PSX
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
PSX(ピーエスエックス)はソニー(プレイステーションを展開する子会社のソニー・コンピュータエンタテインメントではない)が販売していたハードディスク搭載DVDレコーダーである。
目次 |
[編集] 概要
ソニーはPSXをハードディスクが搭載されたDVDレコーダーとしているが、基本的な部品はプレイステーション2で使われているものを流用しているため、DVDレコーダーとしての機能だけではなく、プレイステーション及びプレイステーション2の規格のソフトもプレイできる。また、イーサネットポートが搭載され、ハードディスクの容量は250GBのモデルと160GBのモデルがあり、どちらのモデルも40GBをゲーム側に割り当てることによりPlayStation BB Unitと同等の機能を持たせることもできる(ただし、DESR-5500・7500モデル以降PlayStation BB Navigator非対応となった)。
また、メニューを十字のように表示して選択するインタフェースであるクロスメディアバー(XMB)を初めて導入し、後にソニーの携帯電話やテレビなどにも採用されている。
プレイステーション2と比較すると、コントローラポートは背面にあるため、コントローラは4メートルほどのケーブルが付いた専用のものを使う必要があること、USBポートが1つしかない、メモリースティック用スロットがある、メモリーカード差込口の形状から来る物理的な制限のため、ポケットステーションに非対応などの相違がある。
[編集] 仕様
- CPUおよび描画プロセッサー:90nm Emotion Engine + Graphics Synthesizer
- 記録可能メディア:HDD、DVD-R、DVD-RW、DVD+R、DVD+RW
- 再生可能メディア:DVD-VIDEO、DVD-R、DVD-RW、DVD+R、DVD+RW、音楽CD、CD-R、メモリースティック、PlayStation規格CD-ROM、PlayStation 2規格CD-ROM/DVD-ROM
- 高画質・高音質化回路:
- 3次元Y/C分離
- ビデオD/Aコンバーター(12ビット 108MHz)
- ゴーストリダクションチューナー
- オーディオD/Aコンバーター
- 入出力端子:
- D端子出力(D1/D2)×1
- コンポジット映像/S映像(S1)/ステレオ音声 出力端子×1、
- コンポジット映像/S映像/ステレオ音声 入力端子×1、
- 光デジタル音声出力(S/PDIF)×1
- 100BASE-TX ×1
- USB(Ver. 1.1)端子×1
- メモリースティック挿入口×1
- PlayStation, PlayStation 2用メモリーカード差込口×2
- コントローラ端子×2
- 大きさ:312×88×323mm(幅×高さ×奥行)
[編集] その他
DESR-5000・DESR-7000の発売直前に、検証が出来ていない機能を実装しない状態で販売されるとアナウンスされた。その後のファームウェアアップデートでその機能が実装されることになったものの、PSXのイメージダウンへ繋がった。
当初、PSXの本体カラーは5色とする予定であったが、同社が発売したスゴ録に人気が集まってしまい、結局本体カラーはホワイトとシルバー(DESR-5100のみ)だけとなった。ソニーはスゴ録よりもPSXに力を入れていたものの、スゴ録が爆発的にヒットしスゴ録が主流となった。スゴ録ヒット後に出されたPSXもその影響を受け、初期のスゴ録とほぼ同等の機能が追加された。PSXとスゴ録は同時に開発チームが組まれ、スゴ録の開発チームはごく少人数であり、逆にPSXの開発チームは久夛良木健指揮の大人数プロジェクトだった。
2004年9月ごろにDESR-5100の価格が、当時のHDD・DVDレコーダーでは珍しい4万円台にまで下がったことがネット掲示板などで話題となり、その頃から飛ぶように売れた。発売から半年後に家電量販店などではDVDレコーダーの月間売上1位を獲得し、HDD・DVDレコーダーの普及に役立ったと言われる。
しかしその後売り上げは急速に失速した。スゴ録や他社のHDD・DVDレコーダーが出回り、価格も下がったことでPSXが一般的な層には全くヒットしなかったことが大きな要因である。ソニー商法とも呼ばれる出荷調整による人工的な品薄作戦もそれに追い討ちをかけた。初期に購入した「PSXを」というマニア層ではなく「HDD・DVDレコーダーを」買いに来る一般的な層は、ゲーム機能などを重視しないのに加え、ゲーム機能を嫌がる中高年層に対して売り込むことが出来なかったのである。それによる売り上げ急落に伴い店頭からほぼ消滅した。またほぼ半年間隔でニューバージョンを投入するも、ソニー自身がPSXの大きなウリであるアップデートを事実上放棄し、PSX旧機種の新機能追加の補償をしないソニーの対応にPSX旧機種ユーザーの不信感は一気に頂点へ達した。
PSX自体がゲームに向かなかったことも売り上げが伸びなかった要因に挙げられる。PSXを立ち上げた後にゲームソフトを読み込まなくてはならないため、ゲーム起動までの時間が長かったり、ゲームパッドのインターフェイスが背面の出し入れしにくい位置にあるためコントローラーの差し替えがしにくく、実質的にケーブルの延長が必要であったり、ゲーム機として極めて悪いユーザーインターフェイスであることなどがある。
