迷惑電話
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迷惑電話(めいわくでんわ)とは、相手に不快感を与える結果となる電話(通話)のこと。
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[編集] 概要
迷惑電話は、電話を受けた側が不快に感じるのであれば迷惑電話となる訳だが、類型としては脅迫電話(きょうはくでんわ)や無言電話(むごんでんわ)・猥褻電話(わいせつでんわ)が挙げられる。望まれないセールス電話(電話勧誘販売)も、往々にしてこの範疇に含まれ、更に冗談や悪戯、悪ふざけを目的とした悪戯電話(いたずらでんわ、略して「いたでん」)も迷惑電話の一種である。
また2000年代初頭では、ナンバーディスプレイサービスに関連して、無作為に掛電し、一回だけベルを鳴らして着信履歴を残し、相手から電話を掛けさせて有料サービス(ダイヤルQ2等)に誘導するワン切り電話というものも生まれ、これも迷惑電話に含まれる。
これらの行為は、電話が、相手に受話器を取らせる事を強要する機能(呼び出しベル)が付いているため、往々にして電話の応対に出た相手に、著しい不快感を催させる。特に就寝中や何等かの用事をしている最中においてその不快感は増す。その一方で、掛ける側にしてみれば、孤独を紛らわすために道具を弄んだ結果であるケースも見られる。また後述するように、何らかの犯罪的な行為の前駆となる場合もある。
[編集] 迷惑電話の分類
この行為を目的や内容別に分類すると、概ね以下の通りとなる。
- 悪戯ないし悪ふざけ目的
- デタラメな電話番号に掛ける
- 相手に用も無いのに電話する
- 冗談や嘘を言う
- 相手を混乱させ、おかしな行動を取らせようとする行為
- 相手を騙し、それによって何等かの嫌がらせを目的とする行為
- 不快感を与えることを目的とする
- 留守番電話を探し無意味ないし不快なメッセージなどを吹き込む、更には長時間にわたり前記の行為を行ない続け、テープ等録音用記録媒体の容量を故意に使い切らせる
- 相手が出た瞬間、電話を切る
- 個人的な鬱憤や欲求不満の発散
- 相手の反応を窺う(無言電話など)
また望まれないセールス電話や、非常識な時間に掛かってくる電話なども迷惑な電話として扱われがちである。このほかソーシャル・エンジニアリング的に個人情報や秘匿情報を聞き出そうとしたり、あるいは家人の関係者を装って家族から情報を得ようとするなど、迷惑電話というよりも不審電話とでも呼べるものもある。こういった不審電話では、学校関係者を装って児童のクラス名簿を得ようとしたケースや、厚生労働省関係機関を装ってアンケートを行った[1]ケースも発生している。
[編集] 間違い電話
本来、単純な人的ミスに因る間違い電話も、状況や内容によっては、これら迷惑電話の範疇に含まれるケースがある。
間違い電話は、電話機の操作ミスや掛電すべき電話番号の覚え違い(例えば7356を7536と間違える)・連絡ミスによって発生し得るが、これが執拗な場合は、間違って掛かった相手に多大な迷惑となる。例を挙げれば1980年代以降、一般家庭にも急速に普及したファクシミリの番号違いによる掛電や、携帯電話における番号の間違い(携帯番号の桁数は全国一律のため全く別の地域からかかる場合もある)、電話番号逼迫対策による市外局番・市内局番の変更による番号の間違い(例えば番号が変更されたことを知らない)、深夜の間違い電話といったものである。とりわけテレビやラジオ放送で、番組の放送中に受け付ける局の電話番号に似た番号の個人宅への間違い電話が発生すると、本数が多いために、多大な迷惑をこうむる。
大抵の場合は、通話者間で掛けた電話番号の確認を行って和解する事がほとんどだが、中にはマナーに反して、意図した相手に掛からなかったからと無言で電話を切り、前出の無言電話同様の不快感を相手に与えて迷惑電話化すると共に、後々の人間関係にしこりを残すケースもある。
[編集] ファクシミリの機械的な問題
