鴨川シーワールド
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情報 | ||||
正式名称 | ||||
愛称 | シーワールド・鴨シー | |||
前身 | ||||
専門分野 | 総合/サカマタの飼育・海獣全般の繁殖 | |||
事業主体 | 民間 | |||
管理運営 | 株式会社グランビスタ ホテル&リゾート(旧八洲観光→三井観光開発) | |||
開館 | 1970年10月1日 | |||
所在地 | 〒296-0041 千葉県鴨川市東町1464-1 |
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電話 | 04-7093-4803 |
鴨川シーワールド(かもがわしーわーるど,Kamogawa SEA WORLD)は千葉県鴨川市の東条海岸と国道128号に挟まれて所在する大規模な総合海洋レジャーセンター・博物館相当施設である。グランビスタ ホテル&リゾートが運営している。様々な生物の繁殖においても世界的な功績を残し、学術的にも存在価値の極めて高い水族館である。
目次 |
[編集] 概要
1970年10月に八洲観光株式会社によって開業した。イルカやアシカなど海獣の展示飼育に力を入れ、猛獣とされていたシャチを男性が飼育調教し開園初日に日本初のショーを催した事で有名である。シャチ以外の海獣によるパフォーマンス(ショー)レベルもトップクラスである。
シーワールドの開園によって、それまで海水浴程度の観光地だった鴨川に「鴨川グランドタワー」をはじめとするリゾートホテルや旅館・保養施設が建設されるなどして南房総は通年リゾート地に変貌した。また、シーワールド敷地内には直営の「鴨川シーワールドホテル」が1971年に設置されている。
1986年に八洲観光が三井観光開発(旧北炭観光、現グランビスタ)に吸収合併されてからは同社の主要施設となり、1989年にシャチパフォーマンス専用で約2000人収容可能なオーシャンスタジアムの新設、1996年12月に屋内水族館パノリウムをリニューアルしたエコ・エクアローム、1998年春にロッキーワールドとアシカパフォーマンス専用の「ロッキースタジアム(約1000人収容)」の新設、2000年夏に南太平洋の魚類を展示するトロピカルアイランドと海亀の浜の新設と、展示施設を拡大してきた。規模の大きさから通常入場料金が大人2800円と水族館単体としては日本一高いが(八景島シーパラダイスのアクアリゾーツは2700円)、割引券の配布や団体旅行客の取り込みなど積極的に行っている。
イルカの調教師を数多く輩出した伊東水族館(現存せず)出身の鳥羽山照夫(1935 - 2003年)が設立時から逝去するまでの長きに渡り館長・名誉館長・総支配人を務め、イルカ・シャチを肇とする海獣の生育研究や水族館の展示環境改善など運営に関わる功績を残した。水族館全般や、イルカ・シャチについての一般向け著書も多数ある。 愛弟子でシーワールドの飼育員を経て沖縄美ら海水族館の館長となった内田詮三をはじめとする管理職・エキスパートレベルの門下生を全国の水族館へ輩出し、日本での“海獣医師”第一人者となった社員の勝俣悦子による著書やインタビュー等でも鳥羽山の人柄やエピソードについて触れている。
現在も国内の水族館と水産・海洋系大学をはじめ、カリフォルニア州のen:SeaWorld等とも人的交流や学術研究が盛んである。
[編集] 施設
[編集] 水族館
- エコ・アクアローム
- 河川の上流から海に辿り着くまでの「水の一生」をテーマに、川魚や鴨川沿岸の魚などを展示。国内飼育期間更新中のマンボウ展示水槽も併設。
- 海亀の浜
- 東条海岸に沿って設置されている。ウミガメが自然界同様に産卵・孵化し海に帰る課程を人工砂浜と水槽で再現し展示している。
- マリンシアター
- ベルーガパフォーマンス
- トロピカルアイランド
