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アルファロメオ・164 - Wikipedia

アルファロメオ・164

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アルファ164 (E-164A)
アルファ164 (E-164A)

アルファ164は、イタリアの自動車メーカー・アルファ・ロメオ1987年から1998年にかけて製造、販売していたベルリーナ(セダン)。

目次

[編集] 概要

日本での発売は1989年。アルファ・ロメオとしては初の大型前輪駆動車であり、ランチア・テーマ/サーブ・9000/フィアット・クロマとは兄弟車にあたる。

デザインはピニンファリーナエンリコ・フミアが担当し、当時のベルリーナとしては内外装ともに非常にスタイリッシュ、特に内装のエアコン操作パネルは斬新なものであった。

派生グレードとして、伝統の四葉のクローバーをつけたクアドリフォリオ(QV)やフルタイム4駆システムを搭載したQ4などがあった。

1998年には、後継に当たるアルファ166の生産、販売が開始され、10余年に渡るモデル生命を終えた。

[編集] 開発を巡る事情

1987年イタリア本国で発表されたアルファ・ロメオのフラグシップモデルである。開発当初、アルファ・ロメオはイタリア産業復興公社(IRI)の支配下にあり、深刻な経営不振にあえいでいた。長年空白となっていたアッパーミドルクラスを埋める必要に迫られていたアルファ・ロメオは、最後の賭けに出るかのように全くの新型車を投入すべく開発に着手する。しかしアルファ・ロメオの財政難は悪化する一方であり、結局のところアルファ・ロメオ単独での開発は叶わず、当初FRレイアウトで計画されていたアルファ164はランチア・テーマサーブ・9000フィアット・クロマとの共同開発プロジェクト、いわゆるTipo4プロジェクトに参加するに至り、FFレイアウトへと設計変更を余儀なくされる。

しかし駆動方式こそ他3社の推すFFを採用するも、アルファ・ロメオの独自性は充分打ち出されることになる。その最たるものがピニンファリーナ(メインデザイナーはエンリコ・フミア)に委ねられた優美かつ躍動感に溢れたスタイリングであろう。ノーズはよりスラントし、ウィンドウシールドの傾斜も強くなっている。またエンジン搭載位置を下げるためフロントサスペンションさらにドアなども他の兄弟車と異なり完全にオリジナルなものとなっている。 エンリコ・フミアよりの強い要望により実現した、その卓越したスタイリングは1988年度「トリノ・ピエモンテデザイン賞」受賞の栄誉に輝いた。また遅れてプロジェクトに参加したおかげで、先行車種に対する市場からのボディ剛性不足の声もフィードバックされ、しかるべき対策が打たれている。

ボディ・デザインは美しいだけではなく、静粛性にも優れていると評価された。スポーツサルーンとして、無音ではなく、聞かせたい音だけ保存しあとは丁寧にシャットアウトされており、セクシーなエンジン音によって官能を刺激する一方、200km/hを越える速度で走行しても普通の声で会話できる。初期ボディのCd値は0.30。(CG、二玄社、1987年12月号、1990年9月号)

発表直前の1986年、アルファ・ロメオは結局フィアット・アウトに買収され、アルファ・ランチア・インダストリアーレというフィアット傘下の民間企業となる。 このような紆余曲折を経てアルファ164はアルファロメオの大きな期待を背に、1987年フランクフルトショーでついにデビューを果たす。その後1990年にはフィアット・アウト社に完全吸収される。だがこれも164にとっては悪いことばかりではなく、そのフィアットが発売前に徹底的なリファインを加えたことにより、組立品質のばらつきが大きく減じられ、品質向上に大いに貢献する結果となった。

日本導入は本国発表から遅れること約1年半、当時のインポーターである株式会社大沢商会アルファロメオ事業部を通じて輸入され、大沢自動車販売株式会社ネットワークとコーンズモータース・ネットワーク系列で1989年4月に3.0V6モデルが発売された。

アルファ164スーパー (E-164K1P)
アルファ164スーパー (E-164K1P)

[編集] モデル

モデル期としては1987年の発売から1993年マイナーチェンジまでの前期と、それ以降の後期に分かれる。日本では、クアドリフォリオ系を別格とすればグレードもあまり多くはない。

発売当初は3リッターV6エンジン、ATモデル単一車種構成だったが、1990年11月にマニュアルミッション搭載、エンジンにライトチューンを施したスポーティーバージョンのクアドリフォリオ(QV)を追加。翌年ATモデルもエンジン搭載位置の見直しなど小改良を実施し、164Lとなった。Lにはレザーシートでリアにも電動リクライニング機構が付いたTopバージョンも存在する。

