第15族元素
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周期 | |
周期 | |
2 | 7 N |
3 | 15 P |
4 | 33 As |
5 | 51 Sb |
6 | 83 Bi |
第15族元素(だいじゅうごぞくげんそ)は、周期表において第15族に属する窒素・リン・ヒ素・アンチモン・ビスマスのこと。窒素族元素、V族元素(ごぞくげんそ)、ニクトゲン元素 (pnictogen) とよばれることもある。
これらの単体は古くから知られており、ヒ素、アンチモン、ビスマスは近代以前に知られていた。リンが17世紀、窒素は18世紀の発見である。
目次 |
[編集] 性質
第15族元素は価電子に ns2np3 の5電子を持つ電子構造を有する。
窒素 7N |
リン 15P |
ヒ素 33As |
アンチモン 51Sb |
ビスマス 83Bi |
|
---|---|---|---|---|---|
電子配置 | [He]2s22p3 | [Ne]3s23p3 | [Ar]3d104s24p3 | [Kr]4d105s25p3 | [Xe]4f145d106s26p3 |
第1イオン化エネルギー (kJ·mol−1) |
1402 | 1012 | 947 | 834 | 703 |
電子付加エンタルピー (kJ·mol−1) |
- | - | - | 103.23895 | - |
電子親和力 (kJ·mol−1) |
-6.75 | 72.0 | - | - | - |
電気陰性度 (Allred-Rochow) |
3.07 | 2.06 | 2.20 | 1.82 | 1.67 |
イオン半径 (pm, M3−) |
132(4配位) | - | - | - | - |
イオン半径 (pm, M3+) |
- | 58(6配位) | 72(6配位) | 90(6配位) | 117(6配位) 131(8配位) |
イオン半径 (pm, M5+) |
27(6配位) | 31(4配位) | 48(4配位) 60(6配位) |
74(6配位) | 90(6配位) |
共有結合半径 (pm) |
75 | 106 | 119 | 138 | 146 |
van der Waals半径 (pm) |
155 | 180 | 185 | - | - |
融点 (K) |
63.14 (N2) | 44.1 | 1090 (3.6 MPa) | 903.78 | 544.4 |
沸点 (K) |
77.35 (N2) | 280 | 887(昇華) | 1860 | 1837 |
還元電位 E0 (V) | - | - | +0.25 (M3+/M) | +0.21(M3+/M) | +0.32(M3+/M) |
第15族元素単体のうち、窒素のみが常温で気体であり、ほかは固体である。また窒素とリンの価電子は混成軌道を形成し、共有結合物質として振舞う。一方、第4周期のヒ素より周期の大きい単体は、共有結合性と金属との性質を併せ持つ物性を示し「半金属」と呼ばれる。これらのヒ素、アンチモン、ビスマスは混成軌道を形成するよりは、2つの電子が占有したs軌道と、3つの1つづつ電子が存在するp軌道として振舞うので、酸化数は+3と+5が安定である。
第15族元素の一部は炎色反応を示す。
リン (リン酸イオン) |
ヒ素 | アンチモン |
---|---|---|
淡青色 | 淡青色 | 淡青色 |
第15族元素は半導体デバイスにおいて重要な役割を演じる。第14族元素の真性半導体に対して、第15族元素と第13族元素の化合物から形成される半導体をIII-V族半導体と呼ぶ。III-V族半導体のバンドギャップは可視光領域に相当するため、発光ダイオード・半導体レーザーなど光デバイスの素材として重要である。また、真性半導体に第14族元素を微量ドーピングすることでN型半導体を形成する。
[編集] 水素化物
第15族元素は一般式 MH3 で示される水素化物を形成する。いずれの水素化物も三角錐状の構造をとるが、アンモニアのみが傾向よりも高い沸点を示し、水素結合を形成する性質を有する。
[編集] 水素化物の種類
[編集] 酸化物
窒素とリンは多様な酸化状態を持つ酸化物を形成するが、酸化数が大きいほど自由エネルギーが大きく不安定であり、酸化数0の単体窒素が最も自由エネルギーが小さくて安定な為、窒素酸化物は酸化剤として利用されるものが多い。一方、リンはの酸化物はいずれも単体リンよりも自由エネルギーが小さく、酸化数が大きいものほど自由エネルギーが小さくて安定である。それゆえリンの酸化物は酸化剤としては利用されない。
一方、ヒ素、アンチモン、ビスマスは酸化数+5に比べ+3が安定化しているので、いずれも一般式 M2O3 で表される酸化物が安定である。
[編集] ハロゲン化物
第15族元素は一般式 MX3 もしくは MX5 で表されるハロゲン化物などを生成する。
窒素 | リン | ヒ素 | アンチモン | ビスマス | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
NX3 | その他 | PX3 | PX5 | その他 | AsX3 | AsX5 | SbX3 | SbX5 | BiX3 | |
フッ化物 | フッ化窒素 NF3 |
N2F4 trans-N2F2 cis-N2F2 |
三フッ化リン PF3 気体 bp 171 K |
五フッ化リン PF5 気体 bp 188.6 K |
三フッ化ヒ素 AsF3 |
五フッ化ヒ素 AsF5 |
三フッ化アンチモン SbF3 無色固体 |
五フッ化アンチモン SbF5 粘稠液体 |
三フッ化ビスマス BiF3 白色固体 |
|
塩化物 | 塩化窒素 NCl3 |
四塩化二窒素 N2Cl4 |
三塩化リン PCl3 液体 bp 349 K |
五塩化リン PCl5 固体 433 K 昇華 |
四塩化二リン P2Cl4 固体 mp 453 K |
三塩化ヒ素 AsCl3 液体 |
(存在せず) | 三塩化アンチモン SbCl3 |
五塩化アンチモン SbCl5 |
三塩化ビスマス BiCl3 白色固体 |
臭化物 | 三臭化リン PBr3 液体 bp 446 K |
五臭化リン PBr5 黄色固体 mp 373 K |
三臭化ヒ素 AsBr3 無色固体 |
(存在せず) | 三臭化アンチモン SbBr3 |
(存在せず) | 三臭化ビスマス BiBr3 黄色固体 |
|||
ヨウ化物 | ヨウ化窒素 NI3 |
三ヨウ化リン PI3 暗赤色固体 mp 334 K |
(存在せず) | 四ヨウ化二リン P2I4 橙色固体 mp 398 K |
三ヨウ化ヒ素 AsI3 赤色固体 |
(存在せず) | 三ヨウ化アンチモン SbI3 |
(存在せず) | 三ヨウ化ビスマス BiI3 黒色固体 |
リンのハロゲン化物は、有機化学においてヒドロキシ基、カルボン酸を相当するハロゲン基、酸ハロゲン化物に変換する試薬として利用される。