間違い電話でもファクシミリの場合は、電話してきた相手先が機械的に送信を繰り返し、しかも通話を受けた側にファクシミリの受信設備が無い場合、通話を終了しても数分後に再度掛かってくる事が多い。このため受けた側は相手に間違いを伝える手段が無く、また繰り返し掛かってくる事で、不愉快に感じる事もある。企業等のファクシミリ回線の電話番号に紛らわしい電話番号を持つ家庭においては、たびたび起こり得る問題である。
なお近年のファクシミリでは、そのような問題を解消するため、2~3回送信してみて、相手先から一方的に通話を切られる様であれば、番号が誤りとして自動的に送信を中止する機種も多い。更に通話開始直後の送信開始信号発信時において、発信側にてその音声をスピーカーでモニターできるようになっており、このとき受信側から声で「間違ってますよ!」とでも注意すれば、相手先のファクシミリに付いているスピーカーから、その声を発信側に聞かせる事も可能である。
[編集] 作品中に出てきた電話番号
漫画、テレビゲーム、アニメーション、小説、ドラマ、映画等の作中で表示された電話番号、或は登場人物がかけた電話番号に対し実際電話してみるというもの。
有名な物に「サザエさんの蕎麦屋」事件がある。これは1971年5月3日付の朝日新聞朝刊に連載されたサザエさん作中にて、カツオがメモに書いた蕎麦屋の電話番号(作者は架空の番号のつもりで書いた物)に読者が実際電話をしてみたというもの。ここで書かれた番号は実際に世田谷区在住の家庭にて使用されていた物で、掲載紙が家庭に届くや否やその家庭では電話が鳴りっ放し(サザエさんうちあけ話によれば1日で200件を越えたようである)となり、作者の長谷川町子宅にも被害者本人からクレームの電話がかかってきた。
この蕎麦屋事件で電話を掛けた人々の動機は「本当に使われているか気になった」という興味本位から、「実在する蕎麦屋が広告料を長谷川に支払って描いてもらったと思い、それに対するクレーム」まで多彩に渡っていた。ここまで大規模な物になったのも新聞連載で、それも朝日新聞と言う巨大メディアであったが故人々が目にする機会も多かったためだと考えられる。因みに単行本収録に当たって該当シーンは当然ながら修正が加えられた。
尚、一種のジョークと捕らえる事が出来る物に、テレビアニメなどにおいて製作会社・出版社などの電話番号が記載された事がある。
これは蕎麦屋事件と同じく作中にて表示された番号に電話したところ製作会社に繋がったという物で、その作品のファンサイト等で確認が取れている。恐らくスタッフの他愛の無いギャグであると推定できるが、たとえ製作側が視聴者から電話がかかってくる事を意図していたとしてもこのように作品に出てきた番号に電話をする行為は「用も無いのに見ず知らずの相手に電話をする」行為でありやめるべきと言えるだろう。
(アメリカではこのような事態を防ぐ為に、ドラマで使われる電話番号には市内局番555(欠番であり使われていない)から始まる番号など使われていない番号を表記する事になっている。尚、24 -TWENTY FOUR-のように実際に接続できる専用の受付番号を用意し、出演者が電話に出るなどの、ファンサービスを行った例もある)。
[編集] 具体例
嘘や冗談の類では、電話が各家庭に普及し始めた1900年代に前後して、相手の無知に付け込んで、おかしな行動を取らせてふざける悪戯が横行した。有名な所では以下のようなものがある(電気信号ではなく、伝声管のように直接声が伝わると思われていた事から出来た悪戯)。
- 主婦が掛かってきた電話に出る。
- 相手は電話局の局員を名乗り「今から電話線の定期清掃作業として、高圧空気の送信を行います。各家庭の受話器から、若干の埃が噴き出す事がありますので、作業終了まで、電話機に枕カバーなどをして、室内が汚れないよう、ご注意ください」と説明してくる。
- 主婦は慌てて枕カバーを電話機の上に…。
- 数分後に家の亭主(実は悪戯電話をしたのは亭主と共謀した友人)が自宅に電話。主婦がベルに気付いて電話に出て「あなた! 今、電話線の清掃中なの知らないの!? 後で掛けなおして頂戴!!」
勿論、これは健全な悪ふざけの範疇である。
しかしこれが悪意のある嘘ともなると、非常に多くの問題を含む。例えば以下のようなもの。
