Wikipedia:外来語表記法/ラテン語
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古典ラテン語(以下ラテン語)をラテン文字で表記する際、またカナで転写する際の一般的・慣習的な方法について述べます。
現代の日常的な日本語においてラテン語からの直接の外来語・借用語はほとんどないため、 主に固有名詞、ラテン語の作品名やテキスト、動植物の学名、その他学術用語などが対象となります。
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[編集] ラテン文字表記
- 分かち書きし、文頭および固有名詞と固有形容詞の語頭は大文字とし、他は小文字とする。ただし原文の表記を忠実に転写する場合はこの限りではない。
- 近代西洋諸語の句読点も必要に応じて用いる。
- 母音の長短については、長母音をマクロン (¯) で示す(示されていないものは短母音)か、まったく示さないか、のどちらかに統一する。
- i/j, u/vの区別については、原則として母音はi/u, 半母音はj/vとする。ただし原文の表記を忠実に転写する場合はこの限りではない。
- 子音後のia, ie, io, iuはjとしないことが多い。
- ēius, cūiusなどはどちらでも書かれる。
- Gāius, Māiaなどは通常iとする。
- 地名語尾-iaは-jaとはしない。
- アクセントを示す必要がある場合は、アキュート・アクセント (´) を用いる。
- 古典ギリシア語由来の語は、ギリシア語のラテン文字転写による。
- 語頭の母音字は有気記号のある場合hを伴う。
- 語頭のρはrhとする。語中のρρはrrhとする。
- αι→ae、οι→oe、ου→ūとする。
- γ, κ, ξ, χの前の/ŋ/に発音されるγはnとする (e.g. Sphinx)。
- 屈折語尾がラテン語化したものはラテン語式に綴る(主に-us, -um)。
- 語頭のιをjで表記しない場合がある(e.g. iota, Ionia ただし Johannes, Jēsūs)。
[編集] カナ表記
- 大筋では、いわゆる「ローマ字読み」で表記すればよい。
- 原則として古典期の推定発音に忠実に表記する。英語など近代西洋諸語風の発音は採用しない。
- Brūtus→ブルートゥス(×ブルータス)
- キリスト教など慣用の定まっている分野については慣用を尊重する。
- 単語の間は「・」(全角中黒)で区切る。
- 母音の長短については、長母音を「ー」(音引き)で示す(示されていないものは短母音)か、まったく示さないか、のどちらかに統一する。
- homō sapiēns→ホモ・サピエンス、ホモー・サピエーンス
- ae, oeは「アエ」「オエ」とする。
- c, kはカ行で示す。ただし/ɡ/に発音されるc (e.g. Cāius) はガ行で示す。
- gはガ行で示す。
- ja, je, jo, juは「ヤ」「イェ」「ヨ」「ユ」とする。
- l, rはラ行で示す。
- qua, que, qui, quoは「クァ」「クェ」「クィ」「クォ」ないし「クア」「クエ」「クイ」「クオ」とする。quu (e.g. equus) は「クウ」とする。
- sはサ行で示す。siは「シ」でよい。
- ti, tuは「ティ」「トゥ」とする。di, duは「ディ」「ドゥ」とする。
- va, ve, vi, vo, vuは「ワ」「ウェ」「ウィ」「ウォ」「ウ」とする。ただし「ウァ」「ヴァ」「ウイ」などとする慣用もある。
- Vergilius→ウェルギリウス、ヴェルギリウス
- quō vādis→クォー・ワーディス、クォ・ヴァディス
- vīrus→ウィールス、ウイルス
- Valentinus→ワレンティヌス、ウァレンティヌス
- Ave Maria→アヴェ・マリア
- x, xa, xe, xi, xoは「クス」「クサ」「クセ」「クシ」「クソ」とする。
- ギリシア語由来の有気音ch, ph, rh, thは、c, p, r, tと同様に扱う。ただしphについてはファ行、thについてはサ行で示す慣用もある。
- ギリシア語由来のyは「ュ」とする。ただしイ段で示す慣用もある。
- Hȳdra→ヒュードラ、ヒドラ
- 同一子音の反復は「ッ」とする。ただしm, nの反復は「ン」とする。省略する慣用もある。またl, rについては古くは小書きの「ル」を用いる慣用もあった。
- Gallia→ガッリア、ガリア、ガルリア
- Innocentius→インノケンティウス
- アクセントを示す必要がある場合は、太字などを用いる。