法定伝染病
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法定伝染病(ほうていでんせんびょう)とは獣医学分野における家畜伝染病予防法に定められた家畜伝染病のこと。
家畜伝染病予防法、同施行令および同施行規則では、獣医師や畜主が発見した場合に家畜保健衛生所に届け出なければならない疾病を、疾病ごとに対象となる家畜の種類を定め、監視伝染病として規定している。このうち、家畜の伝染性疾病が拡大することによる畜主の被害を抑えるだけでなく、家畜の生産物やそれらの製品への影響など社会全体への影響も最小限にするため、発生地域の交通遮断、当該家畜のと殺義務、殺処分命令、死体の焼却等の義務、畜舎の消毒義務、などの強制力を持った強力な措置をとるべき26の疾病を家畜伝染病として指定している。これを法定伝染病という。
家畜伝染病以外の監視伝染病は届出伝染病として71疾病が定められている。
家畜伝染病予防法に定められている法定伝染病(家畜伝染病)は以下の26疾病。対象となる家畜の種類等は各疾病の項を参照のこと。
- 牛疫
- 牛肺疫
- 口蹄疫
- 流行性脳炎
- 狂犬病
- 水胞性口炎
- リフトバレー熱
- 炭疽
- 出血性敗血症
- ブルセラ病
- 結核病
- ヨーネ病
- ピロプラズマ病
- アナプラズマ病
- 伝達性海綿状脳症
- 鼻疽
- 馬伝染性貧血
- アフリカ馬疫
- 豚コレラ
- アフリカ豚コレラ
- 豚水胞病
- 家きんコレラ
- 高病原性鳥インフルエンザ
- ニューカッスル病
- 家きんサルモネラ感染症
- 腐蛆病
かつては、法定伝染病は医学分野における伝染病予防法に定められていた疾病も指していたが、伝染病予防法は1998年に廃止され、新たに「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)が制定されたため、現在は法定伝染病といえば家畜伝染病予防法に定められた家畜伝染病を指す。
保険業界ではかつての法定伝染病に対応する語として、感染症法で定められている一類・二類の感染症を特定感染症と呼んでいるが、この語は文脈によって内容が異なるので注意を要する。
伝染病予防法における法定伝染病では、発病・発症すればすぐ関係機関に届け出て、感染者は隔離病棟収容などの手続きが行われていた。
伝染病予防法に定められていた法定伝染病は以下の11。カッコ内に現行の感染症法における類別を示す。
- コレラ (三類)
- 赤痢 (細菌性赤痢:三類)
- 腸チフス (三類)
- パラチフス (三類)
- 痘瘡 (一類)
- 発疹チフス (四類)
- 猩紅熱 (なし)
- ジフテリア (二類)
- 流行性脳脊髄膜炎 (五類)
- ペスト (一類)
- 日本脳炎 (四類)
ほかに厚生大臣により同等の取り扱いを指定された指定伝染病が3つあった。
[編集] 関連項目
- 届出伝染病