- 主婦が掛かってきた電話を取る。
- 相手は信用調査会社を名乗って「おたくの電話番号が、当社の○○名簿に登録されています。もし登録を取り消したい場合は次に云う口座番号にお金を振り込んでください」という。
- 主婦が振込みを断ろうとすると、相手が同名簿は今後、様々な通販会社の勧誘に採用される予定だと告げ…
勿論、これは詐欺や脅迫行為である。近年ではこれにオレオレ詐欺(振り込め詐欺)等といった手口の巧妙化した行為が加わっている。
[編集] 110番への悪戯電話
また無目的の通話においても、相手が不快と感じる他に、電話先の相手の生活や業務を妨害するケースも見られる。古くから110番通報による警察直通電話に公衆電話等から、悪戯電話を掛けて悪ふざけをする者も少なくなかったが、近年では携帯電話からもこれら通報電話を悪ふざけで掛ける者が多い。なお日本では、110番・119番通報などの緊急電話の場合、通話者の電話機設定上の不備から非通知設定になっている場合でも、通話者の確認を行えるよう、特殊な経路で電話番号や発信位置が確認できるシステムとなっている(特に、喋れない身体障害者や、声を出すと犯人に気づかれるなど喋れない状況からの緊急入電、また通報者がパニックになって現場の番地が分からないなどの場合を想定したもの)。このため、番号非通知であっても、悪戯電話発信者の電話番号と所在地は受信台にはちゃんと判っている。特に緊急通報の電話番号は、緊急でも無いのに電話をすると、その間、一人の受信係と一回線が迷惑電話に占有される事でもあり、他の緊急を要する通報者の妨げとなってしまう。
この他、嫌がらせで一言も喋らない無言電話をする者や、猥褻な電話を掛ける者、単に憂さ晴らしで他人に鬱憤を撒き散らす行為は、いずれも迷惑で、ある意味では脅迫行為とも取られかねない。いずれにしても誉められた行為では無いとされている。
[編集] 名簿業者と間違いファックス
その一方で、これら間違い電話を装った名簿業者の存在も指摘されている。例えばファックス付き電話機は一般家庭に普及してはいるものの、中高齢者宅を中心として40~50%前後に留まっているとも云われ、ファックスを使った無差別に広告を送信する業者にとって、ファックスのある家庭(特に騙されやすい高齢者宅や、比較的経済的余裕があると思われる「日中に人がいる家庭」等)を中心とした電話番号リストを作成するために、無作為に掛電して応答を確認する手口の存在が指摘されている。
この場合、あたかも企業や団体に送ったかのようなファックスを送り付け、同送信物中に記載された電話番号を見て、間違いを伝えるために電話を掛けてきた人の電話番号(ファックス番号)を執拗に尋ねるケースが見られる。同様の業者では、様々な条件から選別された個人リストを作成しており、内容によって一件数百円から数千円の単位でそれらリストが売買されている事もあるため、更なる悪質なセールス電話に繋がる可能性も懸念されている。
間違いファックスを受信した場合には、184発信(発信者番号非通知)で電話し、概ねの受信日時とファックス送信担当者の名前、受信書類の概要だけを伝えて、誤送信の存在だけを伝えれば良い。
[編集] 迷惑電話と法の適用
迷惑電話そのものを直接規制する法律は日本にはない。しかし、それにより相手が相当の迷惑を被った場合には既存の法律により罰せられる。振り込め詐欺はその典型である。
- 威力業務妨害罪:企業や公共サービスなどへの過度の迷惑電話により通常の業務や相談業務に支障をきたした場合。他人にあるいは相手に迷惑をかけてやろうと、利用する意思もないのにタクシーや出前などを注文するのはこれにあたる。
- 脅迫罪(刑法222条):相手へ危害を加える旨、若しくはそれに相当する内容を発した場合。
- 傷害罪:過度の迷惑電話により相手にノイローゼなどの精神疾患をもたらせた場合。
[編集] 対策手段
迷惑電話や悪戯電話において、家庭で普遍的に取られる方法は、以下のものが挙げられる。
- 掛けてきた相手を無視して電話を勝手に切る
- 適当に相槌を打って、相手が飽きるのを待つ
- 相手をしないで放置する
