摂津 (標的艦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

摂津（せっつ）は、日本海軍の戦艦。河内型戦艦の2番艦である。後に標的艦となった。駆逐艦「矢風」と共に行動する無人艦というのが一般的に知られている。

目次 1 概要 1.1 「戦艦」摂津 1.2 「標的艦」摂津 1.2.1 原理 2 条約失効後 2.1 その後 3 関連項目

[編集] 概要

[編集] 「戦艦」摂津

1909年1月18日起工。1911年3月30日に進水、1912年7月1日に竣工した。建造は呉工廠。

本艦は、30センチ砲連装6基12門と砲力は強力に見える。しかし、実際は主砲を亀甲型に配置したため、右、又は左舷に砲を撃つとき反対舷の砲が使用できず、そのうえ前後の砲2基が50口径、中央舷側の4基が45口径と射撃指揮に問題がでるものであった（東郷平八郎が「前後の砲はより強化すべし」と言ってそのようにさせたという）。

第一次世界大戦に参加後1923年10月1日ワシントン海軍軍縮条約により、戦艦「陸奥」を保有する代わりに摂津は標的艦となり、主砲や装甲など戦闘艦としての装備を全廃された。なお、12センチ砲1門が福岡県の香椎宮に寄贈され、いまなお保存されている。

[編集] 「標的艦」摂津

標的艦となったが、最初の本艦は標的となる目標を曳航するのが任務でありまだ無人艦ではない。その後、予備艦となり呉軍港に係留される。

1923年ドイツが軍艦を無線操縦する技術を開発したと伝えられると、海軍もそれを研究。

1928年、試作機完成。実験の上摂津に搭載することとなる。なお摂津及び「矢風」を初めとする標的艦やそれに従事する艦には、煙突部分に算盤玉のようなキャップが付いている。砲弾や爆弾がここから進入、機関を破壊するのを防止するため装甲化された覆いが装備され、排煙は覆いとの隙間から出るようになっている。

[編集] 原理

各電信によって稼働するスイッチを持ち、発信する電波を、800・930・1100・1300ヘルツの4種類（それぞれ、W・X・Y・Zという符号が付いている）とし、その内の3種を組み合わせることで（たとえば、ZWWと発信すれば右10度変針、YXZで前進14ノットなど）最大64通りの動きをおこなわせている（実際には37通り）。

ただし本艦の操縦は全て無人というわけではなく、艦船による砲撃訓練時のみが無人で、現地までは艦橋にて操艦する。到着すると僚艦である駆逐艦矢風に全員移動しそこからコントロールされる。航空機の爆撃訓練及び入出港は乗員がそのまま乗り込み操艦する。

[編集] 条約失効後

ワシントン軍縮条約失効後、重巡クラスの砲撃訓練及び航空機の雷・爆撃訓練に使用可能なように装甲、ボイラーが強化された。この強化の結果、安全距離以内に近づいて艦船の砲撃や爆撃訓練を行う者もいた。この改装で特に航空機部隊の練度や艦長の操艦技術向上に繋がり、大戦初期の戦果向上の一助となる。（摂津艦長時代に航空攻撃回避術を研究、後の捷一号作戦で第四航空戦隊司令官として、激しい米軍機の攻撃から指揮下の「日向」「伊勢」を無事生還させた松田千秋が特に有名）

[編集] その後

開戦後も（任務の性格から当然ではあるが）特に日本から離れることはなく呉を母港として過ごしたが、1945年7月24日アメリカ軍機の空襲を受け大破着底、そのまま終戦を迎える。

1945年11月20日除籍。金剛型を除き満足に活躍しなかった本艦以降の戦艦からすると、標的艦となったとはいえ摂津の艦歴は海軍にとって有効だったといえる。

[編集] 関連項目

• 大日本帝国海軍艦艇一覧

表・話・編・歴 大日本帝国海軍の戦艦・巡洋戦艦
富士型	富士 | 八島
敷島型	敷島 | 朝日 | 初瀬 | 三笠
香取型	香取 | 鹿島
薩摩型	薩摩 | 安芸
筑波型	筑波 | 生駒
鞍馬型	鞍馬 | 伊吹
河内型	河内 | 摂津
金剛型	金剛 | 比叡 | 榛名 | 霧島
扶桑型	扶桑 | 山城
伊勢型	伊勢 | 日向
長門型	長門 | 陸奥
大和型	大和 | 武蔵
戦利艦	鎮遠 | 石見 | 肥前 | 丹後 | 壱岐 | 周防 | 相模 | トゥルグット･レイス | ナッソー | オルデンブルク

大日本帝国海軍の標的艦

攝津 - 矢風 - 波勝 - 大浜 - （大指） ■テンプレート／■ノート