アトラアトラ
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アトラトル(アトルアトルとも)とは中央アメリカ一帯、特にアステカで使用されていた投槍器、投矢器をさす。 アトラとはアステカの水の神ないし「葦」の意味であり、それが二つ続くことで「矢」を意味する単語となる。また、ただ単にスピアスロアー(投槍器)と言う事もある。
アトラトラのような投槍器は氷河期時代のほぼ全大陸で大型動物の狩猟に使用されていたが、獲物である大型動物の減少とそれにともなる農耕、牧畜への移行、さらにのちになって現れた弓矢や投石器によって淘汰され、多くの地域で投槍器は忘れ去られ、使われなくなった。
アメリカ大陸ではユーラシア大陸のように馬をはじめとする多くの家畜がおらず、勿論それを有効に活用できた騎馬民族も少なくとも大航海時代になってヨーロッパ人がそうした家畜を持ち込むまでは存在せず、合成弓や長弓のように威力のある弓、及びそれを効果的に活用できる戦術の発展は比較的に遅かった。また、中南米では密林や山岳の地域が多く、そうした環境では長大な射程距離を持つ弓矢はそこまで有効な武器ではなく、そうした射程を伸ばすための改良も不要で、そもそも弓矢自体がかなり後の時代(トルテカ文明の前後)になってようやく広まった。そのために飛び道具を強化しようとすると鏃に毒を塗る、弓矢以外にも投擲武器や吹き矢などを使用するなどといった工夫が必要になった。生贄用の捕虜を得るために戦争をすることも多くあったアステカとその近隣の国では尚更そうであった。
アトラトラもそうした飛び道具の一つであり、投げ槍ないし投げ矢が引っ掛かりやすいように突起、若しくは窪みが付いた棒状の器具であり、より力が入るように指を引っ掛ける輪がついた構造の物もあった。中央アメリカの中でも密林の多いマヤ地域には元々存在しなかった物だが、テオティワカンの勢力の拡大によってマヤ地域にも持ち込まれた。これを使用すると女子供でも何十メートルも先の標的に正確に投擲することができたという。また、投擲する槍は葦でできていて矢羽が付いており、鏃には黒曜石や骨片、銅が使用されさらには毒が塗ってあったという。貴族や豹の戦士など身分の高い者であれば貝や宝石などで象眼を施した上等のアトラトルを用いた。
アステカ神話の金星の神トラウィスカルパンテクートリが太陽神(トナティウ)に向かって槍を投げた際も、また太陽神がこれを投げ返した際もこれを使用したと言う。また、絵画や石造などにもその他の神々や王、戦士もこれを持った形で表現されることが度々あった。
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