精神障害者保健福祉手帳
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精神障害者保健福祉手帳(せいしんしょうがいしゃほけんふくしてちょう)は、1995年(平成7年)に改正された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に規定された手帳制度。
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[編集] 概要
1995年の法改正で規定された手帳制度である。障害者自立支援法が正式に施行されることとなった2006年10月1日からは、軽度発達障害者に対しても交付される。
本制度の施行により、障害者基本法に規定された身体障害・知的障害・精神障害すべてに手帳制度が整った。
[編集] 様式
手帳の表紙には「障害者手帳」とのみ表示され、表紙を見ただけでは精神障害の手帳であることが分からない[1]ようになっている。これは被交付者のプライバシーに配慮したもので、他の障害よりも深刻とされる偏見・価値観の相違による無理解がなお強く残存する社会情勢を鑑みたものである。表紙の色は自治体により異なり、例えば東京都は水色、千葉県は濃緑色、神奈川県では濃青色である。
手帳には写真が貼付される。これは2006年(平成18年)10月1日申請分から改訂[2]されたもので、当初は既存の2制度と異なり写真の貼付は不要であった。更新義務のない身体障害者手帳と異なり2年の手帳有効期限が定められているため、写真の添付されていない旧様式の手帳は、順次写真添付の新様式に更新される。このため、当分の間、写真が添付されている手帳とされていない手帳が混在することになる。
[編集] 等級
手帳には障害の程度により、重い順に1級・2級・3級があり、手帳の等級によって受けられる福祉サービスに差がある。
- 1級:概ね「日常生活が一人では出来ず、他人の援助や介護を受けないと生活が出来ない人」
- 2級:概ね「日常生活に著しい困難があり、時に応じて他人の援助が必要な人」
- 3級:概ね「労働に著しい困難があり、社会生活に制限を受ける人」
本手帳の1級は障害基礎年金の1級に、2級は障害基礎年金の2級にほぼ比例する。3級については障害年金の3級よりも幅が広い。
[編集] 扶助・優遇・支援の内容
等級によって受けられる福祉サービスは各発行自治体によって異なるが、共通して下記の福祉サービスを受けることができる。
- 自立支援医療費給付手続きの簡素化
- 生活保護障害者加算
自治体における福祉サービスは自治体運営交通機関の運賃減免・公共施設等の利用料減免・自治体運営住宅への入居優先などがある。民間事業者にあっては、携帯電話料金・映画料金・テーマパーク利用料金などに割引制度が存在する。自治体におけるサービスは等級によって免除・割引率が違う場合もあるが、民間福祉サービスにおいては概ね等級における変化はない。
本手帳は写真を添付しないことから、民間事業者に対する本人確認手段としての効力が低く、現時点では他の障害者手帳に比べて優遇制度が少ない。優遇対象は公共の施設・制度を主としたもので、実質的な優遇内容は被交付者が居住する地域の施設・制度の整備度合いに依存する。制度の適用範囲に自治体間で相違があることから、他地域へ転居した場合など、他の自治体発行手帳では利用できないサービスも存在する。
今まで精神障害者は法定雇用率の対象とされていなかったが、障害者自立支援法施行(2006年4月1日)に伴い精神障害者保健福祉手帳所持者については法定雇用率の対象とされるようになったが、現時点では雇用義務の効力はない。この状況は障害者団体より問題提起されており、今後の法整備を含めた対応が課題となっている。