酸化銀電池
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酸化銀電池(さんかぎんでんち)とは、乾電池(一次電池)の一種である。製品のほとんどはボタン型の形状で、小型の電子機器に広く用いられている。
[編集] 原理
正極に酸化銀、負極にゲル化した亜鉛、電解液に水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを用いた電池である。化学反応式は次の通りである。
- 正極 Ag2O + H2O + 2e- → 2Ag + 2OH-
- 負極 Zn + 2OH- → ZnO + H2O +2e-
実際には、亜鉛が電解液と反応して水素を発生することを防ぐため、亜鉛の表面を水銀で覆う処理が行われている。近年は、腐食抑制剤や水素を吸着する物質の使用により、水銀0使用を実現した製品が開発されている。
[編集] 特徴
放電時の電圧特性に優れており、放電の末期まで電圧降下が極めて少ない。公称電圧が1.55Vと比較的高いため、小型化を要求される用途に向いている。温度特性にも優れている。エネルギー密度が高く、アルカリ電池の約2倍の容量を持つと言われている。
経年劣化が少なく長期保存に耐える、そのため腕時計のように小電力で数年間にわたるような長期間駆動する装置や電池が封入された状態で長期保存される装置に向いている。
酸化銀を用いているため価格は高くなる。
[編集] 用途
電解液の種類などによって最適な使用電流があり、外形が同じでも、使用目的が異なるいくつかの種類が製品になっていることがある。ボタン型の形状で比較的小型の製品が多い。複数のセルを一つのパッケージに収めた高電圧の製品もある。
時計、補聴器、カメラ(露出計、電子シャッター)、電子体温計などが代表的な用途である。LEDが普及する以前は、酸化銀電池を電源として豆電球を光らせるキーホルダー形懐中電灯の製品が存在した。現在ではリチウム電池とLEDを用いたものに代わっている。
軍用品では魚雷の推進用などの大型電源から火器信管などの小型電源まで幅広く使用されている。これは電池が装置に封入された状態で数年から20年近い長期保存されるためである。