
- 常に少年たちのギャング抗争に悩まされている。また、過去に苦労した交通課へ格下げされることを恐れている。
- 少年たちのギャング抗争を撲滅するためなら卑劣なことさえも企む警察とは思えない腹黒い男だが、終盤でトニーを殺されてショックを受けるマリアの気持ちや場の状況を理解し、身を引いていたので、要所では大人としての行動が取れる人物である。
- クラプキ
- ウエスト・サイド分署の巡査部長。シュランクの腰巾着的存在。
- シュランクと比べると高慢な上、四角四面で融通の利かない性格。ジェッツの少年からはシュランク以上に嫌われている。
[編集] 主な曲
- 「何か起こりそう」(Something’s Coming)
- 「マリア」 (Maria)
- 「アメリカ」 (America)
- 「サムウェア」(Somewhere)
- 「トゥナイト」 (Tonight)
- 「クラプキ巡査への悪口」(Gee, Officer Krupke)
- 「ひとつの心」(One Hand, One Heart)
- 「クール」(Cool)
- 「あんな男に~私は愛している」(A Boy Like That/I Have Love)
- 「恋は永遠に」(Somewhere –Finale–)
[編集] 日本における公演
日本においても多くの舞台上演が行われた。 日本での上演権は、株式会社インターナショナル・ミュージカルス新社が保有している。
- ブロードウェイのキャストによる来日公演 (→ウエスト・サイド・ストーリー2006年日本公演)
- 宝塚歌劇団が日本に紹介
1968年 | 1998年 ( )内は新人公演 |
1999年 ( )内は新人公演 |
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トニー | 古城都 | 真琴つばさ (大空祐飛/大和悠河) |
稔幸 (朝澄けい) |
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マリア | 八汐路まり | 風花舞 (花瀬みずか/叶 千佳) |
星奈優里 (秋園美緒) |
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リフ | 清はるみ | 初風緑 (嘉月絵理※1) |
絵麻緒ゆう (真飛聖) |
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ベルナルド | 千波淳 | 紫吹淳 (霧矢大夢) |
彩輝直 (水瀬あお) |
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アニタ | 砂夜なつみ | 樹里咲穂 (西條三恵) |
羽純るい (雪路歌帆) |
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ドック | 小柳日鶴 | 立ともみ | 夏美よう | |
シュランク刑事 | 美山 しぐれ | 真山 葉瑠 | 英真なおき (莉理せいら) |
※1・新人公演において鳴海じゅんが休演したことに伴う代役
- 1980~1990年代は、劇団四季により断続的に上演された (→『ウエストサイド物語 (劇団四季)』)
このほか、少年隊、嵐 (ジャニーズ)などによって演じられた。
[編集] シンフォニック・ダンス
レナード・バーンスタインは1960年に、シド・ラミンとアーウィン・コスタルの手を借りてミュージカル中の主要曲を集めて編曲し、オーケストラのための演奏会用組曲「『ウェスト・サイド物語』からのシンフォニック・ダンス」(Symphonic Dances from 'West Side Story' )を作った。初演は1961年2月13日カーネギー・ホールで、ルーカス・フォス指揮のニューヨーク・フィルハーモニックによって行なわれた。バーンスタイン自身による複数の録音がある他、しばしばアメリカ内外のオーケストラの演奏会で取り上げられたり録音が行なわれている。
構成は次の通りで、全曲が切れ目なく演奏される。
- プロローグ (Prolog)
- サムホエア (Somewhere)
- スケルツォ (Scherzo)
- マンボ (Mambo)
- チャチャ (Cha-Cha)
- 出会いの場面 (Meeting Scene) ~クール (Cool) ~フーガ (Fugue)
- ランブル (Rumble)
- フィナーレ (Finale)
[編集] 外部リンク
- パン屋:1990年代までの主な日本公演とあらすじ
- インターナショナル・ミュージカルス新社:日本での上演許諾権者