藤村紫朗
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藤村 紫朗（ふじむら しろう、弘化2年(1845年） - 明治42年(1906年)）は、日本の政治家。山梨県初代官選知事。貴族院議員、男爵。
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[編集] 略歴
[編集] 出生から初期県政
熊本藩士黒瀬家の次男で、安政5年（1858年）に藩士菅野家の養子となり、名を嘉右衛門と改める。上京して尊皇攘夷運動に加わり、文久3年（1863年）の八月十八日の政変後に脱藩し、翌元治元年の禁門の変では長州藩に加わって戦い、大和十津川郷士の紀州高野山挙兵にも参加している。明治後に藤村姓に改め、戊辰戦争では新政府軍の軍監として北陸を転戦。
明治後に藤村姓を称し、明治元年（1868年）には徴士内国事務局権判事、翌年には監察司知事。1871年（明治4年）に大阪府判事。1873年（明治6年）1月には、大小切騒動で免官となった権令土肥実匡の後任として山梨県権令として着任。在地士族層を欠く山梨において、藤村は同年4月に「区戸長公選法」を発布し、区戸長を公選させた上で任命する方式を取り、「新聞解話会」を行大小切騒動で損なわれた人心掌握に務めた。さらに「物産富殖告諭」において殖産興業計画を布告し、戸区長のうち区長総代理、学区取締総理の2名を政策の相談役として県庁に詰めさせ、近藤喜則や栗原信近など地元名士の協力が得られ、興業政策を実行する。
[編集] 殖産興業と反藤村勢力
江戸時代からの甲斐の産業であった製糸業や郡内地方の織物織は中核産業として重視され、移住者を募り巨摩郡日野原（北杜市、旧長坂町）が開拓が行われ、山麓部の主用産業として養蚕を定着させるため教師を招き、日野原養蚕飼育場を設立させ桑栽培や養蚕技術を普及させ、技術革新のため甲府市錦町に山梨県勧業製糸場を設置。また、失敗に終わったが甲州葡萄の生産にも着目し、ワインの国産化も試みた。1874年（明治7年）には「道路開通告示」を発し開港場である横浜へ通じる道路整備のため民費による道路改修を実施し、甲州街道や駿州往還、駿信往還、青梅街道など主要な幹線道路に馬車通行可能な改修工事が行われた。1880年（明治13年）には明治天皇の東山道行幸が行われる。藤村は「道路県令」と評されたことが、北村透谷の日記などに見られる。
殖産興業と平行して文明開化のための施策も行い、荒廃していた甲府市街の整備に着手し、「藤村式建築」と呼ばれる擬洋風建築を推進。1872年（明治5年）に政府が学制を公布されると、区戸長に学区取締を兼任させて就学を推進し、「陋習」打破と称して道祖神風習など伝統行事や祭事などへの抑圧を行っている。
藤村の興業政策は成果をあげる一方で民費負担が県民の反発を招き、1877年（明治10年）5月、甲府市太田町一蓮寺で県会を開設して民費の確保を試みるが、失敗している。同年に政府が募集した起業公債基金にも8つの事業計画を提出しているが、これも黙殺されている。明治10年代には県庁広報誌であった『甲府日日新聞』（のちの山梨日日新聞）に対して藤村県政に批判的な新聞が出現し、1879年（明治12年）創刊で自由民権運動の中核となった『峡中新報』において展開された。
[編集] 後期県政から晩年
藤村は政府の資金援助による産業振興を期待していたが、1881年（明治14年）、政府の軍備拡張政策に応えた大蔵卿松方正義による財政政策（松方財政）によるデフレーションは県内の製糸業は打撃を受け、1884年（明治17年）には勧業製糸場が火災で焼失し、民間に払い下げられた。
1886年（明治19年）の地方官官制の発布により初代知事となるが、翌年3月には愛媛県知事として転任、後任は山崎直胤。愛媛においても養蚕の奨励や洋風建築の推進などを行っているが、1888年（明治21年）には公金流用疑惑で東京へ召還され、潔白を主張して辞任。男爵、貴族院議員となり、実業界にも携わっている。63歳で死去。
睦沢村亀沢（甲斐市、旧中巨摩郡敷島町）に建設された旧睦沢小学校は、「藤村式建築」の洋風校舎で、1966年(昭和41年)に甲府市古府中町の武田神社へ移築され、藤村記念館となっている。
[編集] 参考文献
- 有泉貞夫『山梨県の百年』（2003,吉川弘文館）
- 『山梨県史通史編5近現代1』（2006,山梨県）