その後1993年にパッシヴセーフティ強化を主な目的にボディを強化し、DOHC24バルブエンジンを搭載したスーパー(Super)を投入した。また、従来のSOHC12バルブモデルはフェイスリフトなどの小改良を受ける(164FL)。この時のフェイスリフトでは、ヘッドライトが薄いプロジェクターランプに変更されたことで判別ができる。ただし、北米仕様は法規の関係でマイナーチェンジ前と同様のヘッドライトを装備している。内装では、エアコンパネルがピアノタッチのものに変更されているのが目立つ。

そして1994年には、超弩級スポーツサルーンとしてQ4が登場する。

1995年には小改良とともにスーパーがスーパー24Vとなり、ノーマルボディのFLが消えてスーパーボディのスーパー12Vとなる。またQ4も小改良を受ける。

標準モデルのサイズは(全長)4555mm×(全幅)1760mm×(全高)1400mmであるが、後期のスーパーボディでは前後のバンパーが大型化されたことにより全長が4665mmに延長される。

主なグレード、形式、製造年は以下の通り。

  • 164 (E-164A) : 1987年6月 - 1991年7月
  • 164QV (E-164AG) : 1990年11月 - 1993年9月
  • 164L (E-164) : 1991年7月 - 1993年9月
  • 164L(FL) (E-164B) : 1993年9月 - 1995年6月
  • 164Super (E-168B) : 1993年9月 - 1995年6月
  • 164Super12V (E-164K1P) : 1995年6月 - 1998年
  • 164Super24V (E-164K1G) : 1995年6月 - 1998年
  • 164Q4 (E-164K1C) : 1993年12月 - 1994年
  • 164Q4 (E-164K1H) : 1994年 - 1998年

[編集] クアドリフォリオ(QV)

アルファ164クアドリフォリオ (E-164AG)
アルファ164クアドリフォリオ (E-164AG)

1990年に台数限定でリリースされたチューニングバージョンである。クアドリフォリオとは「四葉のクローバー」を意味し、ジュリア以来アルファ・ロメオの高性能モデルに付けられている由緒ある名称である。エンジンはハイカム化等のチューニングを施され、ノーマル比15psアップの200psを出す。このユニットは「世界一官能的なV6」とも呼び称され、「エンジンを買ったら車が付いてきた」とも言われる。

外観上は、エアロパーツとスピードライン社製の15インチ専用ホイールを施され、一目でそれと判る挑戦的な風貌となっている。また、サイドミラーもボディ同色に塗装されている。内装ではレカロ社製のレザーシートが奢られ、メーターナセルに赤いステッチが付くなどの特徴がある。後期型として、24Vのクアドリフォリオも製造されたが、正規版としては日本へ未導入となっている。QVと表記されることもあるが、これはクアドリフォリオ・ベルデ(緑の四葉のクローバー)の略である。

[編集] Q4

アルファ164Q4 (E-164K1H)
アルファ164Q4 (E-164K1H)

もともとFFとしてデビューしたアルファ164であったが、1994年、走行性能の極限を追求した超弩級スポーツサルーンとしてQ4が登場する。これは1991年ジュネーブショーに出品されたコンセプトカー"プロテオ"に搭載された、シュタイヤープフ社と共同開発した"ビスコマティック"と呼ばれるフルタイム4WDシステムと、ゲトラグ社製の6速MTを搭載した他に類を見ないモデルであった。232psを発揮する164QV 24V(日本未導入)用のエンジンおよびボディに4WDシステムを搭載したかたちで、外観上も良く似ているが、リアにドライブシャフトを収めるためにトランクが狭くなっていたり、専用のマフラーが付いていたりと、独自の部分が非常に多い。シートはQVと同様レカロ社製のレザーシートが付き、ホイールは専用のスピードライン社製の16インチとなる。

DOHC 24Vエンジン(Q4)
DOHC 24Vエンジン(Q4)

[編集] エンジン

エンジン構成としては前期モデルでは2リッター直4ツインスパーク(アルファ・ロメオ製)、2.5リッター直4ディーゼルターボ(VM製)、3リッターV6(アルファ・ロメオ製)が用意された。また1988年にはランチアテーマターボ用2リッター直4ターボ(フィアット製)も追加されたが、後にイタリア国内専用として2リッターV6ターボ(アルファ・ロメオ製)へ変更された。本国およびEU内での主力エンジンは2リッターツインスパークであったが、日本へは3リッターV6のみが輸入された。これはアルファ6(セイ)から引き継いだオールアルミ製のエンジンで、この後も改良を受けながら、SZ/RZ、156、166と引き続き使用された。当初はヨーロッパでの主力エンジンは2リッターであったが、安全性等の改良によりボディが重くなるにしたがって販売が3リッターV6にシフトしていった。

