DNAウイルス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
DNAウイルスとは、ゲノムとしてDNAをもつウイルスのこと。
ゲノムDNAから宿主細胞のRNAポリメラーゼを利用してmRNAを合成し、そのmRNAから蛋白質を合成するのがDNAウイルスの増殖経路である。
DNAウイルスはRNAウイルスと異なり、ゲノムの構造に多様性がない。ほとんどが二本鎖DNAウイルスであり、そうでないウイルスは一本鎖-鎖DNAウイルスのパルボウイルス科と不完全二本鎖DNAウイルスのヘパドナウイルス科のみである。DNAの構造はほとんどが環状であり、線状DNAを有するのはパポバウイルス科のみである。なお、一本鎖DNAウイルスゲノムはそのままでは増殖できないため、宿主細胞のDNAポリメラーゼを使い二本鎖の状態を経て増殖する。また、ペパドナウイルスは非常に特異的な増殖様式を取る。部分的に一本鎖があるこのウイルスは宿主細胞内で完全な二本鎖DNAウイルスとなり、mRNAを合成する。そしてDNAの合成はそのmRNAを逆転写することで合成される。
DNAウイルスには増殖の過程で生じたDNA複製のミスを修正する機構が備わっている。そのため、RNAウイルスと比較すると遺伝子の変異が少ない。そのため、長期にわたって同じワクチンが使用可能であり、天然痘をワクチンによって根絶することができたのも天然痘ウイルスがDNAウイルスであったためであるとされる。
[編集] DNAウイルス
- ポックスウイルス科 - 天然痘、サルポックスウイルス
- ヘルペスウイルス科 - 単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス
- アデノウイルス科 - アデノウイルス
- パポバウイルス科 - パピローマウイルス、JCウイルス
- パルボウイルス科 - パルボウイルス
- ヘパドナウイルス科 - B型肝炎ウイルス