戦術核兵器
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戦術核兵器(せんじゅつかくへいき)とは、戦場単位で通常兵器の延長線上での使用を想定した核兵器である。戦略核兵器や、戦域核兵器(中距離核兵器)に対して射程距離が短い。米ソ間の核軍縮協定などでは射程距離500km以下のものが戦術核兵器であると定義されている。
この分類は運用方法によるもので、必ずしも核弾頭の威力の大小とは一致しない。また、この定義も米ソ冷戦時代のものであり、冷戦の終結と核拡散によって定義は曖昧になりつつある。
戦術核兵器には空対地・地対空・地対空・地対地(SRBM)のミサイル及ロケット弾、航空機搭載の核爆弾、核砲弾、核地雷、核魚雷、核爆雷などの種類がある。
[編集] 歴史
第二次世界大戦後、ソビエト連邦は特にヨーロッパ正面において通常戦力で圧倒的な数的優位に立っていた。アメリカ合衆国は自らが優位にある核兵器による報復でソ連の侵攻を抑止する戦略を持っていた。しかしソ連の核武装強化により戦略核兵器の使用は即全面核戦争となりお互いの破滅につながることになった。
米国は核によってソ連の通常戦力による侵攻の抑止という効果が期待できなくなった。また、二大国の直接対決は避けられたものの、朝鮮戦争のような小国同士の戦争に対しては抑止力とならなかった。危機感を持った米国は核兵器の小型化を進める。全面核戦争のような大規模戦争から、朝鮮戦争のような小規模戦争まで様々な規模の戦争で使える核兵器を開発することで、戦争を抑止し、ソ連を封じ込める戦略を立てた。また、ソ連も米国に対抗するために戦術核兵器の開発を進めた。
米国のこの戦略は成功しなかった。米国の戦術核兵器及び戦域核兵器の使用に対して、ソ連が戦略核兵器で報復する可能性が排除できなかったからである。結果的に、米ソ双方は核兵器による相互確証破壊戦略をとることになった。戦術核兵器は今日まで実戦で使われることは無かったが、通常兵器による小規模な戦争も無くならなかった。
ソ連崩壊による冷戦終結後、米国は一方的にヨーロッパにおける地上発射式の戦術核兵器を撤廃すると宣言した。これは旧ソ連が持っている戦術核兵器の流出防止が主たる目的であった。
[編集] 関連項目
- 戦略核兵器
- 核兵器
- デイビー・クロケット
- ブルーピーコック
- 特殊核爆破資材(SADM) - アメリカの個人携行式超小型戦術核爆弾。