アダルトゲームのメディアミックス展開
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本記事では性的表現があるために成人向けに販売されているコンピュータゲームソフト、すなわちアダルトゲーム(和製英語:Adult game)の、メディアミックス展開に関する部分を解説する。
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[編集] OVA・テレビアニメ等映像作品
[編集] 概略
アダルトゲームのアニメ化は現在積極的に行われている。
アダルトゲームのアニメ化は1990年代はじめから細々と行われていたが、アニメ化作品でヒット作と言えるだけのセールスを記録した最初の作品は1994年の『同級生 夏の終わりに』(ピンクパイナップル)であった。この頃は家庭用ゲームへの移植がはじめアダルト色を何とか残しつつ行われたのと同様、R指定(15禁)ないし18禁のアダルトアニメで、レンタルビデオ店用のアダルトビデオの一種として製作され、後にOVAとして販売されていた。この流れが変わり始めたのは『エルフ版 下級生 ~あなただけを見つめて…~』(1997年 ピンクパイナップル)で、性的描写のあるR指定と、存在しない全年齢版の2系統が製作された。その後、1996年にアダルトOVAとして製作された『同級生2』(ピンクパイナップル)が、1998年に性的描写の全カット・話数追加をして再編集の上、初めて地上波のテレビアニメとして放映された。
初めから全年齢向けアニメとして企画された端緒は1999年に放送された『To Heart』であるが、これはプレイステーション移植版の美少女ゲーム化された側を直接の原作と位置づけている。以降美少女ゲームとしてコンシューマ機にも移植可能、あるいは移植されたストーリー重視型や、アダルト描写を除けばギャルゲーとして成立するタイプの作品がテレビアニメ化されている。多くはローカル局(独立UHF局など)で放映されるUHFアニメで、これについてはUHFアニメの項を参照されたい。ローカル局以外ではWOWOWや、TBSのデジタル衛星放送BS-iがこの種のアニメの放映に比較的寛容である。例外的に在京キー局で放送された作品としては『Kanon』(2002年 東映アニメーション)がある。
2005年1月からボーイズラブ系(女性向け)のアダルトゲームからアニメ化された作品としては最初のものとなる、『好きなものは好きだからしょうがない!!』(プラチナれーべる 2000)がUHFアニメとして放映され、これに追随する形でアニメ化された、あるいは企画中のボーイズラブ系原作の作品が見られている。
この様にアダルトゲーム原作作品を非アダルト作品にアレンジしてのテレビアニメ化が多数進められる様になった背景としては、コンシューマーゲーム機へ移植される作品が増加する中、アニメ化の素材としてこれらの作品に着目したアニメ製作会社と、大作化傾向などに端を発する開発費の上昇に際限が見えない中、経営を安定させる為の収益チャンスや自社作品のPR機会の拡大を模索していたゲーム制作会社の利害が一致したというところが大きな要因として挙げられる。また、アニメ制作プロダクションの乱立とすら言える増加と、それに伴うコミックやライトノベルの人気作品のアニメ化の権利を巡る競合の激化、それ以外にも近年のコミック・ライトノベル業界全体の体質的な変化で、低予算アニメ化には適さない難解な作品にヒット作が偏っている現状や、自社企画によるオリジナルアニメ作品全般の不振などといった要素により、アニメ業界にとっては低予算アニメ作品に適したコンテンツの不足が常態化しているという一面も見逃すことはできない。その様な事もあり、最近では人気原画家が関わる作品などでは、ゲーム発売予定日の数ヶ月前という販売見通しも定かではない段階から、アニメ化企画案がゲームメーカー側に持ち込まれるケースも珍しくなくなっている。また、最近ではアダルトアニメよりも宣伝効果と収益性の期待値がより高いテレビアニメ化を期待して、アダルトアニメ化の企画が持ち込まれても拒否したり留保する姿勢を取るゲームメーカーも珍しくない。
なお、メーカーにもよるが、ゲームソフト開発資金の調達の為に、関連グッズや各種メディアミックス展開の諸権利を、資金を供給するゲームソフト卸の企業などへ、開発の初期段階から譲渡しているものも珍しくない。その為、開発者自身の意志のおよそ及ばぬ場所でアニメなどのマルチメディア展開が決定され、行われているケースも少なくないのは、コンシューマゲーム機への移植展開と同様である。
