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漫画原稿を守る会 - Wikipedia

漫画原稿を守る会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

漫画原稿を守る会まんがげんこうをまもるかい)は漫画原稿の所有権が作者(漫画家)本人にあることを、漫画家・出版社古書店等に周知するために作られた日本の集会。原稿紛失等の事故を無くすため、原稿の受け取り・返却時のチェックの強化などの提言を行った。会長は漫画家の弘兼憲史

倒産した出版社(さくら出版)からの原稿流出事件被害者の会としての性格が強く、所有権の周知よりも流出原稿の回収および被害者救済に力が入れられた。

目次

[編集] 概要

[編集] 設立までの経緯

2003年5月30日、主にレディースコミック誌で活動している漫画家、渡辺やよいの原稿がインターネットオークションに出品されているとの情報がファンから渡辺に寄せられた。渡辺はオークション主催者に対して出品取り消しを要請したが拒否されたため、やむなく自分で原稿を落札する羽目になった。その後出品者が漫画古書店(以下、古書店)で入手したとの情報を得る。出品者からは渡辺に原稿がさくら出版の封筒ごと引き渡された。渡辺は古書店に対し販売停止を要請したが、盗品でないとの確証がもてないことを理由に拒否される。結局渡辺は古書店から自分の原稿を買い戻し、弘兼憲史らの原稿も販売されていることを確認した。

古書店からの情報により、原稿を保管していたさくら出版が2002年に倒産していた事実が発覚。さくら出版は原稿料・印税未払いのまま古書店に漫画原稿を売却、古書店側はその事実を知りながら販売を続けていたとみられる。その後、出版社が復刻版を出版するという名目で大量の原稿を集め、売却していたことなども判明した。古書店側は「原稿の買い取り」の形で漫画家側に解決を求めたが、原稿を売却された漫画家が多数にのぼることから、被害にあった漫画家を中心として「漫画原稿を守る会」が立ち上げられた。

[編集] 設立後からの経緯

7月から9月にかけて、活動が新聞・雑誌等で取り上げられる。出版社に対し、被害者3名を原告とした原稿返却訴訟が起こされる。原告勝訴で結審したが、被告側は一度も裁判に出席しなかった。

10月21日、出版社の元社長が保管していた分の原稿が、漫画家大島やすいち(会世話人)に返却される。原稿総数21,327ページ(作者196名)。

12月、弘兼憲史分の原稿を古書店側が無償返還に応じる。

2004年5月9日、世話人の辞任に伴い自然消滅に近い形で解散。原稿返却作業は継続。建前上は自然解散との事だが、実情は渡辺が一連の顛末をまとめて「走る!漫画家〜漫画原稿流出事件」(ISBN 4924718599)として出版する際に、この事件に関わる複数の漫画家の了解を取らなかった為、内部分裂を起こしたことが原因。特に会の協力者であった漫画家の井出との不仲で泥仕合の様相を呈して、渡辺が会長を降り、次に会長候補が居なかった為に解散となった。ネット社会にも訴訟にも素人の集団であり、統括する専門家が不在であったが為の結末である。

8月27日、渡辺が古書店に対して起こしていた損害賠償請求訴訟が結審。古書店は所有権の確認を怠っていたとして渡辺が勝訴。

10月に古書店側が控訴。

2005年、渡辺の主張を認める形で結審。渡辺は当初、被害総額1000万円からの訴訟を起こしていたものの、実際に裁判所が認定した原稿に対する金額は20万円以下であった。原稿に対する価値を争う部分を考えれば、「勝訴」とは言いがたい判決であった。また、これは民事裁判の形で争われたが、当初原告である渡辺は、古書店側を相手取り「刑事事件」として訴えたいとの希望が強かったが、警察に被害届けを受理されない以上、無理な話であった。また、常識的な話だが、この場合は古書店に対してではなく原稿を売却した出版社に対して起こすべき訴訟であり、この部分では多くの人から疑問の声がでた。

[編集] 原稿流出に関する問題点

  • 漫画原稿の取り扱いについて、統一したルールがない。慣例的に連載(単行本化)終了時に出版社から漫画家に返却されているが、取り扱いについて明文化されていない。他社から復刻版を出版するため、原稿の返却を要請して初めて紛失が発覚することもあり、被害が表面化しにくい。
  • 現在、漫画原稿が財産とみなされていないため、盗難にあった場合でも警察が被害届を受理しない。だが、漫画原稿を財産とみなした場合、それを所有する漫画家に遺産相続の際に多額の税金(相続税など)が課せられてしまう。
  • 古物商でもある古書店は買い取った品物が盗品(贓物)と判明した場合は無条件に本来の持ち主(この場合、作家であるか微妙である。買い取ったと言う出版社の言を信じれば、所有者は出版社となる)に返却する義務を古物商関係の法律により規定されていた。だが、今回の事件は、法律上盗品である事の立証がなされていなかった為、古書店側は言を左右にして応じようとはしなかった。また、発起人の渡辺の「盗難被害届け」は警視庁北沢署に受け付けてもらえなかった為、盗難品としての扱いが不可能であった事も事実である。古書店側は、盗品である為の立証として「被害届け」が受理されれば返還に応じると回答していた。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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