しかし無視してすぐに電話を切ったり放置した場合には、逆に迷惑電話を掛けて来た側の余計な自尊心を刺激したり、無用な怒りを煽ったりする例も多いようで、事態が悪化する傾向も見られる。
また適当に相槌を打つのも危険である。特に悪徳セールスの電話であった場合に、対応上の些細な不備をついて高額な商品を送り付けてきて、代価の支払いを催促する場合も見られる。特に悪質な事例では、クーリングオフにも応じず、脅迫的な督促電話を掛けてくる業者もある。特に以下の状況に陥らないよう気を付けるべきである。
- 「結構です」→「結構な事である」→「はい」という意味であると解釈したという理屈で商品を送り付けてくる。
- 「はぁ」と応えたのを「はい」と聞こえたとして商品を送り付けてくる。
- 慇懃な電話に適当に相槌を打って聞き流していると、突然口調が脅迫的になり、「ここまで説明させたのに買わないつもりか!」と大声で怒鳴りだす(「脅迫行為」であり特定商取引法違反が成立する)。
いずれにしても、むやみに感情的にならず理性的な対応で処理していかないと、この問題を解決して行く事は出来ないと思われる。
[編集] 逆悪戯
なお、無差別に掛かってくる迷惑電話・悪戯電話の類では、逆悪戯電話をしてしまう…という対策もある。以下は実際に効果があったという報告の挙がっている方法である。
- 録音したお経を聞かせる
- 前回掛かってきた悪戯電話の内容を(録音しておくなりして)聞かせる
- 受話器を箸で叩いて音頭を取りながら歌う
- また、漫画「ブラック・ジャック」では、脅迫電話の相手に電動ドリルのモーター音を聞かせて撃退する場面がある。
これらは、相手以上にこちらが太い神経をしていないと成功し得ない方法では在るし、また何ら事態が改善する保証も無いので注意されたい。
- 注:これらの行為を推奨する物ではない
一部の電話機には、悪戯電話撃退用として通話中に不快な音・キャッチホンやチャイムの着信音を発する機能が組み込まれている製品もあるが、効果の程は定かではない。
[編集] 迷惑電話撃退サービス
一方、多少の余裕がある向きでは、個人攻撃として迷惑電話があった場合に、電報電話局に相談して電話番号を変えてもらう(NTTでは工事費2,625円で対応・2007年現在)という対応や、電話回線契約の付加サービスとして、特定の番号からの着信を拒否する各種迷惑電話撃退サービスが提供されている。また、ナンバーディスプレイ対応の電話機の中には同様の機能を設けているものもある。
『ナンバーお知らせ136』は、『136』に電話をかけると最後に掛かってきた電話の電話番号を1回31.5円で教えてくれるというサービスで、匿名の悪戯電話犯の電話番号を知る手立てとなる。
犯罪心理学などの面からは、相手が出ているにも関わらず無下に扱われると、掛けた側の怒りや嫉み等の感情を刺激し易いが、自動的に(掛けられた相手からは何のデメリットも無い方法で)遮断されてしまうと、気分的に次第に沈静化する事が多いという。
[編集] 法的手段
ストーカーに因る悪戯電話の場合は、対策を講じられても加害者が諦めない例が見受けられる為、弁護士を交えて当事者と対話する(公正な第三者を介在させられない場合はストーカーに会うべきではない)方法を取ったり、法的手段に訴えて刑事罰も有り得る状況を作る様にすべきだとされる。
業務上、支障を来たす様な迷惑電話・脅迫電話の類に於いては、最寄の警察や弁護士に相談するという対策もある。
いずれにしても、実際には刑事事件としての立件が困難な場合もあるが、これらの被害を受けた場合は、被害拡大防止の為にも警察署や交番に被害届けを出すべきである。
[編集] ネットで流行った撃退音声
一時期、ネットでイタズラ電話に使うために、わざと架空請業者に電話を掛け、その音声を録音しネットで公開する者が現れた。本来、いたずら電話に使用する目的であったが、専ら架空請求を撃退(撃退よりも態々自分からいたずら電話を掛けることの方が多かったようである)するために使用された。存在する音声として、山田ボイス、佐竹ボイスが存在する。その他、アニメ、映画、記者会見の受け答えなどを編集したものまで存在する。(ブッシュボイス、谷口ボイス、ムスカボイス、シュワルツネッガーボイスなど)