憲法草案要綱
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憲法草案要綱(けんぽうそうあんようこう)は、1945年12月26日に憲法研究会が民間の立場から発表した憲法草案。同会の中で私案が複数出され、それを鈴木安蔵がまとめる形で3案まで作られた。全58条。
[編集] 内容
天皇について「国家的儀礼ヲ司ル」として天皇制を存続させる一方で、主権について「統治権ハ国民ヨリ発ス」として、主権在民の原則を採った。基本的人権については、人権について法律の留保などの条件をつけずに、表現の自由、法の下の平等が認められているほか、労働権、生存権、休息権、老齢福祉人格権など社会保障に手厚い人権保障が認められている。国会については二院制を採用しており、全国1区による大選挙区制による一院と職能代表による二院とで構成する形を取っており、内閣は議会に対して責任を負う議院内閣制を採用している。司法権については大審院院長、行政裁判所長、検事総長を公選とし、冤罪に対する刑事補償規定がある。また、この憲法公布後10年以内に国民投票による新憲法の制定を行うことが規定されており、憲法の位置づけを暫定的なものとしている。
現在の日本国憲法の内容に非常に近い物であり、GHQ案のモデルと言われる。また、この案が植木枝盛の私議憲法など自由民権運動や大正デモクラシーでの議論の影響を受けたものであり、更にGHQ案に与えた影響を重視し、押し付け憲法論の無効性を主張する論もある。