革命歌劇
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革命歌劇(혁명 가극)とは、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮と記す)において上演されている独特の形態を持つ音楽劇をさす。西洋におけるオペラとは異なっており、むしろミュージカルに近い作品である。
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[編集] 発祥とその後
1969年に公開された『血の海(ピパダ)』を始めとする抗日パルチザン闘争や日本の統治時代をテーマにした映画は金日成主席を感激させた。そして、これらの作品をより親しみ易くし広めるために金正日の主導によって歌劇に仕立て上げられ、その第1弾として歌劇『血の海』が国立芸術劇場において血の海歌劇団(日本ではピパダ歌劇団ともよばれる)と朝鮮民主主義人民共和国国立交響楽団によって1971年に初演された。多くの演目が現在に至るまでロングラン公演を続けており、訪朝した日本人で観劇した経験のある人もある程度存在する。現在は平壌大劇場において公演を行っており、伴奏オーケストラは国立交響楽団ではなく座付のオーケストラを使用している。
[編集] 西洋のオペラとの相違点
独唱、合唱、オーケストラによって演奏されるという点では西洋のオペラと同一であるが、大きく異なる部分もある。西洋オペラにおけるレチタティーヴォやアリアを廃止し、「有節歌謡」や「傍唱(パンチャン)」を用いている。「有節歌謡」は同じ旋律を幾度か繰り返して歌うもので、音楽的に完結している。「パンチャン」は舞台の外にいる歌手や合唱が舞台上の人物の心境や場面の状況などを歌って観客に伝えるというものである。「有節歌謡」は旋律を聴き手に強く印象づけることを目的としており、平易な旋律であることが多い。「パンチャン」に似た表現方法は西洋のオペラにもみられるが、あくまで舞台に立体感を持たせるためのものであり、目的がやや異なる。また、作曲者や指揮者はあまりクローズアップされない傾向にある。伴奏オーケストラは基本的にはヨーロッパと同じ編成であるが、伝統楽器を用いているケースもある。演出もあくまで写実的、古典的なものが主体であり、西洋オペラにおける前衛的な演出は皆無である。近年は新作初演というニュースはなく、次に述べる「五大革命歌劇」が幅を利かせているようである。
[編集] 五大革命歌劇
革命歌劇が登場して以来、現在も北朝鮮での人気の高い五つの歌劇を五大革命歌劇と呼ぶ。下記の五曲である。映画化もされている。
- 『血の海』
- 『花を売る乙女』
- 『党の真の娘』
- 『密林よ語れ』
- 『金剛山の歌』
[編集] 録音
上述の五つの作品はいずれも録音されており、CDもコリアブックセンター、レインボー通商などで入手できる。
なお、金剛山歌劇団が1974年9月に『金剛山の歌』を浅草大劇場で上演しており、これが日本初演である。 また、『血の海』と『花を売る乙女』には交響曲に編曲されたものも存在し、日本でも演奏されている。
[編集] その他
映画版『花を売る乙女』で主人公コップニを演じたホン・ヨンヒは、1ウォン札の裏面に描かれている。また、中華人民共和国建国15周年を記念して制作されたミュージカル『東方紅』も、革命歌劇として位置づけられている。
[編集] 参考サイト
2008年1月15日 (火) 13:59 (UTC)