市民国家
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近代国家観の一つ。国家主義的、民族主義的な背景の濃い国民国家(Nation-State)に対する、社会契約説的国家観のこと。国民国家における社会の成員は国民であるのに対して、市民国家では市民であり、国家の地位は市民社会における一つの行政単位として置かれる。
先進諸国で常識的に考えられている現代的な国家とは、19世紀中葉以後、ハーバート・スペンサーらによる国家有機体説を基盤に形成されたものであり、本質的に民族主義的な要素が濃い。これは、例えば英語ではNation-Stateに対する対語が一般的ではないことからも理解される。この19世紀的国家観が引き起こした二度の世界大戦への反省から、日本では戦後民主主義の流れにおいて、革新勢力の側で「市民主義」等の概念と共に広まった。冷戦終結以後、21世紀に入り先進諸国が19世紀的国家観への逆行現象を起こしている状況下にあって、改めて見直される必要のある国家観である。