多選
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多選(たせん)とは、同じ人が当選または選出されること。主に地方自治体の都道府県知事選挙、ならびに市区町村長選挙で使われる。
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[編集] 多選問題
行政府、特に地方政府の首長の多選はマシーン構造を維持強化する作用をもたらす。
日本の地方公共団体では首長の権能が極めて強く、首長が政策立案から実施に至るまで一手に行い、議会の役割は監督と住民の要望吸い上げに事実上限られる。首長が行政の人事権や毎年の予算を決める決定権、土地利用の許認可権等を一手に握ることになるため、多選をくりかえすと、首長の専制化、独裁化が起こり、行政組織が硬直化する可能性が高くなり、人事の停滞や側近政治により職員の士気が低下し、また、癒着による腐敗も起きやすくなってしまうとの批判がある。
また議会においては、当選回数を重ねた議員ほど発言力が強化されるため、当選回数の多い議員であるという理由で選挙区や利益団体からの支持を得ることができ、利益誘導以外の民意の反映が十分なされなくなることが挙げられる。
[編集] 多選制限の問題点
法律による多選制限には、いくつかの問題点もはらんでいる。
- 参政権に対する制限であり、民主制の原則に反する。
- 何回の当選をもって多選とするか線引きが難しい。
- 行政の事情に通じたベテラン政治家を排除するため、民意代表である政治家より官僚の発言力が相対的に強くなる。
[編集] 日本での多選制限をめぐる動き
- 過去に国会で多選制限の法案が何度か提出されてきた。1954年(昭和29年)には知事3選禁止法案が、1967年(昭和42年)には知事4選禁止法案が、1993年(平成5年)には政令市長の4選禁止の地方自治法改正法案が提出されているが、いずれも上記の問題点等が指摘され、法制化されるには到らなかった。
- 1999年、自治省の「首長の多選見直し問題調査研究会」(座長・大沢秀介)は、「多選禁止は憲法上許される可能性があり、国民の間で十分な論議が必要だ」とする報告書をまとめた。また、2007年、総務省の「首長の多選問題に関する調査研究会」(座長・高橋和之)では、「法律に根拠を有する地方公共団体の長の多選制限については、必ずしも憲法に反するものとは言えない」とする報告書をまとめた。憲法上は違反ではないとの見解は出ているものの、条例の制定根拠となる地方自治法や公職選挙法には多選に関する規定が無いことから、所用の法整備が今後必要と言われている。
[編集] 多選禁止条例・多選自粛条例
近年、都道府県や市区町村単位で知事、市区町村長の多選自粛条例が制定されてきている(多選禁止条例の項を参照)。
[編集] 各国の多選禁止例
各国の選挙では法で多選制限が設けられている例がある。
- アメリカ
- 大統領 3選禁止。
- 連邦議会議員 1995年に州法等で多選制限していたが、多選制限が連邦最高裁で違憲とされたため、撤廃。
- 州の政治家 州法等で36の州知事と15州の州会議員で多選制限。
- ドイツ
- 大統領 3選禁止。
- ロシア
- 大統領 連続3選禁止。
- 韓国
- 大統領 再選禁止。
- 地方自治体の長 連続4選禁止。
[編集] 日本における最多多選者
[編集] 地方自治体の首長
- 都道府県知事
- 市長
- 町村長
[編集] 議会議員
- 衆議院議員
- 25選
- 尾崎行雄 (1890年~1953年)
- 参議院議員
- 都道府県議会議員