アルケン
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アルケン (alkene) は化学式 CnH2n で表される化合物で、不飽和炭化水素の一種。エチレン系炭化水素、オレフィン系炭化水素とも呼ばれる。n は2以上で、C−C 間の結合の中に二重結合を1つ持つ。n = 2 の場合がエチレン (H2C=CH2) である。C=C 二重結合は π 結合1つと σ 結合1つから成り立っており、このうち π 結合の結合エネルギーは C−H 結合よりも小さいので付加反応が起こりやすい。例えばエチレンと塩素の混合物に熱を与えると 1,2-ジクロロエタンが生成したりする。
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[編集] 生成
- アルカンのクラッキング。
- アルコールを160–170℃で分子内脱水して得られる。アルコールの分子内脱水はザイツェフ則に従う。
- ハロゲン化アルキルに強塩基を加えてハロゲン化水素の脱離反応によって得られる。
- アルケンは二重結合が末端にあるか、C=C 二重結合の炭素についている置換基が3つ以上同じでない場合 E 型(トランス型)と Z 型(シス型)の幾何異性体を持つ。これらを選択的に合成するにはアルキンを用いると便利である。リンドラー触媒を用いてアルキンを還元すると Z 型のアルケンが、バーチ還元の条件でアルカリ金属を作用させると E 型のアルケンが得られる。
[編集] 反応
- チーグラー・ナッタ触媒を使った付加重合反応によるポリアルケン(ポリエチレンやポリプロピレン)の生成。
- 過酸、過酸化水素を用いて酸化するとエポキシドが生成。
- 酸触媒下などで水分子を付加させることによるアルコールの生成(マルコフニコフ則を参照のこと)。
- ヒドロホウ素化を施した後の酸化による反マルコフニコフ型のアルコール生成。
- 臭素などを付加させた後に、水酸化カリウムなどによる二段階の脱ハロゲン化水素を経てアルキンへと変換される。
- カルベンの付加、あるいはシモンズ・スミス反応によるシクロプロパン環の生成。
[編集] アルケン類の命名
[編集] IUPAC命名法
IUPAC命名法によるアルケン類の名称は、元になるアルカン (alkane) の語尾 ane を ene に変化させるだけの単純なものである。例えば CH3−CH3 はアルカン、エタン (ethane) なので、アルケン CH2=CH2 はエテン (ethene) となる。
二重結合の位置の異なる異性体を持つ、結合している原子数の多いアルケンについての命名法は以下の規則に従う。
- 二重結合を含む最も長い炭素鎖について、二重結合の炭素が最も小さくなるように番号をつける。
- 二重結合の位置を、2つの炭素のうち小さいほうの番号で示す。
- 枝分かれや置換基を持つアルケンはアルカンと同様の方法で命名する。
- 炭素鎖の番号に従った置換基の位置と名前、および二重結合の位置を決め、主鎖を命名する。
CH3CH2CH2CH2CH=CH2 |
CH3 |
CH3 CH2CH3 |
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[編集] 慣用名
アルケンはIUPAC命名法による名称とは別に慣用名を持つことがある。以下に例を示す。
CH2=CH2 | CH3CH=CH2 | CH3C(CH3)=CH2 | |
IUPAC名: | エテン | プロペン | 2-メチルプロペン |
慣用名: | エチレン | プロピレン | イソブチレン |
[編集] おもなアルケン
[編集] 関連項目
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アルコール - アルデヒド - アルカン - アルケン - アルキン - アミド - アミン - アゾ化合物 - ベンゼン - カルボン酸 - シアネート - ジスルフィド - エステル - エーテル - ハロゲン化アルキル - イミン - イソニトリル - ケトン - ニトリル - ニトロ化合物 - ニトロソ化合物 - ペルオキシド - リン酸 - ピリジン - スルホン - スルホン酸 - スルホキシド - チオエステル - スルフィド - チオール |