- キリバスのサンゴ環礁をモデルに、南太平洋に生息する魚(熱帯魚など)や鮫を中心に展示している。シーワールドでは唯一の大型水槽「無限の海」が設置されており、ここでウェディングや寝袋を用いた宿泊体験などのイベントが実施される事がある。
- キリバス諸島の雰囲気をテーマにした売店「ラオイ」と食堂「マウリ」が併設されている。
- サーフスタジアム
- イルカパフォーマンス
- ペリカンの池
- トロピカルアイランド周辺まで散歩するパフォーマンスが設定されている。
- オーシャンスタジアム
- シャチパフォーマンス
- 半地下の1階にはセルフサービスの「レストラン オーシャン」が有り、オーシャンスタジアムの水槽とシャチの様子を窓越しに見る事が出来る。
[編集] ロッキーワールド
オーシャンスタジアムから鴨川シーワールドホテルにかけての敷地に展開する。海獣達の生息地を再現した展示環境となっており、地下1階からも水槽の様子が伺えるようになっている(ペンギン・ポーラーアドベンチャーを除く)。開館時間中はウッドデッキ調の橋を通り、シーワールドホテルと往来する事ができる。また、ペンギンの海近くに出口専用のゲートがある。
かつては現在のトロピカルアイランド付近からオーシャンスタジアム前にかけてアシカパフォーマンスと海獣の展示プールが有った。
- ロッキースタジアム
- アシカパフォーマンス
- アシカ・アザラシの海
- モントレー湾を再現しているが、北海道沿岸に生息するゴマフアザラシ・ゼニガタアザラシやオットセイ類、シーワールド生まれのオーストラリアアシカ (Australian Sea Lion) 「サンディ」なども暮らしている。
- セイウチの海
- アラスカ近海を再現している。2007年現在、父親と血の繋がりがあるセイウチ一家として暮らしている。
- トドの海
- 千島列島沿岸地を再現している。展示されている約半数のトドは2007年3月に天寿を全うした「ノサ(雄)」の子供である(最近の子供は近親交配が含まれる)。
- イルカの海
- 奄美諸島近海を再現している。日本での飼育日数更新中(20数年)でかつ人工授精による出産を初めて成し遂げた「スリム(雌)」とその子供などが暮らしている。
- フンボルトペンギンの海
- ポーラーアドベンチャー(地下1階)
- ラッコ・エンペラーペンギン・カスピカイアザラシCaspian Sealなど極地に生息する動物を展示。
[編集] 繁殖
これまでに魚類・ウミガメを肇とする様々な生物の繁殖に成功しているが、海獣の繁殖に関しては世界でも実績が少ない動物で複数成功しており快挙に値する。
2003年は出産の当たり年となり、シャチ・セイウチ・カスピカイアザラシ・トド(2頭)・カリフォウニアアシカ(2頭)・バンドウイルカ(2頭)の合計9頭が誕生した。これを「ベビーラッシュ」と言わんばかりに王様のブランチなど複数の情報番組やニュースで紹介された。
このほか、カリフォルニアアシカについては2年に1~3頭程出産している。過去にはトドもアシカと同じペースで出産していたが2007年に雄の「ノサ」が死亡したため、暫く予定は無い模様である。
[編集] 繁殖賞受賞生物
日本動物園水族館協会 (JAZA) の繁殖賞を受賞した生物は次の通りである。プレートと受賞生物の写真がエコ・エクアローム内に展示されている。
- イバラタツ
- ハマクマノミ
- オーストラリアアシカen:Australian Sea Lion(オーストラリア以外の施設では世界初)
- セイウチ(第一子は既に死亡)
- シャチ
- カスピカイアザラシen:Caspian Seal「カピ」(既に死亡)
- バンドウイルカ(人工授精、世界5例目)
[編集] イルカの人工授精出産
バンドウイルカの人工授精については、1982年から園内で研究を重ね2002年にようやく実施に移る事ができた。同年10月に妊娠を確認し、2003年7月に母スリムが出産して「サニー」と名付けられた。奇しくも鳥羽山の最期までの研究課題であったとされている。2004年にJAZAの古賀賞をシーワールドでは初めて受賞した。その後も別のペアで人工授精による出産に成功している。
