新風舎
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株式会社新風舎(かぶしきがいしゃしんぷうしゃ)は、自費出版、共同出版を中心に行っていた日本の出版社である。既に、企業活動は停止している。
2007年後半から経営が悪化し、2008年1月7日、東京地方裁判所に民事再生手続開始の申立てをしたが、手続廃止され破産手続へと移行した。出版代金を前払いしたものの、出版されていない著者は約1100人に上るといわれる。
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[編集] 概要
松崎義行(ペンネーム=マツザキヨシユキ、新風舎社長のほか「詩人」という肩書きも使っていた)が東京都国分寺市にて1994年創業。2000年に東京都南青山に移転。2008年破産。株式会社創立より破産確定まで、一貫して非上場。
関連会社に新風ホールディングスがある。社名のネーミングに特徴があるが、同社は有限会社なので、持株会社ではないとみられる。事業目的は不明。
出版原稿の持ち込みを受け付ける数少ない出版社として設立後1996年に、賞金付きの「新風舎出版賞」を創設し、出版賞の応募者(落選者)を対象とした営業活動を行って以降、批判が増えた。 [1]。
「共同出版」という名称は、自費出版に増刷時の特約条項が付いた亜種的なしくみで、出版契約の形態を表す。共同出版という名前の子会社・関連会社はない。
これらの共同出版の盛行により飛躍的に出版点数が伸び、2005年には出版点数で業界一位となるなど多数の書籍を発行するようになっていたが、それと同時に、下記の通り著者とのトラブルも増加した。複数の悪徳商法関連の書籍やインターネットサイト等でも「悪徳商法の疑いがある」と言及されている。
2008年1月7日、東京地方裁判所に民事再生を申請した。信用調査会社である帝国データバンクによれば、負債額は約20億円、関連会社である新風ホールディングスを含めると約25億円。
しかしながら1月18日、東京地裁は新風舎が申請していた民事再生手続を廃止することを決定した。再建支援を表明していた企業(印刷会社2社)が、新風舎の経営サイドとの姿勢の食い違いから支援を断念したためである。このため新風舎については破産手続が開始する予定で、新風舎は消滅することとなった。現在出版契約を交わしている約1100人については破産手続の開始により、新風舎が出版を行うことは不可能となった。出版のためのデータなどは事業を引き継いだ文芸社に引き継がれたが、料金などは再度個別に提示されるとしている。
新風舎は、自費出版に限れば同業他社に比べて大手ではあったが、出版社全体の中では、必ずしも大手企業とは呼べるものではない。 新風舎1社が破産しても、商業出版全体および一般社会経済に与える影響は軽微であり(但し、当事者の著者・外注取引先などにとっては大きな問題である。また社名の似ていた新風書房については風評被害を受ける結果となった)、また、実際に書店に流通した書籍が著しく少ないのであれば、書店の経営に与える影響もなく、1万5000点という刊行書が読者に影響を与えた可能性も少ない。
[編集] 新風舎の有名絵本作家と代表作
- うしろにいるのだあれ:ふくだとしお
- まさかさかさま:伊藤文人
[編集] 新風舎からの主な増刷本
- 絵本、児童書等
- うしろにいるのだあれ(ふくだとしお)- 59刷を数える
- まさかさかさま(伊藤文人)
- 小説
- 小説円谷英二(上・下)
- るにんせん
- 小説地下銀行(車田康明)
- 実用書、ルポ、ビジネス
- スバル360奇跡のプロジェクト(小口芳門)
- 社労士独立開業成功のツボ!!(楠井祐次)
- J・F・K ダブルステイツ(三浦二三男)
- 本は読むより書く方が10倍楽しい(井狩春男)
- 1988年「10.19」の真実(佐野正幸)
- 報道されなかったイラクと人びと(大村正樹・文、渡部陽一・撮影)
- 詩集
- ナノテクノロジーなの。恋の魔法なの(マツザキヨシユキ・2005年2月刊行/マツザキ=松崎・新風舎社長である)
- エッセー
- そしてママはスチュワーデスになった(田中薫)
- 新風舎文庫
- ちーちゃんは悠久の向こう(日日日)第4回新風舎文庫大賞受賞作
- 名優・滝沢修と激動昭和(滝沢荘一)
- モラル・ハラスメント ―普通の結婚生活がわからなかった―(北風めい)
- 謀殺 下山事件(矢田喜美雄) - 講談社版の採録
[編集] トラブル
- 著者に共同出版を持ちかけ通常以上の出版費用を出させているのではないかという疑義を藤原新也[2]が提起した。同氏は、同形態の流通出版(旧称協力出版)を手がける文芸社への疑義も提起している。また、有田芳生[3]は書き手の夢を食い物にする希望商法であると感想を述べているが、論拠を明らかにはしていない。江川紹子[4]は新風舎から5冊もの著書を出版している関係で、擁護している立場である。
- 2007年7月4日、元大学教授ら3人が全国約800の書店で販売すると勧誘されて新風舎と出版契約を結んだが、実際は一部の書店(原告のひとりの場合にはわずか3店)でしか販売されなかったとして、約736万円の損害賠償を請求する民事訴訟を東京地方裁判所に提起した[5][6]。
[編集] 出版権に関する問題
著者と新風舎の間の契約に基き新風舎は契約の日から初版発行日の3年後までその著作物の出版権を専有するが、期間満了の3ヵ月前までにどちらかが文書をもって契約の終了を通知しない限り、契約の有効期限を1ヵ年ずつ延長する事になっている。ただし、この延長自体に関しては金銭契約は全く存在しない。
これは著者側が契約の終了を能動的に通知しない限り、どんなにその著作物が売れなくても(もしくは売る気がなくても)新風舎がその出版権を無償で保持し続けるという事であり、著者側にはほとんどメリットが存在しないという意味になる。