イノシシ科
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
?イノシシ科 | ||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
アカカワイノシシ |
||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||
|
||||||||||||||
属 | ||||||||||||||
イノシシ科 (猪科、Suidae) は、脊椎動物門・哺乳綱・ウシ目に属する動物の一科。指先が蹄になるシカやカモシカなどと同じ偶蹄類の仲間で、神経質な動物である。
[編集] 特徴
偶蹄類の祖先は、中新世から鮮新世の気候変化によって森林から草原などに進出し、それぞれが異なる進化を遂げていった。アフリカの広大な草原にはウシの仲間が、ツンドラや温帯の草原にはシカの仲間が、開けた山岳地帯にはヤギやヒツジの仲間が進出を果たしている。しかし現在もその多くが森林に残るイノシシ類は、そのまま原始的な特徴を色濃く残し(他の偶蹄類に比べて指と歯の数が多い、牙があるなど)、また、単純な構造の胃を持ち反芻をしないため、栄養価の高い食物を必要とする。つまりは農作物の嗜好が高いということでもあり、その農業被害が各地で問題となっている。雑食性で、地下茎や木の実、昆虫類、ヘビなど何でも食べるが、その身体的構造から見ても本来は植物質が中心である。
繁殖力が強く、アフリカ大陸からヨーロッパ、アジアにかけて広く分布する。家畜が野性化したものを含めると、寒帯を除く世界中に生息している。現在16種が分類されており、4属から8属にまとめられると考えられている(特に東南アジアには多種が生息)。ブタもイノシシ科の一種であるが、ブタはイノシシが家畜化されたものであり、この2種は同一種(Sus scrofa)に括られている。
夜行性のものも数種見られるが、基本的には昼行性である。というのもイノシシ類は色覚を持つと言われ、青を中心とした色に反応を示すのであるが、これはかれらが元来昼行性であることを示唆している。しかし視力そのものはそれほど発達しておらず、敵や餌の発見は嗅覚・聴覚に頼っている。見通しの良くない藪や森林に生息しているため、そのような進化を遂げたと考えられる。嗅覚はかなり鋭敏で、ヨーロッパでは地中のトリュフ探しにイヌと共にブタも利用される。
[編集] 寄生虫
本科の動物は、人体寄生性のテニア科条虫のうち、ヒトとイヌが終宿主となる有鉤条虫(サナダムシの一種)の嚢虫(幼虫)を内臓・筋肉内に宿していることが多い。十分火を通さずに肉を摂食すると体内で成長して成虫となり、消化管に寄生する。そして、この成虫を宿しているヒトやイヌから排泄されるその卵を経口摂取したブタなどの体内で嚢虫となる。ヒトは中間宿主にもなり得るため、ヒト→ヒト感染も成立する。嚢虫は内臓・筋肉内だけでなく脳に入り込む場合もあり、流行地ではてんかんの原因にもなっている。
ヒト(嚢虫-成虫-卵)→イノシシ類(卵-嚢虫)→ヒト。これが有鉤条虫の生活環であり、嚢虫感染肉の生食を避けることによって、この寄生虫の生活環を絶つことができる。
[編集] イノシシ科の分類
イノシシの仲間には交雑による遺伝的撹乱もあり、分類が不確定な種・亜種も多い。
- バビルサ属 Babyrousa
- モリイノシシ属 Hylochoerus
- モリイノシシ H. meinertzhageni - アフリカ大陸の赤道近辺に分布。
- イボイノシシ属 Phacochoerus
- イボイノシシ P. aethiopicus - サハラ砂漠以南のアフリカに広く分布。主にサバンナに生息。
- ケープイボイノシシ P. africanus - アフリカ南部に多く生息する。イボイノシシの亜種とも考えられる。
- カワイノシシ属 Potamochoerus
- カワイノシシ P. larvatus - サハラ砂漠以南のアフリカ、マダガスカルに分布。
- アカカワイノシシ P. porcus - サハラ砂漠以南の西アフリカに分布。
- イノシシ属 Sus
- イノシシ(ブタ) S. scrofa - ユーラシア大陸からヨーロッパ、アメリカ南部から南アメリカと世界中に広く分布。
- コビトイノシシ S. salvanius - インドのマナス野生生物保護区にのみ生息。絶滅危惧種。
- スンダイボイノシシ S. verrucosus - インドネシア、フィリピンに広く分布。
- ヒゲイノシシ S. barbatus - カリマンタン島とその属島に分布。
- フィリピンヒゲイノシシ S. philippensis - セブ島、ネグロス諸島の固有種。個体数は減少傾向。