泣き女
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
泣き女(哭き女、なきおんな)または泣女(なきめ)とは、中国や朝鮮半島をはじめとして世界各地で散見される伝統的な職業の女性である。台湾においては、中国国民党統治を受けた時に伝わった。ヨーロッパなどにも存在した。
主に、葬儀の時に、遺族(家族や親族)の代わりに、「悲しい」「辛い」「寂しい」等を表現する為に大々的(大げさ)に泣きじゃくる事を以って生業とする。また悪霊ばらいや魂呼ばいとしての性格も併せ持つとされる。
イギリスでは、バンシーという妖精の化身という形が取られている。身分の高い人物の死になると現れると言うことで、葬儀の際に集まってもらうという事はその人物の「名誉」の証ともなっていた。ロマ人の職の1つとも言われるが、古くは旧約聖書にもその存在が記されており、古代エジプト時代の壁画にも描かれている。
日本においては、神話の中でも、妻のイザナミを亡くしたイザナギの涙から泣沢女神(なきさわめのかみ)という女神が化成している。水神とされているが、神名より古代から泣き女の習慣があったものと推測されている。『魏志倭人伝』には死者が出ると、肉を食べず、喪主は哭泣するが、他の人は歌舞飲酒を行った(當時不食肉、喪主哭泣、他人就歌舞飲酒)とある。やがてこの習慣は時代とともに徐々に廃れていったが、近年までは地方で行われていたとされる。地域によっては、泣き女を「ナキテ」「ナキビト」「ナキババ」「ナキバアサン」「トムライババ」などと呼んだ。また、その謝礼の米の量に応じて泣き方などを変えたとされる「五合泣き」「○升泣き」(「一升泣き」や「ニ升泣き」など)といった言葉がある。