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平仄 - Wikipedia

平仄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

音韻学
字音構造
声母 + 韻母 / 声調
韻母 (介音+韻腹+韻尾)
韻 (韻腹+韻尾/声調)
韻摂 (韻腹+韻尾)
声母: 五音 清濁 三十六字母
介音: 等呼 四呼
韻腹: 内外転 十六摂
韻尾: 陰声韻・陽声韻入声韻
声調: 四声八調 平仄 舒促
上古音
- 詩経音系 -
中古音
- 切韻音系 -
広韻 平水韻 韻鏡
日本漢字音: 呉音 漢音
朝鮮漢字音
近古音
- 中原音韻音系 -
日本漢字音: 唐音
表音法
直音 反切 韻書 韻図
注音符号 ピンイン

平仄(ひょうそく、中国語 píngzè)とは、中国語における漢字音を、中古音の調類(声調による類別)にしたがって大きく二種類に分けたもの。漢詩で重視される発音上のルール。平は平声、仄は上声去声入声である。

[編集] 特徴

とは「傾いた」という意味であり、上・去・入声を一括して仄声とし平声と対立させた。なぜ上・去・入声を一括したかについては諸説あるが、民国の周法高は論文「説平仄」(1948年)において7世紀までの梵字と漢字の対音資料をもとに平声は音節の長さが比較的長く、仄声は比較的短かったためと結論づけている。漢詩においては平声字と仄声字を交互に置くことによってリズムや音の調和を作り出した。

日本では一般に「平仄を整える」と言う使われ方をし、この場合はほぼ「てにをはを整える」の意味である。このほか「平仄する」という使われ方もするが、この場合の意味は「矛盾点を訂正する」程度の意味である。「平仄」にはつじつまとか条理という意味もある。

[編集] 歴史的背景

中国語の歴史における音韻変化は激しく、現代中国語(北京語あるいはマンダリンなど、すなわち中華人民共和国における普通話中華民国における国語など)の発音では、入声はすでに失われ、逆に平声が陰陽2つに分かれるなど、中世とは異なっている。近体詩が確立した代では中国語の中古音声調四声に分類されていた。この分類を体系的に示したのが『切韻』を代表とする韻書や『韻鏡』などの等韻図であり、近世音を表した韻書である代の『中原音韻』と並んで中世中国語の発音分析の基礎資料となっている。

中世中国語の四声における調類は:
  • 平声(ひょうしょう)
  • 上声(じょうしょう)
  • 去声(きょしょう)
  • 入声(にっしょう)

であり、平声は唐末頃に清濁を基準に陰陽に分かれた。このように四声を陰陽に分けた八声が、古代中国語や現代中国語の諸方言を分類する基準となる。一般に陰調は高い調子を、陽調は低い調子をいい、陰調は中古音の清音、陽調は濁音に由来することが多いが、これは濁音が清音に比べて低い調子から始まったためで、この清濁の区別が失われて声調によって区別されるようになったと言われる。この分類は南北朝期に仏教と同時にサンスクリットに触れた漢民族が自らの言語を客観的に分析する機会を得たため、特に唐代に大きく発達した分類法である。

このうち現代中国語の普通話において陰平は第1声、陽平は第2声、上声は第3声、去声は第4声の母体となり、入声は失われて各声に散っている。但し、これらは全て基本的な構成であり、唐代の四声が上述の分配にしたがって完全に普通話の4声に対応するわけではない。現代中国語の諸方言の声調は五声は平声を陰陽に分けたものであり、六声は平声と入声を陰陽に分けたもの、七声は平・去・入声を陰陽に分けて全濁上声が陽去となったもの、八声は平・上・去・入声がすべて陰陽に分かれたもの、九声は陰入がさらに二つに分かれたもの、十声は陰入と陽入がさらに二つに分かれたものを言う。このため現代中国語における四声と中古四声を含む「平仄」とは、その概念において全く別物である。

なぜ上・去・入声を一括して「仄」としたかについては、平声(陰陽とも)がおよそ全体の5割程度を占めており、残りの三声と相対して「平」と「仄」に区分したとも言われるし、唐初において平声は音の長さがやや長く、上・去・入声は短かったためという説がある。

尚、音韻テープレコーダーなど音声を保存・記録する方法が乏しい時代にあっては正確に後代に伝えることは困難であったが、漢代より伝統的に「反切法」と呼ばれる発音表記法が確立し、辛亥革命直後まで中国では発音表記法として存続していた。現在、中華人民共和国では「ピンイン法」、中華民国では「注音字母」が発音記号として使用されている。

[編集] 近体詩の平仄

平仄とは「平」と「仄」の組み合わせであり、近体詩では最も重要な規範の一つである。 漢詩では平声の脇に○、仄声の脇に●を記入し、平仄を明示することがある。 例として杜甫の詩の一節を分析すると:

国破山河在
●●○○●
城春草木深
○○●●○

となっている。尚、「国」は現代中国語では第2声であるが、古代では入声であり、仄である。

具体的な規則については、近体詩の規則を参照すること。

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