35mmフルサイズ
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35mmフルサイズは、デジタルカメラの固体撮像素子のサイズ規格の通称。そのサイズが135フィルム(35mmフィルム)を使用するカメラで広く用いられる24mm×36mmの画面サイズに近いことから名付けられた。なお、このサイズはサウンドトラックがない時代の35mm映画フィルムの2コマ分に相当する。ライカに採用され全世界に広まった事から、このサイズの画面フォーマットをライカ判と呼ぶ事がある。また、ニコンではFXフォーマットという名称を使用している。
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[編集] 撮像素子のサイズ
2006年現在、コストや技術的な問題から、ごく一部のデジタル一眼レフに採用されるにとどまっており、レンズ交換式のデジタル一眼レフカメラやレンジファインダーカメラでは、面積比が40%前後となるAPS-Cサイズの撮像素子が主流であり、コンパクトデジタルカメラでにおいては対角線長で12mm未満となり、対角線長43mmの35mmフルサイズと比較すると面積比が5%前後という極めて小さな撮像素子が使われている。
[編集] 製造コストと歩留まり
半導体素子は、その面積が大きくなると歩留まりが悪くなるため、35mmフルサイズのような大きな撮像素子はAPS-Cサイズのものに比べ比較的高価である。2008年5月現在(他の価格表示も同様)、35mmフルサイズの撮像素子を使用したデジタル一眼レフカメラ現行製品の最も実勢価格が安いものはキヤノンEOS 5Dである。このカメラはおおよそ20万円前後で販売されている。カメラとしての機能上の差異やメーカーの販売戦略の影響もあるため単純な比較は出来ないが、APS-Cサイズの撮像素子を搭載したキヤノンEOS 40Dが10万円前後、ニコンD300が15万円前後で販売されている。
[編集] 35mmフルサイズのメリット
一般的な35mmフィルムを使用するカメラと、撮像面のサイズがほとんど同じである事から、同じ焦点距離のレンズを使用した場合の画角やボケ方がほとんど同一となるという特徴がある。ライカ判を採用する35mmフィルムカメラがあまりにも一般に普及したため、一眼レフやレンジファインダーカメラのレンズ交換システムは、ライカ判のカメラで採用されたものが引き続きデジタルカメラでも使用される事が多い。また、画角やボケ方などを焦点距離と直接関連付けて記憶している写真愛好家もおおい。このような背景から、旧来35mmフィルムを使用するカメラを使ってきた層を中心に、35mmフルサイズの撮像素子を持つカメラこそ最も使い易いカメラであり、フィルムカメラ時代のレンズの描写特性を生かすためには35mmフルサイズの撮像素子を使う必要があると主張されることがあった。
また、サイズが大きいことから画素数が同等の場合1画素あたりの受光面積がAPS-Cサイズ比で2.2倍と大きくなり、感度や低ノイズ性能面で有利とされる。
[編集] 35mmフルサイズのデメリット
反面、イメージセンサーの製造コストが高く、カメラ本体の高価格化に直結する。また、撮像素子の構造に起因するデジタルカメラ特有の周辺減光が、このサイズではより強く出るため、テレセントリック性が高いレンズ設計が必要であるとされる。イメージサークルが相対的に大きいこともあり、所要の性能を持つレンズは同じ焦点距離であってもAPS-C向けと比べて大きく高価格にならざるを得ない。それゆえカメラ本体だけでなく、システム全体が大型で高価格になりがちである。
[編集] 従来レンズの流用可否
レンズにおいては、従来のフィルム一眼レフと同等の画角、焦点距離での撮影が可能である反面、フラットで反射率の高い赤外線吸収フィルタや、ローパスフィルタ、センサからの内面反射によるフレアを引き起こしやすい。このフレアは、銀塩フィルムにおけるフレアとは異なり、本来の焦点域における被写体の輪郭がハッキリしなくなるという現象となり、殆どの場合、自動焦点方式の合焦性能の問題と見間違うことが多い。そのため、クリアな写真を撮影するためには内面反射を考慮したコーティングを施したレンズが必要となり、APS-Cサイズ同様あるいはそれ以上の追加投資が必要になってしまう。
また、旧来の銀塩向けフィルムは射出瞳位置がまちまちで、撮像素子にセットされたマイクロレンズが規定する位置にあるとは限らない。このため多くのレンズで周辺減光が発生する。
以上より、フィルム一眼レフユーザにとっては、従来のレンズをそのまま使えるという理由でフルサイズセンサを要望しているものの、実際には期待通りの結果を得られるとは限らない。フイルムからデジタルへの移行を考えた場合、撮像素子のサイズよりも他要素の影響が大きいため、クリアかつシャープな描写を望む分には、フルサイズにこだわる意味は薄いと言える。
[編集] 展開
従来はセンサ製造のコストが高く、定価60 - 100万円ほどの価格でプロ向けの製品にのみ採用されたが、ステッパーの改良により露光回数を2回に減らしたり、水晶のローパスフィルタを採用するなど、センサー周辺の製造コストを大幅に削減し、40万円以下のハイアマチュア向け製品を発売できるまでになっている。現実にはAPS-Hサイズまで一回で露光できるステッパーを保有するキヤノンとコダックのみがフルサイズの製造コストを下げることが可能で、製品市場も両社での寡占状態となっている。逆に他社製のステッパーでは、35mmフルサイズの製造に3回以上の露光が必要となる。よって、35mmフルサイズを実現するには、APS-Hのパイを持たないことには始まらないということであり、この2社からの供給を受けない限り、他社から35mmフルサイズが出てくる可能性は低いと考えられていた。
そうした中、2007年8月23日にニコンが、自社開発した35mmフルサイズCMOSイメージセンサーを搭載したフラグシップ機「D3」を発売すると発表し、2007年11月30日に発売した。
ソニーは2008年1月30日、35mmフルサイズで有効2481万画素と高速読み出し(6.3フレーム/秒 - )を実現したデジタル一眼レフカメラ向けCMOSイメージセンサーの開発に成功したと発表。これにより、ソニーは2008年中に35mmフルサイズのフラッグシップデジタル一眼を発売するとしている。