アダルトアニメ
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『アダルトアニメ』(あだるとあにめ)とは、成人を対象とした、性的な表現を含むアニメーションのことである。18歳未満視聴禁止の作品については「18禁アニメ」という呼称も用いられる。
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[編集] 概要
[編集] 創成期
日本初と言われる成人を対象としたポルノアニメは、浮世絵の技法が用いられた白黒作品『すヾみ舟』である。製作当時の1932年の社会情勢では当然ながら正規の配給網では公開されず、非合法として検挙された。作者については、木村白山という人物による個人制作と伝えられ、題名についても『隅田川』『川開き』『花火』『マンガ』の別名がある。
1969年から1973年にかけて、手塚治虫の虫プロダクションが日本ヘラルド映画から持ちかけられて、大人向けのエロティックな描写をふんだんに用いた『千夜一夜物語』『クレオパトラ』『哀しみのベラドンナ』の3本から成る「アニメラマ3部作」と称したアニメ映画を製作した。特に最初の作品の『千夜一夜物語』は大ヒットとなり、これに便乗した小プロダクションによるポルノアニメが2本制作される影響を生み出している。
その2本とは、レオ・プロダクションの『マル秘劇画・浮世絵千一夜』(1969年)と東京テレビ動画の『DO IT!ヤスジのポルノラマ・やっちまえ!!』(1971年)。前者は東映系の全国53館の劇場で上映されたが、映倫の審査を通過していたにもかかわらず、警視庁からは猥褻な場面を削除するよう警告を受けた。後者は日本ヘラルド映画系で公開されたが、こちらは全く客が入らなかったことから1週間で打ち切られるなど、この2本の便乗作の内容に対する評価は芳しいものではなかった。
[編集] 量産期
1980年代半ば以降になると、アダルトビデオの延長線上として、アダルトアニメはビデオテープにより量産されるようになる。OVAによる初のアダルトアニメは、1984年2月にワンダーキッズが制作した中島史雄原作の『雪の紅化粧 〜少女薔薇刑〜』であるが、これは当時既に時代遅れだった劇画調の絵柄で、大ヒットとはならなかった。なお、同作品の制作は1979年に完了済みであり、発売時期を模索した結果、1984年となった。
その後、同じくワンダーキッズによる『仔猫ちゃんのいる店』が発売された。こちらはデフォルメの効いた可愛らしい絵柄で、アニメファン層にも受け入れられた。この頃から新興のビデオメーカーが独自レーベルと共に作品を制作し販売するスタイルが次第に確立され始めるが、タイトル毎のヒットというレベルには至らなかった。
[編集] ブレイク期
1984年8月にはフェアリーダストから『くりいむレモン』シリーズがリリースされ、大ブームとなる(歴史的にはこれが先駆けと言われている)。特に、Vol.1『媚・妹・Baby』のヒロイン・亜美は、レコード発売やラジオ番組の放送などのメディアミックス展開を広げ、一種のカリスマの様相を呈した。
『媚・妹・Baby』は発表当初、ビデ倫の審査を通過後に修正を加えた物と修正前の物が製品として混在するに至った。また、Vol.3『SF・超次元伝説ラル』は、人間ではなく架空の生物の触手が相手であることから無修正のままビデ倫審査を通過し、その当時の審査が有効なビデオとLDについては無修正での発売が続けられた[1]。また、人気となった『くりいむレモン』シリーズの作品群は、富士見美少女文庫によってノベライズ化が手掛けられることになる。これが後のジュブナイルポルノの嚆矢となったとされる。
[編集] 成熟期
その後、『超神伝説うろつき童子』などの前田俊夫原作の劇画調作品、及びそれを模した作品などの淫獣物や妖獣物がブームとなる。これは男性器に似た想像上の獣の触手が、女性キャラクターと絡むというもの。規制を逆手に取った作品だが、男性キャラクターを邪魔に思う視聴者との需給が一致し、高セールスを記録する。しかし近年では、女性器が描かれていない場面で触手そのものにも規制が掛かるケースが出ており、その存在意義が無くなってきている。
