宇品陸軍糧秣支廠
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宇品陸軍糧秣支廠（うじなりくぐんりょうまつししょう）は、広島県広島市宇品に設置されていた大日本帝国陸軍の糧秣の製造・保管・補給施設。糧秣とは、兵士の食糧や軍馬の餌のことを言う。本廠が東京深川に置かれ、国内では札幌・大阪・広島に支廠が置かれた。現在は、旧缶詰製造工場が広島市郷土資料館、旧食肉処理工場がカルビー工場（取り壊し予定）として現存する。
缶詰工場では牛肉缶詰が生産され、特に1923年(大正12)の関東大震災で本廠が被害を受けて以後は専ら宇品支廠で製造されることとなった。また、1907年(明治40)頃からは戦時用だけでなく平時用の食料品製造・調達も行われ、1909年(明治42)8月の大阪の大火(「キタの大火」「天満焼け」と呼ばれる大火災)や1910年(明治43)8月の大水害などの際には罹災者用の救援物資が広島から被災地へ向けて送られた。
缶詰製造工場建造時には南側に逆コの字形の南棟、北側にやや離れて桁行が南棟と同じ長さで平面が矩形の北棟、南棟の内側壁面と北棟の南壁面を内壁として鉄骨小屋組みの鋸屋根を架けた中央棟が造られた。現在は北棟・中央棟ならびに南棟の一部が解体され、跡地は公園になっている。1945年8月6日の広島市への原子爆弾投下では、爆心地から距離があったことなどから倒壊は免れたものの中央棟の鉄骨が折れ曲がる被害を受け、現在も2本の折れ曲がった鉄骨が残され、展示されている。外壁は当時のものがほぼ当時のまま保存されている。
外壁の控壁や庇部分の細かな造形に工夫が見られる、現在のものよりやや大きめの国産煉瓦を使用し長辺と短辺を交互に積む「イギリス積み」で積まれている。改修で鉄板から銅板に変わっているものの当時の「瓦棒葺」で復元されているなど、明治時代の洋風煉瓦建築の資料としても貴重な建築物である。なお、この建物は広島市有形重要文化財に指定されている。
目次 |
[編集] 年表
- 1897年(明治30)3月、陸軍中央糧秣廠宇品支廠が設置される。
- 1902年(明治35)、陸軍糧秣廠宇品支廠と改称。
- 1906年(明治39)、宇品御幸通り西側に新たな用地が確保され、拡張される。
- 1911年(明治44)3月、レンガ造の缶詰工場、関連施設が建設される。
- 1945年(昭和20)、空爆の激化により製造停止。同年8月6日、原子爆弾により被曝。被害者の収容施設として利用される。
- 1946年(昭和21)、缶詰工場以南の敷地が専売公社の所有となる。北側は広島糧工株式会社が国より施設を借り受け食品生産を行う。のち、松尾糧食株式会社（現カルビー株式会社）の製菓工場として利用されるが、生産打ち切りとなる。
- 1977年(昭和52)、中国地方財務局に移管される。
- 1980年(昭和55)、広島市郷土資料館として再利用することが決定。
- 1985年(昭和60)、広島市重要有形文化財に指定。
[編集] 所在地
- 陸軍糧秣支廠缶詰工場
- 広島市南区宇品御幸2丁目6－20
- 陸軍糧秣支廠食肉処理場
- 広島市南区宇品御幸1丁目12－23
- 陸軍糧秣支廠倉庫
- 広島市南区南区宇品海岸三丁目11
[編集] 関連項目
[編集] 関連書籍
- 広島市郷土資料館編『近代の「兵食」と宇品陸軍糧秣支廠』（広島市教育委員会、平成１5年）
- 山下和也・井手三千男・叶真幹 『ヒロシマをさがそう：原爆を見た建物』 西田書店、2006年 ISBN 488866434X