一方凌辱物など性的描写メインで、家庭用ゲーム機移植やテレビアニメ化が望めない作品についても、OVAのアダルトアニメによるメディア展開は現在でも根強く行われ、レンタルビデオ向けなど中心に一定規模の市場が構築されている。また、メディアミックスに対して消極的な姿勢を取っていた保守派ブランドの筆頭格ともいえるアリスソフトも、2002年頃より自社作品のOVA化を許諾する姿勢を見せている。
[編集] テレビアニメ化作品の品質を巡る問題
アダルトゲーム原作のテレビアニメには、様々な問題が指摘されている。
これについては、特に語る事はないだろう。アダルトゲーム発のアニメに限った問題ではなく、アニメ全体で起こっているからである。
- 設定とストーリーの変更
当然だが、ゲームとは表現の形式が全く違うため、随所変更される事が多々ある。 これに批判が出るという理由には、原作そのままのものを求めているファンの低レベルさという理由もないではないが、ほとんどの部分が「これもアリだな」と視聴者を納得させられなかった、作り手の力量の問題である。
[編集] OVA・テレビアニメ以外の映像作品
2002年に『Piaキャロットへようこそ!!3』(2001年 F&C FC02)、2005年に『AIR』(2000年 key)劇場アニメとして上映された。こちらは共にアダルトゲームを直接の原作にしながらも性的描写はカットされている。
正反対に『夜勤病棟』(1999年 ミンク)は実写のアダルトビデオ化されている(この他アダルトOVAも存在する)。
しかしながらコストや収益性、メディアミックス効果の実効性などで課題があり、どちらもメディアミックス展開としてはごく少数の例外といえる。
[編集] 漫画・小説等書籍
アダルトゲームを原作にしたノベライズ作品は多数刊行されている。大半はジュブナイルポルノと呼ばれるジャンルに属する官能小説で、多くは新書判で刊行されている。その一方で、一部ではあるが性的要素を排除するなど大幅なアレンジを加えたノベライズもあり、こちらはライトノベルのレーベルから刊行されている。ジュブナイルポルノの場合、ゲームのシナリオライターと原画担当者がそのまま本文と挿絵を担当する場合が多い。対照的にライトノベルの場合、本文ではかなりの割合で、挿絵についてもある程度の割合で、出版社と繋がりのある別の若手作家が起用される。その為、ライトノベル化作品では雰囲気が大きく変わる事も珍しくない。
コミカライズも一部に見られるが、これについてはテレビアニメとのタイアップであったり、あるいはテレビアニメ化への動向調査を兼ねるなど、大半が何らかの別のメディアミックス企画やその構想に深く関連しており、性的要素を排除した形で雑誌掲載、単行本化されている。この場合、大半のケースでコミカライズ担当の漫画家が起用され、原作ゲームの原画担当者自身が漫画を作画することはあまり見られない。その為、ライトノベル化と同様、コミカライズで作品の雰囲気が大きく変わる事は別段珍しいものではなく、原作の原画担当者の人気がカリスマ化している場合などに、原作ファンの間で物議を醸す事もよく見られる。
ただし、ゲームメーカーの意向として、ノベライズやコミカライズの担当者に裁量を大きく与えたり、ゲーム側を『正伝』、出版作品側を『外伝』などと位置づけて、意図的に雰囲気を変えさせているケースも存在するため、作品の雰囲気が変わる原因については、一概にノベライズ・コミカライズ担当者の技量不足とばかり決めつける事はできない。
[編集] その他のメディアミックス
チャンピオンソフト(アリスソフト)、ビジュアルアーツ、アクアプラス(リーフ)、ノーツ (TYPE-MOON)、葉月(オーガスト)、オメガビジョン(Navel)、デジターボ(ニトロプラス)(※括弧内は各ブランド名)が合同企画としてTCG・リセ(lycee)を立ち上げたように、映像媒体以外にもメディアミックスは広がりを見せている。
また、東証1部上場企業であるドワンゴが、2005年7月から放送された着メロ配信サイト「いろメロミックス」のテレビコマーシャルのBGMに、『巫女みこナース』(2003年、PSYCHO)主題歌の『巫女みこナース・愛のテーマ』が採用された。更に、同曲は2005年12月27日に第一興商の通信カラオケ「cyber DAM」で配信されている。