口パク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
口パク（くちパク）とは音声と同期して口を動かす事である。「実際に声を出さずに口だけパクパクと動かす」様から名付けられた。アフレコと逆に、先に音声があって口の動きを合わせる。
ネット掲示板などでは口Pとも書かれる。英語ではリップシンク (lip sync) という。
目次 |
[編集] 技法としての口パク
技法としての口パクは、その場で発声していない事が明らかである。
- ミュージカル映画では、他歌手による場合もある。特にインド映画は、殆ど他歌手による物で「プレイバック」と呼ばれ、プレイバック専門の有名な歌手がいる。収録済み歌唱に合わせて口を動かし、あたかも登場人物が歌っているかの様に演出する技法を言う。
- 歌謡曲、ポップスやロックのプロモーションビデオで、レコーディング済みのボーカルに合わせて口を動かす撮影技法を言う。スローモーション撮影時では、フィルム速度（フレーム速度：fps）を高速にする技法を使うが、その際には同様に高速にした音声を流し、それに合わせて口を動かして撮影する。
- コンピューターゲームでは、声優による収録済み音声の有無を問わず、登場人物の台詞に同期して、口のモーションを作成する技法を言う。これに対してまばたき（目パチ）の場合は、目のモーションを台詞などに合わせる必要は無い代わりに、数秒おきに行うことになる。
[編集] ライブにおける口パク
日本の初期の音楽番組は、スタジオ設備の都合上の演出である事が多い。音響設備デジタル化以降は、出演者や芸能事務所、レコード会社、テレビ局側の意向で行われている事が多い。特に、新人歌手などは、CDを売り出さなければいけないのに歌唱力が不十分であることが多いため、近年ではCDとまったく同じ演奏同じ歌唱を使用した口パクであることがほとんどである。
明らかに口パクであると判別出来るケースとしては、NHKの音楽番組『ポップジャム』およびTBSの音楽番組『CDTV』でDragon Ashがマイクを逆に持って演じた事例がある（『FNS歌謡祭』で野猿の木梨憲武も同様のパフォーマンスをした）。近年ではザ・クロマニヨンズが楽器を手放すという挑戦的なパフォーマンスを行っている。また、CX系の『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』ではH Jungle with tが楽曲途中で歌うのを止めたにも拘らず、歌声が流れ続けていた例もある。しかし、浜田雅功は元々お笑い芸人である為、これもネタにして放送された。SMAPの中居正広は非常に歌唱力不足である為、彼も口パクを持ちネタにしていたが、最近ではコンサートなどにおいてライブで歌う。
事故としては、EX・ミュージックステーション（2006年5月26日放送）における山下智久がマイクスタンドを倒してしまい、バックの歌が流れたままになったというハプニングで口パクを隠していたことが「バレる」こともある。また、同番組では桑田佳祐の「明日晴れるかな」が披露された際（2007年5月11日・5月18日放送）に子供たちのコーラスを入れていたものの、やはりプロではなく、素人であるため、コーラス隊としては不十分なものであり、CDの音源が使用された口パクとなっていた（桑田の歌唱部分は全て生唄である）。
ヴォーカルトラックを準備し、音響スタッフの判断により声が出ていない一部（高音部やダンスの激しいパート等）のみを口パクにして、生演奏でのサポートバッキング・ボーカル代替として使われる場合もある。
これらライブで、あたかも実際に発声しているかのように見せる口パクは、「ライブ (live)」と言う単語が「生演奏の～」と言う意味を示しているのにも関わらず、実際には歌っていないので、視聴者や聴衆を騙すことに繋がり、非難される事例もある。実際に世界仰天ニュースでは「口パクは詐欺として訴えれば十分通用する」と言ったことが発表されていたことがあり、前述の中居は文字テロップまで出し、必死に口パクを否定していた。
しかし、演出の都合で敢えて口パクを選ぶ場合がある。激しいダンスパートのある歌手、例えばマイケル・ジャクソンはライブでのダンスパフォーマンスのクオリティーを上げるため、口パクをする曲目があった。これはダンスによって激しい呼吸音が生じ、歌を上手く歌う事が出来ないとの判断からで、隠されずに行われる場合が多い。この場合、CDと別に振り付けに合わせた、ライブ用の音源を予め収録して準備することもあり、歌唱ではなくダンスをライブで見せるということになる。口パクは、一部の国や地域において「一種のパフォーマンス」として理解されている場合があるが、アメリカ、特に日本では口パクに対するアンチ意識が強く、故意の演出であっても不本意な批判を受ける事がある。
韓国では放送技術の関係でマイクが使えない場合やダンスパフォーマンスのクオリティーを高める為、あえて口パクをする場合が多い。さらに、東方神起・スーパージュニアなどが所属するSMエンターテインメントでは、ダンスパフォーマンスを高めるためにリップシンクを用いていると説明しているが、ファンは反対している（実際は歌唱力が無いという意見もある）。 最近では口パクの上にマイク音声を付け加えるようになってきている（誤差はほとんど感じられない）
[編集] 口パクの判別
下記の方法により口パクが聴衆に判別される。カッコ内は、その項目に該当する歌手等を示す。
- 同期に失敗している。流れている音声と口の動きが違う。顕著な場合、マイクを落としても音声が聞こえる（アシュリー・シンプソンや山下智久など）。
- 呼吸音（ブレス）が無い。激しいダンスをしているのに息が全く乱れていない。激しいダンスパートがある歌手は、ヘッドセットマイクを装着しながら特に隠さず行う。韓国国内の音楽番組で、ライブで歌う場合は「LIVE」と表示され、口パクの場合は何も表示されないので、容易に判断できる。歌手の歌唱力不足が理由だと思われることが多々あるが、そうでない場合もある（ブリトニー・スピアーズ、そのほか韓国の歌番組で多数）。
- 歌声がCD音源と全く同じ。フェードアウトする曲の場合、歓声のSE音が被せられたり、キリの良い部分で突然音を切る事が多い。耳の肥えた人なら微かな音質の違い等からも判別出来る場合もある（ハロー!プロジェクト、ジャニーズ系タレント、THE ALFEEは主に高音曲の長いリフレインの一部で多用するなどの例がある）。
- 口パクを故意に明かす（Dragon Ash、ザ・クロマニヨンズ、野猿）
[編集] 関連項目
- プレスコ
- アフレコ
- アテレコ
- エアボーカル - BGMの曲に合わせてその歌手本人になりきりながら口パクで歌を歌うふりをする遊び。
- エア・ギター - 実際にはギターを演奏せずにギターの音に合わせて体を動かす。
- ミリ・ヴァニリ - 別人による口パクが発覚し問題になった音楽グループ。
- アシュリー・シンプソン
- 当て振り
- はるな愛 - 口パクで松浦亜弥の物真似をするニューハーフタレント