[編集] シャチの出産
開園当初からシャチの飼育は行っていたものの、出産にこぎ着けたのは1995年になってからである。マギー(雌)が3月3日に出産したもの逆子のため僅か30分で死亡となり、マギーも1997年10月にストレスの為か死亡してしまった。しかし別のシャチが後に出産したためこの事は現在あまり知られていない。
同じ1997年にステラ(雌)とビンゴ(雄)の間で繁殖が確認され、1998年1月に第一子の出産に成功し「ラビー」と名付けられて繁殖賞を受賞した。この快挙で鴨川シーワールドの知名度が更に上昇し来園者数も堅調に推移したとされている。後に同じペアで2001年に「ララ」、2003年に「サラ」(2006年に死亡)、2006年に「ラン」の計4頭の子シャチ(全て雌)が誕生し、ショーで活躍している。飼育下での繁殖とシャチ一家の展示はシーワールドが日本で唯一である。
シャチの出産はアドベンチャーワールドでも行われたが短命に終わってしまっている。
[編集] セイウチの出産
セイウチは1983年からムック(雌)とタック(雄)が飼育され、1994年に第一子の出産に成功し「チャッキー(雄)」と名付けられ繁殖賞を受賞した。 その後も同じペアで1997年に「キック(雄)」、2000年に「ミック(雌)」、2003年5月に「ロック(雄)」が誕生しており、セイウチ一家として暮らしている。日本で一家が見られるのはシーワールドと後に繁殖に成功したおたる水族館だけである。 チャッキーは1999年に死亡したが、キックは2003年1月に南知多ビーチランドへ転居(婿入り)して「セイウチにタッチ!」などの人気者となっている。その後母親ムックが2003年12月に死亡してしまう。 しかし、タックとその娘ミックのペアで近親交配であるものの2007年5月に雌のセイウチ「ミナ」誕生し、一家の一員となっている。
[編集] ディスカバリーガイダンス
バックヤード等を見学出来るツアーや海獣とのふれ合い体験を有料の「ディスカバリーガイダンス」として、ロッキーワールド開設時より本格的に毎日実施している。当日、園内案内所にて参加券を先着順で購入する。土休日と夏休み期間などのピーク期は人気であるため、2005年頃から開園30分前に整理券を配布し、そこからの先着順で販売するようになった。ファンクラブ組織の「ドルフィンドリームクラブ」会員は料金が優待される(2004年までは無料であった)。予め参加券がセットされた入園券プランや鴨川シーワールドホテルの宿泊プランも設定される時もある。
[編集] ガイドウォーキングツアー
原則1日1回実施する。ゴールデンウィーク等のピーク期には2回以上実施する場合もある。
- 水族館丸ごとウォッチング
- エコ・アクアロームからトロピカルアイランドにかけて見学する。途中立ち寄るマリンシアターのバックヤードでベルーガと触れる事が出来る。
- 魚とのコミュニケーションタイム
- エコ・エクアローム内を見学する。バックヤードから魚へ給餌体験ができる。
[編集] 記念写真
毎回のパフォーマンス終了後にステージ付近で海獣と記念写真を撮影する。間近に海獣が見られる。参加者手持ちのカメラで係員が2回、カメラマンが1回撮影する。カメラマンが撮影した写真はサーフスタジアム南傍にあるラボ前で15分後に展示され、気に入れば購入する事ができる。
- シャチと記念写真
- イルカと記念写真
- 笑うアシカと記念写真
- 口を人間の「イ」発音時の形にした“笑うアシカ”と記念撮影ができる。ロッキーワールドが開設した1998年のテレビCMで紹介され、現在はシーワールド名物の一つとなっている。混雑日でも定員に余裕があるため参加し易い。
[編集] 海獣とのふれ合い
- シャチのキスプレゼント
