宙に浮いた年金記録
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
宙に浮いた年金記録(ちゅうにういたねんきんきろく)は、納付記録があるものの基礎年金番号に統合されずにいる、持ち主の分からない年金記録のこと。
「宙に浮く年金記録5000万件」は同義。「消えた年金記録」と並んで、この2つは、国民的大問題となった年金記録問題における最も重要なキーワードとなる。
目次 |
[編集] 概要
宙に浮いた年金記録は、5095万1103件存在する(2006年6月現在)。
当初社会保険庁は、国民年金・厚生年金など各制度の年金番号を共通化(一人一番号に)するために、当時複数存在していた年金手帳番号を順次基礎年金番号に統合していくことになっていた(1997年時点)。ところが、未統合のままの年金記録が、2006年6月時点で5000万件以上も残っていることが判明した。
2007年2月、国会でこのことが指摘され明らかになると、与党は「年金時効特例法案」を国会に提出するなどして対応した。更に2007年与党は「3月までに名寄せを完了させる」として責任をもって事態を解決することを公約していた。
そして、宙に浮いた年金記録の名寄せ作業が進んだ2007年12月に、社会保険庁は5095万件の内訳を明らかにした(以下推計)。基礎年金番号に統合できそうな記録、1100万件。統合済み及び統合の必要がない(死亡・脱退など)記録、1550万件。今後解明が必要な(名寄せ困難な)記録、1975件。氏名が欠落した記録、470万件。
社会保険庁は、今後解明が必要な(名寄せ困難な)記録1975件のうち、自らによる入力ミスなどが原因の945万件は、原本の紙台帳との突き合わせ作業などを行っても持ち主が特定できない可能性があると明かした。
社会保険庁は、コンピュータによる5000万件の名寄せ作業をおこなったうえで、その結果を「ねんきん特別便」という通知書にして被保険者に届けることにしている。このねんきん特別便は2007年12月17日から発送を開始し2008年3月までに完了する予定。これにより社会保険庁は被保険者の信頼を取り戻そうとしているが、被保険者側からは、ねんきん特別便の内容に誤りがあった場合それが本当に解決されるのかなど、ねんきん特別便の効果に対して大きな疑問を持たれている。
[編集] 発言
年金記録問題が争点となった2007年7月の参院選で、安倍晋三首相は「最後の1人にいたるまで、記録をチェックして、まじめにこつこつと保険料を払っていただいた皆さんの年金を正しくきっちりとお支払いしていくこと」(7月21日鳥取県米子市内の街頭演説)と述べた。
舛添要一厚労相は、5000万件の記録について「最後の1人、最後の1円までがんばってやるということを公約として申し上げた」(2007年8月28日就任時の記者会見)と述べた。
舛添要一厚労相は、945万件の特定が困難との社会保険庁の調査結果を受け、「(参院選で)年金は最大のテーマ。『できないかもしれないけどやってみます』なんて言いませんよ。」「正直いって、ここまでひどいとは想像していませんでした。5合目まで順調だったが、こんなひどい岩山とアイスバーンがあったのかと率直にそういう気がします。」「やったけどできなかったというんじゃなくて、みんなで努力してやっていくというポジティブな気持ちになっていただくことが必要だと思います。」(2007年12月11日の記者会見)と語った。
福田康夫首相は、該当者不明の約5000万件の年金記録に関し、すべての持ち主の特定が困難となったことについて「公約違反というほど大げさなものなのかどうか」(2007年12月12日)と述べた。さらに、この発言に対して「公約でどういう風に言っていたかが頭にさっと浮かばなかったから『公約違反というような大げさなことではないのではないか』と言った」と弁明したうえで「年金問題は非常に大きい問題で、こういう問題は言い訳を言っていることができない。政府が決めた方針に基づき着実にやっていく」と述べた(2007年12月13日参院外交防衛委員会)。
2008年1月のマスコミとの懇談の席上、安倍晋三は「年金ってある程度、自分で責任を持って自分で状況を把握しないといけない。何でも政府、政府でもないだろ」[1]と指摘したうえで「今になって(参院選の)選挙演説の『最後の一人までチェックして支払います』が公約違反と言われるけど、俺は一言も三月までに支払うとは言ってないんだぜ」[1]と反論し、安倍の公約の趣旨を説明している。