HDD・DVDレコーダーとしては詳細な編集が出来なかったり、入出力端子の少なさなどもあり、高機能とは言えない。しかし、コントローラーを使った操作やそのレスポンスなど現行のレコーダーに勝るとも劣らない長所も持ち合わせている。PSXに用いられているHDDは、Maxtor製(Seagateに統合された)のものであり、分解してPC等に接続しても特殊なフォーマットであるためOS上で認識されない。
2005年2月、PSXのWebページ上で2004年12月に発売されたばかりの新機種の生産完了が告知された。翌3月には、一貫してPSX プロジェクトを推進してきた久夛良木健副社長が解任された。また、PSPとの連係機能は機能を改良して、2005年11月に発売されたスゴ録に搭載された。さらに、PSX開発陣をスゴ録開発陣が吸収しソニーはスゴ録を中心にHDD・DVD(ブルーレイ)レコーダを販売している。
PSX発売時にビックカメラ有楽町店で写真撮影を行っていた日本経済新聞社子会社の日経BPの記者が自らPSXを購入し、「報道」と書かれた腕章が写っているにも関わらずPSXを掲げた写真が撮られ、日本経済新聞の記事に「PSXが発売。PSXを買い求める男性」と、その写真と共にその記事が出てしまった。「報道」と書かれた腕章が写っていることから、日本経済新聞社の自作自演の記事だと非難が集中し、後に日本経済新聞社がこれが記者であることを認め、謝罪した。[1]
[編集] 本体バリエーション
- 「DESR-5000(160GB)」「DESR-7000(250GB)」
- 2003年12月13日に発売された最初のモデル。
- 「DESR-5100(160GB)」「DESR-7100(250GB)」
- 2004年7月1日発売。DESR-5100については、台数限定でシルバーモデルも用意された。ハードウェアの変更はない。またアンテナの分配器が付属するようになった。
- 「DESR-5500(160GB)」「DESR-7500(250GB)」
- 2004年12月10日発売。大幅にソフトウェアとハードウェアが変更された。従来はHDDの容量の違いのみだったが、上位モデルのDESR-7500だけGRT、BSアナログチューナ、DV端子を搭載し、デジタルビデオカメラの映像取込・編集が行える(ただし、GRT、BSアナログチューナは下位機種のDESR-5000・7000・5100・7100にも搭載されている)。また、アンテナ線のスルー出力端子を搭載した。ソフトウェア方面は録画機能に「x-おまかせ・まる録」が追加され、同社のスゴ録などのおまかせ・まる録機能と同様になった。この機種よりPlayStation BB Navigatorに非対応となった。
- 「DESR-5700(160GB)」「DESR-7700(250GB)」
- 2005年4月15日発売。前機種からの違いは、録画した番組をプレイステーションポータブルで再生できるビデオフォーマット(MPEG-4/AACステレオ)に変換できること。
[編集] バージョンアップ履歴
発売当初、動作検証不足などを理由に仕様の変更が行われており、後日、無償アップグレードで正式な仕様に近づいた。DESR-5100とDESR-7100については発売時より「2004年8月3日」の最新の状態になっていた。
[編集] 「DESR-5000」と「DESR-7000」
- 2004年2月10日
-
- HDDからDVDへのダビング速度が最大24倍速に向上
- 音楽フォーマットMP3対応
- 延長録画時の再延長設定が可能
- フラッシュ機能(15秒前後早送り/早戻しできる。)
- 早送り、早戻しの30倍速に対応(このアップデートまで早送り/早戻し機能は2/10/120の3段階で使いにくかった)
- ビデオタイトルソート機能
- タイトル入力時のUSBキーボード対応
- その他、不具合の修正
- 2004年3月31日
- 2004年7月1日
-
- PSXの新機種発売。ハードウェア的には何も変更がないが、GUI関係が一新されている。またそれに伴い、旧機種ユーザー向けに、7月15日より第3回目のアップデートが行われる予定であったが、7月12日に8月3日へ延期されることが発表された。
新機種の発表と、旧機種のアップデートの情報は、6月中旬に行われたが、この数日後から、携帯電話に「PSX「DESR-5100(限定シルバー)」をプレゼント」すると騙ったチェーンメールが流れ、ソニーおよびグループ各社が対応に追われた。
- 2004年8月3日
-
- グラフィカルなDVDタイトルメニューの作成機能
- DVDへの追記ダビング機能
- 録画モード変更機能
- チャプター編集機能
- PlayStationBBに対応(ただし閲覧のみでコンテンツ内の動画、ゲーム等のダウンロードには対応しない)
[編集] 「DESR-5500」と「DESR-7500」
- 2005年5月17日
-
- PSPで再生できるメモリースティックビデオフォーマット(MPEG-4/AACステレオ)の変換機能を加える(ソフトウェアでの変換らしく、録画時間の4~5倍変換に時間がかかり、エンコード中は他の操作ができない。)。
[編集] 外部リンク
- PSXホームページ(日本)