- 毎回のパフォーマンス終了後にオーシャンスタジアムのステージへ参加者が入り、プールサイドに寄ったシャチが参加者へキスをしてくれる。
- イルカにタッチ
- 毎回のパフォーマンス終了後にサーフスタジアムのステージへ参加者が入り、プールサイドに寄ったイルカに参加者が触る事が出来る。
- ラブリードルフィン
- ロッキーワールドの「イルカの海」内の浅瀬のプールへ参加者が入り、バンドウイルカとふれあう事ができる。
- バンドウイルカの妊娠・出産などに関わる配慮のため、実施が中止となる場合がある。
[編集] 広告・タイアップなど
テレビCMは1970年代から断続的に制作・放映されている。現行のテレビCMは2006年制作で、シャチがダイナミックに跳ぶ15秒の映像となっている。近年は春から夏にかけてのレジャーシーズンに日本テレビ(グランビスタが札幌テレビと資本関係がある点からとされる)で朝のローカル枠に放映されている。このCMは公式サイトでも表示される。広告は1990年代まで国鉄やJR東日本の特急「わかしお」とタイアップしたポスターが首都圏の駅に掲示されたが、近年はタイアップはせず、シーワールド単独の広告が東京駅京葉地下ホーム連絡通路や南房総の観光・宿泊施設で見かける程度となっている。
開園当初に映画ガメラ対深海怪獣ジグラの作品の舞台となり、当時の施設の様子も伺えるようになっている。2001年の映画ウォーターボーイズでは、「SeaWorld」としてロケに使われたほか、同年8月の夜にロッキースタジアムで試写会が催された。
このほか紀行番組や旅行雑誌で南房総を取り上げると、ほぼ必ずシーワールドが登場する。最近ではANA機内誌「翼の王国」2007年12月号でシーワールドのシャチとロッキーワールドの海獣を中心とした特集が掲載された。
[編集] ゴマフアザラシの「カモちゃん」
2002年から2004年にかけて、多摩川から荒川に出現した野生のアゴヒゲアザラシの「タマちゃん」などと同時期の2003年冬に、シーワールド(オーシャンスタジアムからロッキーワールド)前の東条海岸にアザラシが出現し、波打ち際で寝そべるなどの行動を見物人に見せていた。発見当初はシーワールドのアザラシが抜け出したなどと言われたが、そうではなく漂流してきた野生のゴマフアザラシであった。鴨川に定住?したため何時しか「カモちゃん」と名付けられた。このカモちゃんは2004年3月に姿を消したが、同年と翌2005年の12月頃に同じ個体が再び海岸に姿を現し、翌年3月頃まで見物人を愉しませた。シーワールドでは保護をする必要は無いと判断したが、連日観察するようになり、その様子は公式サイトで随時アップデートされていた。アザラシの漂着は2006年春を最後に見られていない。
[編集] 所在地
千葉県鴨川市東町1464-18
[編集] 最寄駅
- 安房鴨川駅西口から、無料送迎バス「GOGO号」が鴨川日東バスによって運行されている。(所用時間約5分。ただしゴールデンウィークや旧盆期間は30分前後かかる場合があり注意が必要。)
- 駅から安房小湊方向へ3km程離れており、徒歩での所要時間はおよそ30分~40分である。
[編集] 最寄バス停留所
「鴨川シーワールド」(鴨川日東バス)
- 高速バス【アクシー号】木更津金田バスターミナル・東京駅八重洲口前・浜松町バスターミナル行(平日のみ運行)
- ◆木更津金田バスターミナルで羽田空港行高速バスに乗り換えができるが、大半の便とは乗り継ぎ接続が取られていない。
- 高速バス【カピーナ号】亀山・藤林大橋(上総亀山駅前)・千葉駅行(平日・土曜のみ運行)
- 急行バス【鴨川-木更津線】木更津駅東口行
- 急行バス【鴨川-金谷線】平塚本郷、東京湾フェリー行
- 路線バス【鴨川市内-館山線】(館山方面)安房鴨川駅東口、仁右ヱ門島入口、館山駅行
- 路線バス【鴨川市内-館山線】(勝浦方面)安房天津駅、行川アイランド、上総興津駅行
[編集] 関連項目
- プロフェッショナル仕事の流儀 所属の海獣医師の勝俣悦子が取り上げられた。