後期型では3リッターV6(アルファ・ロメオ製)がダイレクトイグニション化などの改良を受けた。その後ヘッドを24バルブ化した3リッターV6 24バルブDOHCエンジンも追加された。スーパー24VとQ4は同じ3リッターDOHCエンジンであるが、チューニングが異なる。日本仕様で組み合わされるトランスミッションはクアドリフォリオ系を除けば4速ATのみの設定であり、スーパー24Vのミッションは電子制御付きの4速ATとなる。

  • 2リッターツインスパーク(直列4気筒SOHC): 143ps(日本未導入)
  • 2.5リッターディーゼルターボ(直列4気筒): 125ps(日本未導入)
  • 3リッターV6(SOHC) : 185ps
  • 3リッターV6(QV・SOHC) : 200ps
  • 2リッターV6ターボ(SOHC) : 204ps(日本未導入)
  • 3リッターV6 24V(DOHC) : 210ps
  • 3リッターV6 24V(Q4&QV・DOHC) : 232ps

[編集] 内外装色

ノーマルボディの外装色は腰から下を艶ありのガンメタリックに塗られた2トーンが基本となる。ただし、外装色がグリーン、プロテオレッドの場合は上下とも同色に塗られる。またQV、Q4も2トーンであるが、ボディ下部のプレートはエアロパーツを含めて専用の艶消し塗装となる。スーパーボディではより豪華に見せるために上下とも同色となり、間にクロームのモールが配される。ただし、ホワイトの場合は下部がシルバーとなる場合もある。スーパーの最終型ではモールがブラウンに変更され、内装でもステアリングがエアバッグ付きのウッドのものに変更されるなどの差異がある。

本国における主な外装色は以下の通りである。(カッコ内はカラーコード)

  • Rosso Alfa - アルファレッド(130)
  • Rosso Bordeaux metallizzato - ボルドーレッドメタリック(146)
  • Bianco Freddo - コールドホワイト(230)
  • Nero - ブラック(601)
  • Rosso Proteo metallizzato - プロテオレッドメタリック(195)
  • Verde Mitro metallizzato - ミルトールグリーンメタリック(364)
  • Blu Genoa metallizzato - ジェノアブルーメタリック(477)
  • Grigio Titanium metallizzato - チタニウムメタリック(613)
  • Nero metallizzato - ブラックメタリック(632)
  • Grigio Lothar metallizzato - ガンメタリック(642)
  • Grigio Dakar metallizzato - ダカールメタリック(643)
  • Grigio Nuvola metallizzato - ヌボラグレーメタリック(644)
  • Grigio chiaro metallizzato - ライトグレーメタリック(676)
年式・グレードによって制限あり
(195)はQ4専用色
QVは(130)(230)(601)(676)のみ

内装色は以下の通りである。

  • Velluto Blu - ナイトブルー・ベロア(140)
  • Velluto grigio - グレイミックス・ベロア(160)
  • Pelle Nebraska rosso Oriente - レッド・レザー(401)
  • Pelle Nebraska cuoio naturale - タン・レザー(405)
  • Pelle Nebraska grigio antracite - ブラック・レザー(406)
外装色と内装色の組み合わせは年式・グレードによって制限あり
QV、Q4、Super24Vはレザーのみ

[編集] 日本仕様

多くは本国仕様の左ハンドルで販売されたが、日本に輸入されてきたATモデルでは右ハンドルも存在する。また、リアウィンドウ内の下部にハイマウント・ストップ・ランプが装備されたモデルもあった。この場合は、リアウィンドウの熱線がハイマウント・ストップ・ランプを避けるかたちで配置されている。

なお、日本仕様ではフロントフェンダーのウィンカーランプが大型のものに変更されている。それに合わせて、ランプ横にあるピニンファリーナのバッジが短くされており、本来は「DESIGN BY PININFARINA」と表記されているところが「BY PININFARINA」になっている。

[編集] その後の歴史

アルファ164は登場以来およそ10年間、アルファ・ロメオのフラグシップモデルとしての重責を果たし、1998年に生産を終了した。その後は系譜上の後継車に当たるアルファ166にバトンを渡した。この約10年間という期間においてはセールスも概ね堅調で、生産終了の時点でアルファ・ロメオ史上最多量販車種であった事実はあまり知られていない。最多量販車種という称号はその後のアルファ156147に譲るとしても、アルファ・ロメオのベルリーナの歴史においてアルファ164の果たした役割は決して小さくない。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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