土人
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土人(どじん)は、植民地などにおいて、その土地に土着の人間のこと。アボリジニ・インディヘナなどとほぼ同じで米国ではネイティブの語も使われる。
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[編集] 変遷
語源としては単にその土地の人、土着民であり、原義は先住民・原住民と変らない。ただし植民地における統治・被統治との関係から、未開・非文明的・粗野という差別感を伴った。
日本では、北海道、樺太などの開拓に伴いアイヌなどを「北方土人」とし、明治末以降には公式に「旧土人」と称していた[1]。その後、日清戦争から韓国併合などを経て大東亜戦争が終結するまで、日本が海外に領土を保有した時代には、韓国(朝鮮)人、中国人さらにはポリネシアの黒人などを含んで土人と称した。土色との連想から有色人種一般と捉えるふしもあり、日本人間でも色黒い者をあだ名で「土人」と呼ぶこともあったが、例えばインド人などは、英国の植民地ではあっても日本の植民地ではないので、土人と称することはなかった。当然のことながら、日本の統治対象でもなく、土色でもない白人に使われることはなかった。
日本が海外領土を失った後は土着民の意味は薄れ、色の連想のみが残ったため、黒人の類義語となった。昭和期を通して、「土人」は色黒い者(子供)のあだ名としても普通に用いられた。しかし次第に、差別的な用法のない「黒人」とは異なって、差別的な用法もあった「土人」からは、差別感のみを感じ取る人々も現れ始めた。
現在では、文化に優劣はないとの文化相対主義や人権思想の広まりに対する表現の自主規制として、差別用語としての扱いが固定化した。
[編集] 用例・規制
- 「土人」ということばで有名なものに土人のお祭りというパラオの夜祭をほのぼのと唄いあげた童謡があった。しかし太平洋戦争後にパラオが日本の信託統治下から離脱し身近でなくなったことや、歌詞に土人以外にくろんぼといった今日差別的とされる用語が頻出するので忌避されるようになる。ただし同曲の歌詞にはパラオ島や、そこに生活する先住民族を貶める意図は一切見当たらない。同曲はその後歌詞を一新し題'森の小人に改題される。改題以降は短調ながらも賑やかで親しみやすいその曲調からかなりの人気を得たが、やがて「こびと」も差別的として扱われるようになり、今日では歌われることはほとんどなくなった。[1]
- 中田喜直作曲の「土人のおどり」というピアノ曲もある。この曲は現在もこの題名で子ども向けのピアノ教本などに載っている。
- 2000年には岩波書店から出版されたアルベルト・シュバイツァーの著書「水と原生林のはざまで」が市民団体の抗議を受けて出版を停止している。[2]
規制例には他に以下がある。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ 北海道旧土人保護法、旧土人給与地。ただし、3文字の「旧土人」については土人の派生語として「旧の土人」と解釈する場合のほか、「旧土の人」と解釈する意見もある(1968年5月9日衆議院内閣委員会での厚生省社会局保護課長曾根田郁夫答弁)。