ヨウ化窒素
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ヨウ化窒素 | |
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IUPAC名 | トリヨードアザン |
別名 | ヨウ化窒素 三ヨウ化窒素 |
組成式 | I3N |
式量 | 394.77 g/mol |
形状 | |
結晶構造 | |
CAS登録番号 | 13444-85-4 |
密度と相 | g/cm3, |
水への溶解度 | g/100 mL ( °C) |
融点 | −20 °C(昇華) |
沸点 | °C |
出典 |
ヨウ化窒素(ヨウかちっそ、nitrogen iodide)、別名三ヨウ化窒素(さんヨウかちっそ、nitrogen triiodide)は化学式 NI3 で表される無機化合物である。衝撃に敏感で爆発を起こす。少量に軽く触れただけでも黒色火薬のような破裂音とともに爆発し、ヨウ素蒸気からなる紫色の煙を発生する。ヨウ化窒素やその誘導体は不安定なため構造を決定するのが難しく、その構造化学は複雑である。
目次 |
[編集] 分解
ヨウ化窒素の分解は以下のような反応式で表される。
- 2 NI3 (s) → N2 (g) + 3 I2 (g) ΔH = −290 kJ/mol
[編集] 構造と誘導体
暗赤色の固体である。1990年にアンモニアを用いない経路で合成され、X線結晶構造解析が行われた。窒化ホウ素とフッ化ヨウ素をトリクロロフルオロメタン中、−30°Cで反応させることによって、低収率ながら NI3 を得ている[1]。NI3 は C3v の対称性を持つ三方錐型の構造を持ち、これは他の三ハロゲン化窒素やアンモニアと同様である[2]。
一般的な合成法としてはヨウ素とアンモニアによるものが知られている。この反応を無水アンモニア中低温で行った場合、最初に生成するのは NI3•(NH3)5 である。加温するとこの化合物からアンモニアが失われて NI3•NH3 を与える。この付加物はベルナール・クールトアによって1812年に最初に報告され、その後シルベラード (Silberrad) が1905年に組成を決定した[3]。固体状態では −NI2−I−NI2−I−NI2−I··· という形の鎖状構造をなしており、アンモニア分子は鎖の間に位置する。暗所中・低温・アンモニア雰囲気下であれば NI3•NH3 は安定である。しかしながらアンモニアを取り除くと以下の反応式に示すような分解を起こす[2]。
- 8 NI3•NH3 → 5 N2 + 6 NH4I + 9 I2
NI3 や NI3•NH3 の不安定性は、発生する N2 の生成熱が大きいことによる。
[編集] 演示実験と文化
高校の化学実験の授業で少量の合成が行われることがある。ヨウ化窒素が衝撃に敏感であることを誇示するため、羽の先で触れることによって爆発を起こさせることが多いが、気流があたったり、少し動かしただけでも爆発することがある。また、ヨウ化窒素はアルファ線や中性子線にさらすことによって爆発する唯一の化合物であるとされている[4]。
NI3•NH3 が爆発するとオレンジから紫色のしみが残る。これはチオ硫酸ナトリウムの溶液で取り除くことができる。
Brainiac: Science Abuse (化学を主題としたイギリスの娯楽番組)で「ピーター・ローガンの爆発ペースト (Peter Logan's Exploding Paste)」として登場した。安全のため詳しい製法は紹介されなかった。
ロバート・A・ハインラインの小説『自由未来 (Farnham's Freehold)』では、その名祖であるヒュー・ファーナム (Hugh Farnham) がアンモニアとヨウ素から作ったヨウ化窒素を爆破薬として使用した。
[編集] 参考文献
- ^ Tornieporth-Oetting, I.; Klapötke, T. Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 1990, 29, 677–679.
- ^ a b Holleman, A. F.; Wiberg, E. Inorganic Chemistry; Academic Press: San Diego, 2001. ISBN 0-12-352651-5.
- ^ Silberrad, O. "On the Constitution of Nitrogen Triiodide." J. Chem. Soc. 1905, 87, 55–66. DOI: 10.1039/CT9058700055
- ^ Bowden, F. P. "Initiation of explosion by neutrons, α-particles, and fission products." Proc. Roy. Soc. (London) 1958, A246, 216–219.