私本太平記
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『私本太平記』(しほんたいへいき)は、吉川英治の歴史小説。1958年(昭和33年)1月から『毎日新聞』に連載。『新・平家物語』に続く吉川英治晩年(1962年死去)の長編。単行本は毎日新聞社刊。
1991年(平成3年)放送のNHK大河ドラマ『太平記』の原作となった。
[編集] 内容
室町時代に成立し、鎌倉幕府滅亡から南北朝時代を描く軍記物語で、近世以降の文学にも影響を与えた『太平記』が題材。
明治体制では天皇に背いた大悪人とされた足利尊氏(高氏)、南朝の大忠臣として美化されていた楠木正成など、イデオロギー的に語られ、戦後は一種のタブーであった日本の南北朝時代を、尊氏を主役に新たな解釈を加えて描く。楠木正成も温厚な苦悩の人として描かれ、戦前の忠臣のイメージを大きく変えている。また、ヒロインに藤夜叉を登場させ、乱世に生きた女性の悲劇を背負わせている。
尊氏の若き日から鎌倉幕府の倒壊、建武の新政から南北朝の分立を経て湊川の戦いがクライマックスとなる。尊氏・直義兄弟の確執などを描く終章はやや急ぎ足の展開となるが、これは最期の病床で執筆した故であり、この作品が遺作となった。