神主打法
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神主打法(かんぬしだほう)とは、野球における打撃フォームの一つ。構えが、神主がお祓いをする様子に似ていることからこう呼ばれる。
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[編集] 解説
選手によって構え方は少しずつ異なるが、スタンスは投手に対して平行に取り、バットを横に構える動作が神主打法と呼ばれる構えの根幹を構成する。八重樫幸雄(元ヤクルト)のようにスタンスを投手に対して正対する構えの場合は、神主打法とは呼ばれない。長打が期待できる構えであるため、歴代の使い手にはいわゆるホームランバッターが多い。
コーチ陣から使うことを推奨されないため、若いうちからこの打法を練習した選手(落合博満を始め、小笠原道大や江藤智など)、や身体的な制約があってテークバックが大きく取れない選手(香川伸行)、この打法を使っていたコーチ、先輩から特に勧められた選手(前述の落合から伝授された上田佳範、ゲーリー・レーシッチ)等にしか使用例は無く、数ある打撃フォームの中では比較的少数派にあたる。
この打法の利点は、スイングの直前まで全身をリラックスさせた状態を保つことが可能な点とされる。これは脱力した状態から瞬間的に全身の筋肉を動かすことで、より大きな瞬発力を発揮するという理論に基づく。同様の理論はゴルフやボクシングなど様々なジャンルのスポーツで導入されており、近代スポーツにおける基礎の一つといえるだろう。筋力を技術で補うという面では、外国人選手と比べた場合どうしても体格が劣る日本人に適した打法である。
しかしより多くの長打が望める反面、バットコントロールが非常に難しく三振率が高い選手も多い。またフォームの構造上、タイミングの見極めにもこの打法独特の熟練が必要とされる。この点ではタイミングを重視したフォームとされる一本足打法とは異なり、より遠くへ打球を飛ばすことに主眼を置いた特化型の打法といえる。
また、この打法について落合は「フォームの基礎を崩してしまうから野球少年達はマネをしない様に」と釘を刺しているが、一本足打法や振り子打法にもしばしば同様の指摘がなされている。いずれにせよ、習得には相当の鍛錬と多くのリスクを要求される高等技術であるため、技術的に未熟な者が安易に取り入れるべき打法ではない。
[編集] 主な神主打法の選手
[編集] 引退選手
- ※彼の打法から「神主打法」という名前が定着する。
[編集] 現役選手
- 金子洋平(日本ハム)
- 江藤智(広島→巨人→西武)
- 里崎智也(ロッテ)
- 清原和博(西武→巨人→オリックス)
- 中村紀洋(近鉄→ドジャース→オリックス→中日)
- 谷佳知(オリックス→巨人)
- 上田佳範(日本ハム→中日)
- 小笠原道大(日本ハム→巨人)
- 石井琢朗(横浜)
- 平田良介(中日)
[編集] エピソード
- 落合博満の神主打法は他の使い手と比べても異彩を放つ独特の構えで有名だが、これはプロ入り間もない頃に松沼博久から徹底したインハイ(内角高め)攻めを受け続けたことで改良を重ねたものである。松沼曰く「最初のうち落合はインハイが全く打てず、ある時を境に苦手なはずのインハイばかり狙って振ってきた。そのうちインコースが投げ難い構え(神主打法)を編み出し、インハイを完璧にカットする技術を身に付けていた」とのこと。