また、成人向け漫画を原作とした作品の売れ行きが良かったことから、それらの作品が増加した。更にはその流れから、アダルトゲームを原作とした作品も登場し、人気を博した。
[編集] 近年の動向
アニメ業界でも中堅と目されるテレビアニメを多数手がけてきた制作プロダクションでも、経営安定化のための一策として、別クレジットでアダルトアニメの制作を行っている所が一部に見られる。このため作品数の増加も見られており、ヒットしたアダルトゲームについてはアダルトアニメ化を巡る競合が激しくなっている。
その一方で、ライトノベル・コミックや、いわゆるメディアミックスに関連する各業界の体質的な変化[2]などが背景にあるが、UHFアニメやプレイステーション2などのコンシューマゲーム機への展開も積極的に行われるようになった。これらのことから、収益の期待値がより高い全年齢向けコンテンツへの展開を目論んで、アダルトゲームメーカーがアダルトアニメ化そのものを拒否するなど、人気アダルトゲーム原作のアダルトアニメ化が難しくなっている状況が見られている。
[編集] その他
[編集] アダルトゲーム原作
1980年代以降は成人向け漫画を原作とした作品とオリジナル作品が中心となっていたが、1990年代後半以降はアダルトゲームを原作としたものが増え、漫画・ジュブナイルポルノ原作のものは減少し、一時はほとんど見られなくなった。そのきっかけとなったのは、ピンクパイナップルの『同級生』(原作:エルフ)である。ゲームが既に先行発売されていたため、市場動向が予めある程度把握でき、作品知名度もリリース時点で既にあったということが原因と思われる。
また、ハード路線や凌辱ものを例外とすれば、アダルトゲーム原作作品については視聴層からも「内容がソフト過ぎる」「セックスシーンが少なすぎる」という不満が目立つ状況が見られている。このため、著作権使用料がゲームと比較して安価で、よりハードな展開が多いジュブナイルポルノを原作としたアダルトアニメが制作されることが、わずかながらも近年再び見られるようになってきている。
なお、2006年にはひまじんの『そらのいろ、みずのいろ 上巻 ダメ……聞こえちゃう♥』(原作:Ciel)が、原作よりセックスシーンに特化させた内容と人気アニメーターの起用が功を奏し、近年のアダルトアニメ売上本数には珍しい累計1万本超を記録するなど、アダルトゲーム原作作品が低迷しているわけではないことを証明している。
[編集] 日本国外向けの作品
最近では、『A KITE』、『MEZZO FORTE』などのような北米を初めとする日本国外での販売を前提とした作品が増加しており、二ヶ国語処理を施した作品も存在する。一般的なアダルトビデオと大きく異なる点がこれで、日本で販売されている作品がそのまま日本国外の市場で正規流通として販売されており、性器や性交の描写に規制がない国においては、緻密に描き込んだ性器にモザイク処理を掛けないまま販売されている作品が存在する。
しかし、性器の描写は細かく手間がかかる上、規制のない国とある国とで別々に作品管理をしなければならず、メーカー側にコストアップなどの負担が掛かることになる。このため、露骨な性器の描写が少なくて済むような構図や、表現を考えることが重要になっている。
[編集] 審査
日本ビデオ倫理協会(ビデ倫)による、アダルトビデオと同様の審査を受審し、同協会の基準に従って表現を自主規制している作品が多いが、メーカーによってはコンテンツ・ソフト協同組合(旧・メディア倫理協会、メディ倫)による審査を受審している作品や、自主規制組織による審査を受けていない作品も存在する。なお、2005年現在、暴力などの反社会的なシーンの描写によって成人指定とされた作品は存在しない。
ちなみに、2006年4月より経済産業省の指導でCESA、コンピュータソフトウェア倫理機構、日本アミューズメントマシン工業協会、映倫管理委員会、日本ビデオ倫理協会と映像コンテンツ倫理連絡会議(仮称)において審査基準・表示の一本化を協議することが決定している。それに伴い、暴力などの反社会的なシーンのアニメも成人指定の可能性がある。
[編集] 国外サイト
