聖体礼儀
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本来の表記は「聖體禮儀」です。この記事に付けられた題名は記事名の制約から不正確なものとなっています。 |
聖体礼儀(せいたいれいぎ)は正教会で聖体機密を含む奉神礼であり、日本正教会による日本語訳。ハリストスの最後の晩餐を記憶する祈祷。機密の一つであり、教会の聖伝である。よって正教会である限り、聖体礼儀の構造への恣意的な変更は認められない。カトリック教会のミサに相当し、英語圏の正教会では「ミサ」と呼ばれる事もある(但し、ギリシャ語・ロシア語で聖体礼儀をミサと呼ぶ事は無い)。
(以下、日本ハリストス正教会での用語を断りなく用いる。)
- ギリシャ語:Θεία Λειτουργία(シア・リトゥルギア)[1]
- ロシア語:Божественная Литургия(ボヂェストヴェンナヤ・リトルギヤ)[2]
- 英語:Divine Liturgy
ビザンチン奉神礼の聖体礼儀には、3種類がある。
- 聖金口イオアンの聖体礼儀
- 殆どの主日、祭日に用いる。平日に修道院等で行われる聖体礼儀もこの形式である。
- ギリシャ語:Η Θεία Λειτουργία του Χρυσοστόμου
- ロシア語:Литургия Иоанна Златоуста
- 英語:Divine Liturgy of St. John Chrysostom
- 聖大ワシリイの聖体礼儀
- 大斎中の主日、降誕祭、神現祭、聖大ワシリイの祭日などに用いられる。金口イオアンの聖体礼儀はこれを簡略化したものだともいわれる。
- 先備聖体礼儀
- 大斎中の平日に用いられる。先備聖体礼儀では聖変化は行われない。問答者グレゴリイに帰せられる。
目次 |
[編集] 構造
大きく分けて、「奉献礼儀・啓蒙礼儀・信者の礼儀」の三部構成をもつ。
[編集] 奉献礼儀
奉献礼儀(ほうけんれいぎ)では、司祭・輔祭が祭服を完装して、聖体機密で用いられる聖餅(聖パン、プロスフォラ)とぶどう酒が用意される。奉献礼儀の成立はやや遅く、元来は聖体礼儀の一部ではなかったと考えられている。
奉献礼儀は至聖所で行われる。司祭は入堂し、聖所で着衣式を行う。そのあと至聖所に入り、奉献礼儀がはじまる。 大きな教会では、その間に聖所でこれと平行して時課が行われるのが普通である。主日の場合、聖体礼儀前の時課は第6時課まで、平日の場合は晩課までを行うことが出来る。 神品が司祭一人の教会では、啓蒙礼儀の前に行なわれている痛悔機密を時課と並び行ない、奉献礼儀はその前に済ませておく。
また主教祈祷の際は、主教入堂式・着衣式が、奉献礼儀と並行して行われることが多い。
[編集] 啓蒙礼儀
啓蒙礼儀(けいもうれいぎ)では、信徒や啓蒙者(洗礼志願者)への教義の教えが主眼であり、使徒経・福音経の誦読はここで行われる。
啓蒙礼儀は、輔祭の呼びかけ(君や、祝讃せよ)とそれに呼応する司祭の祝讃(父と子と聖神の国は崇め讃めらる、今もいつも世々に)によって始まる。
連祷とアンティフォン等の祈祷を繰り返した後、小聖入が行われ、福音経(ハリストスの象り)が至聖所から聖所へ持ち出される。小聖入は本来、福音経を聖堂に運び入れ、信者が共に入堂するものであったと考えられている。小聖入のあと、その日のトロパリ、聖三祝文、ポロキメンが歌われ、使徒経および福音経の誦読を行う。使徒経や福音経の誦読箇所は、教会暦によって定められている。
