東京大学大学院情報学環教育部
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
東京大学大学院情報学環教育部(とうきょうだいがくだいがくいんじょうほうがっかんきょういくぶ)は、東京大学大学院情報学環に併設されている独立教育機関。
目次 |
[編集] 概要
1949年に設立された旧・東京大学新聞研究所(1992年より社会情報研究所、2004年に大学院情報学環に統合)教育部を前身とし、ジャーナリスト志望者や、社会情報、マスコミ、ジャーナリズム、学際情報の分野に関心をもつ学生を対象にした専門教育を実施している。同じく情報学環に併設される教育組織である学際情報学府のような修士課程や博士課程はなく、在籍するのは毎年2月に実施する入試で合格した教育部研究生のみである。在籍者は全員が「教育部特別研究生」という一般の研究生と異なる特殊な位置づけで、研究生が正規生という珍しい教育機関である。2年間の専門教育課程を修了しても修士号の取得ができないため、事実上「東京大学が運営する唯一の専門学校」となっている。放送局や新聞社、通信社、大手広告代理店などで活躍しているOBが多く、マスコミ界との太い人脈がある。
[編集] 教育部研究生の特徴
東京大学大学院情報学環教育部研究生は特殊な研究生制度である。その特徴は以下の通りである。
- 定員は1学年50人。情報学環教育部には修士・博士課程を置いていないため、在籍者全員が特別研究生である。研究生が正規学生というのは珍しい制度である。なお、情報学環教育部では、一般の研究生や科目等履修生などの入学・在籍は認められていない。
- 毎年2月に筆記(一次試験)・面接(二次試験)による入試を実施している[1]。東大生以外の大学生や大学院生、大卒以上の社会人も受験できる。東大生を対象にした内部推薦制度や社会人特別選考枠などの優遇措置はなく、すべての入学志望者は同じ試験に合格しなくてはならない。競争率は2~3倍程度だが、現役の東大生ですら多数の不合格者が出る。文系としては大学院修士課程以上の超難関である。
- 学部学生の入学[2]および同時履修を認めている。現在、研究生の約7割を東京大学の学部学生が占め、残りは大学院生や他大学の学部学生、社会人である。他大では早大が最も多い(学部は政経、商、人間科学など多様)。慶大も多い。
- 研究生を対象にした専門カリキュラムを履修する[3]。
- 修業年限は2年間で、所定の単位を修得した者には修了証書が与えられる(一般の研究生には修業年限や修了制度がない)。ただ、学部・大学院の授業や就職活動との両立が難しいため、修了者は少ない。教育部の修了率は、東京大学大学院の正規課程である情報学環修士課程を下回る狭き門だ。
- 東大生は無料で受験および受講が可能だが、他大学の在籍者や社会人は受験料のほか、入学金・授業料などの学費(2007年度で初年度31万4,600円)がかかる。他大学籍の研究生からは「入学金や授業料が高すぎる」との不満も出ている。
- 一般の大学生も学部に籍を置きながら履修できるのに加え、大手メディアへの就職率が高く、図書館利用やデータベースサービスなどで大学院生と同等の情報サービスを受けられるといった特典もあるため、学部学生からの人気は高い。
- 教育部研究生だけで組織する自治会がある。講義や研究生合宿のサポートをする互助組織で、政治色はない。
[編集] 授業科目
情報学環教育部では、社会情報学基礎、文化人間情報学基礎、学際理数情報学基礎、実践マス・メディア論、実践情報社会論、特別演習、特別講義、自主学習(研究生合宿)などの科目が開講されている。
実践マス・メディア論では、新聞論、出版論、放送論、広告論、実践情報社会論ではIT産業論、ソフトウェア産業論、情報社会研究といった授業がある。
これらの授業は、学部・大学院の講義との同時履修を考慮して、午後3時15分~8時35分の時間帯で開講されている。
[編集] 講師
姜尚中、吉見俊哉、北田暁大、林香里ら情報学環の教授・准教授のほか、池谷薫、谷川茂ら、ジャーナリストやテレビ、映画、出版関係者、広告代理店クリエーター、映像・放送技術者といった外部講師による授業もある。