限りなく透明に近いブルー
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『限りなく透明に近いブルー』(かぎりなくとうめいにちかいブルー)は、村上龍の小説。1976年、「群像」六月号に掲載、同年に講談社から刊行された。装丁を龍自身が手がけている。
2005年現在の発行部数は単行本131万部、単行本・文庫本の合計で350万部以上。
アメリカ軍基地を持つ福生を舞台に、若者たちのセックスや麻薬、黒人との交流などに明け暮れ、リュウ(主人公)が次第にドラッグによって体が蝕まれ、最終的には狂ってしまう、という小説。詩的な表現や過去に前例の無い文章表現などを多用し、当時の文芸界には衝撃的であった。よく石原慎太郎の『太陽の季節』と対比され、日本の純文学の始点となった作品である。著者の村上龍が20歳のころの福生市での体験を基にしており、当初の題名は、「クリトリスにバターを」でだった。(露骨な性表現のため、のちに改題)
第19回群像新人文学賞、第75回芥川賞受賞作。芥川賞選考会では賛否が別れ、2時間に渡る論戦が起こった。丹羽文雄、井上靖、吉行淳之介、中村光夫が支持、対して永井龍男と滝井孝作が猛反発。安岡章太郎は半票を投じ 4.5対2 で過半数を獲得した村上が受賞した。なお、井上靖は当初反対票を入れようと考えていたが、息子に提言され、支持することになったらしい。ちなみに、井上靖が反対票を入れていると、過半数を獲得できなかった村上の受賞はなくなっていた。
中国語版の出版に際し、序文の中で村上本人は作品のテーマを、近代化の達成という大目標を成し遂げた後に残る「喪失感」であると述べている。また同文中にて、この作品がその後の作品のモチーフを全て含んでいる、ということが述べられている。
1979年には龍自身が監督を務め、劇場映画が公開されたが、興行としては惨敗に終わった。