なお、ポロキメンから使徒経の誦読のときに、日本以外の教会では座るとこがある。対して日本正教会の習慣では、啓蒙礼儀の間中、立つことが普通である。福音経の誦読は輔祭が行い、このときは立つことができるものはみな起立する。
教会によっては福音経の朗読のあとに説教が行われる(そうでない教会では信者の礼儀のなかで説教が行われることが多い)。
福音経の朗読のあと、ふたたび連祷を行い、啓蒙者のための祈願でありかつ退席を促す「啓蒙者の連祷」へと到る。
[編集] 信者の礼儀
信者の礼儀(しんじゃのれいぎ)では、聖体機密の核心が行われる。事前の奉献礼儀で準備された聖餅と葡萄酒が、聖所に運び入れられ、信者に示された後、王門(イコノスタシス中央の門)を通じて捧げられる。捧げられた聖餅と葡萄酒を司祭は記憶(アナムネーシス)し、聖神(聖霊)の降臨を願う(エピクレーシス)。聖餅と葡萄酒は、聖神のハリストスの聖体血へと聖変化し、神品も信徒も聖体血を食べる(領聖 りょうせい)。
信者の礼儀は、かつては信徒以外出席を許されず、啓蒙者は退席した。現在の正教会では啓蒙者も参列することが許されるが、祈祷文にはその名残がある。
信者の礼儀は、「信者の連祷」と呼ばれる連祷から始まる。いくつかの連祷をはさみつつ、ヘルウィムの歌、サワオフの歌、信経、聖変化、生神女讃詞(ザドストイニク)、天主経(主の祈り)、領聖準備の祝文を経て、領聖へと到る。聖変化の際には、鐘を打つ。この打鐘は病などのため参祷出来なかったもののために、この重大な刻を告げる趣旨で行われる。
領聖は神品が至聖所で行った後、聖所へ司祭らが出て、信者が行う。 領聖後、司祭はいったん至聖所へ戻る。信者は感謝の祈祷を行う。司祭はここで再び聖所へ出て、信者の先頭に立って王門に向かい、升壇外の祝文と呼ばれる、聖所での祈りを行う。司祭の祝福においてその日の聖人を記憶しつつ、司祭の祝福をもって聖体礼儀の祈祷を全体を終わる。このあと万寿詞が伴うことがある。
聖体礼儀の後は、十字架接吻を行う。またさらにそのあとに、信者は領聖感謝祈祷を行うのが普通である。
[編集] 聖歌としての聖体礼儀
正教会では祈祷は同時に歌であり、聖体礼儀では詠隊(聖歌隊)が歌う部分については事前にほぼ全文が楽譜に起こされていることが多い。
聖歌には「ビザンチン聖歌」「ズナメニ聖歌」「ヴァラーム聖歌」「ロシア聖歌」など、時代や地域を反映した複数の様式を示す通称がある。他の言語から聖歌を取り入れる際には自分達の言語で自然に言葉が聴こえるようにするため、言語によってフレーズの作法が変化しオリジナルな聖歌とは異なる場合が多い。それも多様性の豊かさであり、鷹揚に受け入れられているが、他方、オリジナルの聖歌との伝統性を具体的にどのように確保するのかといった問題意識も存在する。
著名な作曲家が作曲した聖体礼儀の聖歌としては、ボルトニャンスキー、チャイコフスキー、リムスキー=コルサコフ、ラフマニノフ、パヴェル・チェスノコフ、アレクサンドル・グレチャニノフなどが知られる。
音源では単一の作曲家の作品をまとめてリリースされることも多いが、実際の奉神礼では複数の作曲家の聖歌や作者不詳の古い起源をもつ聖歌を組み合わせて使うことが殆どである。
日本正教会で単旋律もしくは混声三部合唱で歌う際に通常用いられる「ヘルヴィムの歌」は、ウクライナのグルコウ(現ポーランド領)出身のロシア正教会の作曲家であるボルトニャンスキーによる三拍子のものを、日本語訳した際に四拍子風に編曲したものである(四部合唱版も存在するがこちらは歌われるのは稀)。
[編集] 注釈
[編集] 関連記事
[編集] 参考文献
- LITURGIA 正教会聖歌 実践と研究 研究会リトゥルギア