障害年金
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障害年金(しょうがいねんきん)とは、傷病によって、一定程度の障害の状態になった者に対して支給される年金である。労働災害(労災)の際に支給される年金については、労働者災害補償保険(労災保険)の項を参照。
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[編集] 障害基礎年金
国民年金法に基づいて給付される障害年金
[編集] 受給要件
- 国民年金の保険料を、納付すべき期間(加入期間)の3分の2以上、納付済みであるか、または免除を受けていること。
- ただし、初診日が平成28年4月1日前にある傷病による障害については、「当該初診日の前日において当該初診日の属する月の前々月までの1年間のうちに保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がないとき」つまり「初診を受ける前の日の年金納付状況をみて、初診日の月の13ヶ月前から2ヶ月前の1年間すべて、保険料を納付するか免除されていれば障害年金を受給できる(平成28年3月末までの経過措置)。
- 20歳未満ではじめて医師の診察を受けていて、障害の状態で20歳に達するか、または、20歳以降で障害の状態になること(20歳前傷病)。
[編集] 障害認定時
- 初めて医師の診察を受けたときから、1年6月経過したときに障害の1級か2級の状態にあること
- 初めて医師の診察を受けたときから、1年6月経過する前に傷病が治った(症状固定)した場合で、治った際に障害の1級か2級の状態にあること
(上記は、原則である。「人工透析」などは透析開始日から3ヶ月で認定となる様に、「例外」が存在する。)
[編集] 事後重症
- 初めて医師の診察を受けたときから、1年6月経過したときの障害が1級か2級の状態でなく、
その後、障害の程度が重くなり65歳の誕生日の2日前までに請求して認定されると支給される。
[編集] 年金額
2007年度の額は2006年度と同じ
- 1級 年間792,100円×1.25(月額約82,510円)+子の加算
- 2級 年間792,100円(月額約66,008円)+子の加算
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- 子の加算 第1子・第2子 各年間227,900円、第3子以降各年間75,900円
- 子とは、請求時に「生存している子」若しくは「妻の胎内に胎児として存在していた子が出生した後」であり、その対象者が18歳到達年度の末日を経過していない子、または、20歳未満で障害等級1級または2級の障害者をいう。
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[編集] 等級
国民年金法施行令別表第一
- 1級
- 両眼の視力の和が0.04以下のもの
- 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
- 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両上肢のすべての指を欠くもの
- 両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢を足関節以上で欠くもの
- 体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの
- 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であつて、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
- 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
- 2級
- 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの
- 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
- 平衡機能に著しい障害を有するもの
- そしゃくの機能を欠くもの
- 音声又は言語機能に著しい障害を有するもの
- 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
- 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの
- 一上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 一上肢のすべての指を欠くもの
- 一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢のすべての指を欠くもの
- 一下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 一下肢を足関節以上で欠くもの
- 体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの
- 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
- 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
注:視力の測定は、万国式試視力表によるものとし、屈折異常があるものについては、矯正視力によって測定する。
[編集] 障害厚生年金
厚生年金保険法に基づいて支給される障害年金。各種公務員等が加入している共済年金、船員保険法に基づいて船員の障害年金も、障害厚生年金とほぼ同様である。
[編集] 受給要件
- 厚生年金に加入中の期間中に初めて医師の診療を受けた傷病による障害であること
- 障害基礎年金の支給要件を満たしていること
[編集] 障害認定時
障害基礎年金と同じ
[編集] 年金額
在職中の平均標準報酬月額と、被保険者期間の月数を基準に、一定の計算式によって求められる報酬比例の年金額が基準となる。 2007年度の額は2006年度と同じ
- 1級 報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額(年間227,900円)
- 2級 報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額(年間227,900円)
- 3級 報酬比例の年金額(最低補償額として年間594,200円)
[編集] 特別障害給付金
[編集] 制定の背景
- 国民年金制度の導入時には、20歳以上の学生や配偶者(多くはいわゆる主婦)が強制加入の対象者ではなかった。このため、旧制度の下で、20歳以上で任意加入対象期間中の国民年金に未加入であった期間に初診等があり、現行制度における国民年金の受給対象である障害の状態になったにも関わらず、障害基礎年金の受給資格が得られず、支給を受けられない対象者が生じることになった(未加入者問題)。
- これに対して、全国各地で訴訟が提起され、下級審判決の中で、支給しないことを違法とするものも現れた。
- これを受けて、2004年に特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律が新設され、一定の要件の下で、旧制度下での未加入者に対して、給付金が支給されるようになった。
- なお、現行法の下での年金未納者については、特定障害給付金制度による救済は受けられない(年金未納問題参照)。
- 厳密に考える場合、特別障害給付金は福祉的観点で給付される給付金であり障害年金ではない。また障害年金としてでなく年金とも異なるものである。
[編集] 対象者
- 1992年3月以前、学生である時、任意加入の未加入であった時期に初診日がある者、または、1986年3月以前、第2号被保険者の配偶者である時、任意加入の未加入であった時期に初診日がある者。
- 障害基礎年金による障害の状態にあること。
- 65歳到達日前に請求を行っていること。(経過措置があり65歳以上でも条件を満たせば請求できる場合がある)
[編集] 受給額
(2007年度)
- 障害基礎年金1級相当(月額) 50,000円(2級の1.25倍)
- 障害基礎年金2級相当(月額) 40,000円
請求の翌月からが受給対象となり、遡りはない。
[編集] 残された問題
特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律の新設によって、未加入者問題の救済が図られたが、なお、20歳前傷病者との区別に合理性があるか、憲法14条1項の定める平等原則との関連等で議論が残されている。 また、年金制度全体についていえることだが、生活保護と比較しても、国民年金や障害基礎年金の額が、十分であるかについても、議論がある。