減圧症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。免責事項もお読みください。 |
減圧症(げんあつしょう)は、身体の組織や体液に溶けていた気体が、環境圧の低下により体内で気化して気泡を発生し、血管を閉塞して発生する障害の事である。潜水症(病)、潜函症(病) あるいは ケーソン病 とも呼ばれる。
目次 |
[編集] 概要
酸素や二酸化炭素は、呼吸により速やかに排泄されるので減圧症を発生させることはほとんどない。通常問題になるのは窒素であるが、大深度潜水に用いられるヘリウムやアルゴンが原因になることもある。
スクーバダイビングやケーソン工事などにより高圧環境下で体内に溶け込んでいた窒素が、急浮上などにより急速に周囲の圧力が低下することにより気泡化するケースが典型的である。
与圧された旅客機において何らかの原因で急減圧が生じたときや、戦闘機で急速上昇を行った場合、宇宙服で宇宙空間に出た場合など、通常の気圧から急激に気圧が下がった場合にも減圧症になる場合がある。
[編集] 症状
急性症状としては関節痛(ベンズともいう)が典型的である。重症例では呼吸器系の障害(息切れ・胸の痛み)やチアノーゼが見られる場合もある。 生涯にわたる神経系の損傷等、重篤な後遺症を招くケースも少なくない。
ごく軽い減圧症では、ごく微細な毛細血管のみが閉塞し、これらの急性症状が見られない場合もあるが、この程度の減圧症でも長期的には骨の組織壊死を招く場合がある。
[編集] 治療
高圧酸素療法が行われる。自然治癒はしないものと考えた方が良い。発症後できる限り早い時期に治療を開始することで、後遺症を最小限に留めることができる。緊急的には、再度潜水して気泡を縮小させ症状を軽快させる(フカシと言う)ことも行われないわけではないが、一般には推奨されない。
救急処置として(常圧の)純酸素を呼吸させることで、血管の閉塞に起因する低酸素状態から発生する障害や後遺症のリスクを緩和することができるのでその実施が強く推奨される。
尚、専門的な治療を行う医療機関として著名なところでは、国内最大級の高気圧治療装置(チャンバー)を備える国立大学法人東京医科歯科大学があり、専門医としては、ご自身もダイビングインストラクターであり、関係論文などを多数発表している山見信夫医師がいる。
[編集] 予防
減圧症は環境圧の急激な変化で発生するため、少しずつ圧力に体を慣らす事で防ぐことができる。戦闘機搭乗や宇宙遊泳などの場合には、減圧症を発生させにくい純酸素を呼吸して予防することもできる。
特殊な環境下でなければ減圧症にならないので、スクーバダイビングなどをする場合にのみ注意すればよい。
なお、潜水直後の飲酒は減圧症を招きやすく危険である。