種の起源
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種の起源(しゅのきげん、"The Origin of Species")とはチャールズ・ダーウィンにより1859年11月24日に出版された進化論についての論文である。岩波文庫版など種の起原と表記することもある。
『種の起源』の中では、「evolution」ではなく、「Descent with modification」という単語を使っている。自然選択、生存競争、適者生存などの要因によって、常に環境に適応するように種が分岐し、多様な種が生じると説明した。生物がもつ性質は、個体間に違いがあり、親から子に伝えられ、環境の収容力が繁殖力よりも小さいため生まれた子のすべてが生存・繁殖できず、性質の違いに応じて次世代に子を残す期待値に差が生じるので、有利な変異が保存され進化が起こるとした。生物の地理的分布や性淘汰についても説明した。当時は DNA や遺伝の仕組みについては知られていなかったので、変異や遺伝についてはうまく説明できなかった。また進化を進歩とは違うものだと認識し、特定の方向性がない偶然の変異による機械論的なものだとした。ダーウィンは進化の概念を多くの観察例や実験による傍証などの実証的成果によって、進化論を仮説の段階から理論にまで高めたのである。
ダーウィンは、進化は漸進的に起こり不連続性や大きな飛躍はないという考えを唱えたが、その後遺伝の機構が明らかになると、突然変異といった不連続性が進化に大きく寄与していることが明らかになってきた。また、ダーウィンは、自然淘汰が進化の主要な原動力であるしたが、これに関しては統一的な見解が得られていない。総合説に代表される「ネオダーウィニズム」では自然淘汰を重視しているが、木村資生の中立説などの分子進化論では突然変異を起こした遺伝子が集団内に広がることが進化の原動力になるとしている。
[編集] 日本の翻訳
1896年に立花銑三郎により『生物始源』という題で翻訳された。1905年に、東京開成館が『種の起原』と題して出版。1915年に大杉栄による翻訳本『種の起原』もだされた。
現在最も入手が容易な翻訳は、岩波文庫版『種の起原』(八杉龍一訳)である。