国内では描写の規制が厳しく、描写したい画像や動画が海外サーバーにアップロードされるケースも多い。ただし、国内より海外のサーバーにアップロードするのは違法で、海外現地より更新する場合は国内の法律は適用されない。
[編集] 主な作品
[編集] 1980年代
- 宇宙企画
- オールプロダクツ
- リトルマーメイドシリーズ ステージ1:裸足の放課後
- リトルマーメイドシリーズ ステージ2:テレパシスト愛Q315(サイコ)
- リトルマーメイドシリーズ ステージ3:PUNKY FUNKY BABY
- リトルマーメイドシリーズ ステージ4:シャイNing・メイ
- オレンジビデオハウス
- ドリームハンター麗夢
- 直子のトロピックエンジェル 〜漂流〜
- 青い体験
- ザ・サティスファクション - 原作はあがた有為。
- 青い体験2
- 堕天使たちの狂宴 - 原作はダーティ松本。
- ジャパンホームビデオ(JHV)
- 正和(SHOWA)
- フルーツバージョン お姉ちゃんとわたし
- フルーツバージョン2 お兄ちゃんとわたし
- にっかつビデオ(にっかつビデオフィルムズ)
- 内山亜紀のおビョーキ亜紀ちゃん
- 内山亜紀のミルクのみ人形
- 内山亜紀のおもらしゴッゴ
- ファイブスター
- スケ番商会キューティレモンPart1 ヴァージンロード
- スケ番商会キューティレモンPart2 グラデュエイション
- スケ番商会キューティレモンPart3 ラストセレナーデ
- フェアリーダスト(創映新社)
- くりいむレモンシリーズ
- 白夜書房
- 富士ビデオ映像
- ペロペロキャンデー
- ワンダーキッズ
- ロリータアニメI:雪の紅化粧 〜少女薔薇刑〜 - 日本初のアダルトアニメ。
- ロリータアニメII:何日子の死んでもいい 〜いけにえの祭壇〜
- ロリータアニメIII:仔猫ちゃんのいる店
- ロリータアニメIV:変奏曲
- ロリータアニメV:サーフドリーミング
- ロリータアニメ総集版:シーサイドエンジェル MIU
[編集] 1990年代
- 宇宙企画
- リヨン伝説フレア2 禁断の惑星
- 新リヨン伝説 漆黒の魔神
- 新リヨン伝説 もう一人のフレア
- グリーンバニー(ビームエンターテイメント)
- A KITE
- 御先祖賛江
- Natural
- ミッドナイトパンサー
- J.A.V.N
- 大映映像(dez)
- 妖獣教室
- 淫獣学園 La☆BlueGirl
- 聖獣伝 ツインドールズ
- 淫獣聖戦 ツインエンジェル
- 淫獣聖戦XX
- ピンクパイナップル
- リイド社
- クール・ディバイシスシリーズ
[編集] 2000年代
- ANIMAC
- グリーンバニー
- ソフト・オン・デマンド
- こわれもの
- 痴漢十人隊
- ディスカバリー
- ナチュラルハイ
- バニラ
- めいKing
- エンジェルブレイド
- ひまじん(2006年まで。2007年以降はエイ・ワン・シー傘下の各レーベルが業務を継続)
- 戦乙女ヴァルキリー
- Blueシリーズ
- そらのいろ、みずのいろ
- ピンクパイナップル
- 顔のない月 -No Surface Moon THE ANIMATION-
- 愛姉妹 二人の果実
- 鬼作
- 制服処女
- 新体操(仮)
- 新・脅迫2
- 超昂天使エスカレイヤー
- ファイブウェイズ(倒産)
- 緋色の刻
- こどもの時間
- ミルキー
- れもんは〜と
[編集] 現存する代表的なレーベル
- ピンクパイナップル
- バニラ
- ディスカバリー
- ミルキーレーベル
- アムモ
- れもんは〜と
- エイ・ワン・シー
- 鈴木みら乃
- 2匹目のどぜう
- JAPAN ANIME(海外版販売のレーベル)
- Kitty(海外版販売のレーベル)
[編集] 関連項目
- 成人向け漫画
- アダルトゲーム(性的描写等規制)
- 成人向けゲーム(暴力描写等規制)
- レイティング
- 日本における性的描写を含むゲームの規制に関する議論
- アダルトゲームのメディアミックス展開
[編集] 参考資料
- 山口且訓、渡辺泰『日本アニメーション映画史』1977年、有文社