速度
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速度(そくど)は単位時間当たりの変動を表す量である。一般に、着目する現象が時間的に変化している場合に、その現象の時間に対する変化の割合を速度という。宇宙の膨張速度、面積速度、角速度、気化速度など種々の速度の概念が定義される。各種物理量の速度には特別な名称が付けられていることがあり、馬力、仕事率、躍度などがある。
単に速度と言った場合には、単位時間あたりの物体の位置の変化をさす場合が多い。以下、本項では物体の運動における変位の速度を主に扱い、それを単に速度と称する。
日常語としての速度(スピード、speed)は、大抵の場合一定時間あたりに進む距離のことを指す。これは [移動距離] ÷ [経過時間] で求めることができ、時速、分速などの単位が用いられる。
物理学の文脈では、日常的な意味での速度を速さ (speed) とよんで速度 (velocity) と区別する。速度は運動を表す物理量であり、ある物体が移動するときの、単位時間あたりの変位を表す。すなわち、物理学の文脈では速さと向きとを併せたものを速度というのであり、速さは「速度の大きさ」を示すスカラー量とみなされる。速度は“大きさ” と“向き”をもつのでベクトル量であり、それを明示するために速度ベクトルと呼ぶことがある。
例として、自動車が“一定速度”で東の方向に走り、1 時間で 60 km 移動した場合、車の速度は「東向きに時速 60 km」となり、車の速さは「時速 60 km」となる。また例えば、マラソン選手が 40 km を 2 時間で走った場合、そのマラソン選手の速さは 20 km/h、または時速 20 km と表される。
なお、現象の時間的変化の割合という一般化された意味での速度は、必ずしもベクトル量となるわけではなく、観測する物理量がスカラー量かベクトル量かに従う。
[編集] 平均速度と瞬間速度
正確に述べると、単位時間当たりの変化量、すなわち [対象の変化量] ÷ [経過時間] によって求められる速度は平均速度と呼ばれる。
例えば物体の運動について、ある時刻 t1 における物体の座標を x1, 時刻 t2 のときの座標を x2 とすると、この時間区分における物体の平均速度 は、
で表される。また、この速度ベクトルの大きさを平均の速さとよぶ。
平均速度を観測する際に、時間区分 t2 − t1 を十分小さくし 0 に近づけていくとき、各時点における速度とみなせるものが観測でき、これを時刻 t における瞬間速度 (instant velocity) と呼ぶ。
時刻 t、物体の座標 x の変化量をそれぞれ Δt, Δx とすると、瞬間速度 v は、
と表される。中辺は平均速度に対し時間区分の長さを 0 とする極限をとったものである。つまり物体の瞬間速度とは、その物体の位置座標を時間 t の関数 x(t) とみなしたとき、それを時間 t について微分したものである。
通常は、瞬間速度のことを指して単に速度と呼ぶことが多い。また例えば、瞬間速度の微分(すなわち速度変化の瞬間速度)として加速度を考えることができる。