ATX電源
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ATX電源(エーティーエックスでんげん、英: ATX Power Supply )は、1995年にインテルがマザーボードの規格、ATXと共に制定したPC/AT互換機用の電源ユニットの規格である。
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[編集] 概要
商用電源(交流100~230V)をもとに、直流12Vなどの複数の電源を作るスイッチング電源方式の電源装置で、ソフトウェア的にON/OFFといった操作ができるようになっている。代表的なオペレーティングシステム (OS) は、この特徴を利用してさまざまな電源の管理ができる。スイッチ(モーメンタリスイッチ)はマザーボードに接続し、PC動作中に押下すると、ログアウトやシャットダウン、スタンバイなどの動作が選択できる(キーボード上に設定することも可能)。ただし、どんな状態においても、4秒以上スイッチを押し続けると強制的に電源が切れるようになっている。なお、旧AT規格の電源とはマザーボード用のピン形状に互換性がなく、またスイッチのON/OFFは手動で行うという点で異なる。電源ユニットのサイズは、ATとほぼ共通の150×140×86ミリと決められている。
主な仕様としては、マザーボード用の20/24ピン(ATX2.2仕様では24ピンとされた)コネクタとCPU用の4ピンコネクタ、ATA、シリアルATAコネクタ、FDD用コネクタなどがユニット外部へ配線されている。ケース内部には、電源平滑化のためのトランジスタや三端子レギュレータなどを冷却する空冷ファンが内蔵され、PCの後部に排出されるようになっている。PCケース内部の熱を排気する役割もあるが、高発熱のCPUやハイスペックのビデオカードを使用した環境ではやや力不足であるため、実質的な排熱はケースに装着されたファンが担当することが多い。
供給される電圧は、マザーボード用20/24ピンコネクタが±12V、±5V、3.3V、CPU用4ピンコネクタが12Vである。ATA用コネクタには12V、5Vが、シリアルATA用には12V、5V、3.3Vが供給される。FDD専用4ピンには12V、5Vとなっている。+5VSBはパワーマネジメント用で、電源のON/OFFやWake On LANなどに使われ、主電源やコンセントを抜かない限りは常に流れている。この電流容量が少ないと、スタンバイ状態から復帰しにくくなるとされる。
[編集] パーツとしてのATX電源
自作パソコン向けに1,000円台から数万円台の幅広い製品が販売されている。PCケースに付属される事も多い。CPUやビデオカードの消費電力が増えたために、400W以上の製品が主流である。電源ケーブルを取り外せるプラグイン式電源も増えつつある。静音パソコンに特化した電源として、ファンを省いて外部に放熱用のヒートシンクを付けたものや、ACアダプタを接続できるものも存在する。
注意する点として、電源の電力供給量が少な過ぎると、システムの動作不安定や故障などを引き起こすことがある。電源そのものの発熱を抑えたい場合も、電源容量に余裕のあるものを購入するほうが望ましい。
各電圧の許容電流値などは、説明書などでなるべく確認した方が賢明である。 廉価なものは、ピーク時の電力を総電力のようにうたったり、電解コンデンサやチョークコイルなどの部品点数を著しく省いた粗悪なものもある。「廉価品は使い捨て」と割り切って、1~2年程度で交換するユーザーもいる。高価なものでも、全てが高品質とは限らないのが実情であるため、自作パソコンユーザーの間では、他の自作パーツと同様に品質の善し悪しについての意見交換が行われている。
また先述の通り、+5VSBはシャットダウン後も常にマザーボードなどに供給され続けているため、拡張カードなどのパーツ交換の際に主電源を切ること(或いはコンセントを抜く)を怠ると、故障の原因となる恐れがあるので注意が必要である。
[編集] SFX電源
SFX電源は、MicroATX規格用の電源規格。ATX電源よりも小型化され、-5Vが省略されている。大きさの都合上、電力はATXよりも小さいもの(100~400W前後)が多い。 概ね、同程度の品質のATX電源よりは価格は高めである。製品によっては、ATX電源互換のマウンタが付属しているものもある。
[編集] サイズ
- SFX(A) 幅100×奥行き125×高さ50mm
- SFX(B) 幅100×奥行き125×高さ63.5mm
- SFX(C) 幅125×奥行き100×高さ63.5mm
- SFX(D) 幅100×奥行き125×高さ63.5mm
※SFX(B)とSFX(C)はファンの厚みが17.1mmとなっており、空冷ファンが下部に出っ張っているかたちとなっている。